第103回 新生フランス代表、チュニジアでスタート(4) 選手、システムをテスト、引き分ける

■巨大スタジアムで新生フランスのお披露目

 いよいよ新生フランスのお披露目である。フランスサッカー協会のクロード・シモーネ会長以下22人の選手を含む総勢45人のフランス代表は試合の前々日にチュニス入りした。試合はチュニジア最大のスタジアムであるラデスの11月7日スタジアムで行われる。ちなみに11月7日は1987年にズィン・エル・アビディン・ベン・アリが大統領に就任した記念日である。収容人員が6万人にのぼるこのスタジアムは2001年に地中海諸国がオリンピックのように複数の競技を争う地中海競技大会を開催した際に建設されたものであり、スタッド・ド・フランスをモデルとしている。

■驚きを与えた3バックシステムと主力選手のベンチスタート

 満員の観衆を驚かせるフランスの先発メンバーが発表された。GKは代表2試合目のグレゴリー・クーペだったが、DFラインが驚きを与えた。第一の驚きはDFの数が4人ではなかったことである。フィリップ・クリスタンバル、ミカエル・シルベストル、リリアン・テュラムの3人がDFラインを形成した。フランス代表もジャック・サンティーニ監督が率いたリヨンも4バックで戦ってきた。そして、前日に主将に指名したマルセル・デサイーの名前が先発メンバーにはなかったことが第二の驚きである。
 そしてMFは中央にクロード・マケレレ、エリック・カリエール、両翼にバンサン・カンデラ、ビリー・サニョル、攻撃的な位置にジネディーヌ・ジダンという布陣である。 ジダンがキャプテンマークをつけた。FWはティエリー・アンリとシドニー・ゴブーであり、代表初選出の4人のうち背番号22のゴブーだけが先発メンバーに選ばれた。一方、デサイーに加え、代表の常連であったエマニュエル・プチ、パトリック・ビエイラという守備的MFのコンビもシステムの変更により、ベンチからキックオフを見守ることになった。
 新監督になり、メンバーの入れ替えとシステムのマイナーチェンジ(4-2-3-1システムから4-3-1-2システムへの変更)を予想していたが、3-4-1-2システムを採択し、試合前日に主将に任命したデサイーをメンバーからはずすということは誰もが予想しなかった。

■290分ぶりに得点、結果はドロー

 試合の方は、前半の18分にジダンのCKをシルベストルがヘッドで決めて、フランスは実に5月26日の韓国戦のフランク・ルブッフ以来のゴールを決めた。抜群の攻撃力を誇るフランスが実に4試合ぶり、290分ぶりにゴールネットを揺らしたことになる。
  一方のチュニジアは監督こそ代わったものの、ほとんどのメンバーがワールドカップ組である。38分はラディ・ジャイディ、ムラド・マルキと日本の皆さんにおなじみの選手がパスをつなぎ、最後はアリ・ジトゥニがヘッドで同点ゴールを決める。結果的には2つのヘディングシュートがこの試合の全得点となり、試合はドローで終わるが、前半と後半とではフランスの試合内容に大きな差があった。

■選手、システムのテストの場として収穫

 まず、前半の動きが悪かったのは新しいシステムであったことに加え、選手の半数がまだリーグが始まっていないイタリアとスペインリーグの所属選手であったことである。シーズン最初の公式戦が代表の試合であり、しかも新システムということを考慮しなくてはならないであろう。後半開始時にはデサイー、プチ、ビエイラとスティーブ・マルレを投入し、4-3-1-2システムに代わる。ワールドカップ時からファンが期待していたシステムである。これで動きはよくなり、勝ち越し点こそ奪えなかったが、ブルーノ・シェルーの代表デビュー、ジェレミー・ブレシュも代表2試合目となる貴重な経験をすることができた。
 前半の動きは後半に比べれば悪かったものの、前述の理由に加え、代表としてほぼ全時間帯に出場してきたデサイー、プチ、ビエイラの不在も勘案すれば決して悪い内容ではないであろう。彼らが出場できないケースも想定しなくてはならない。結果こそ引き分けに終わったものの、ワールドカップ、欧州選手権の本大会出場直後のフランス代表の成績が悪いのはいつものことであり、これらの大会後の最初の代表Aマッチの成績を振り返ると1998年はオーストリアと、2000年にはイングランドと引き分けている。
 選手、システムのテストという点では収穫のあったチュニジア戦であるが、9月7日の相手のキプロスはあなどれない。チュニジア-フランス戦と同じ日にアウエーで行われた北アイルランド戦を0-0のドローに持ち込んでいるのである。(この項、終わり)

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