第127回 絹の道、女子ワールドカップへの道(2) ワールドカップ予選を兼ねる女子欧州選手権

■上位と下位にグループ分けする女子欧州選手権

 来年中国で開催される第4回女子ワールドカップの欧州からの出場枠は5チームである。この5つの椅子をめぐってワールドカップ予選を兼ねる女子欧州サッカー選手権が昨年の8月から行われている。2年に1度行われる女子欧州選手権は男子の各種大会とは少々異なる方式であり、出場34チームが2つのレベルに分けられている。エントリーした34チームは8つのグループに分けられる。このグループ分けの際、レベルの高いチーム16チームがグループ1から4に入れられ、それ以外のレベルの低いチームがグループ5から8に入る。それぞれのグループではホームアンドアウエーのリーグ戦方式で試合が行われる。グループ1から4についてグループ首位となったチームは中国行きの切符が与えられ、各グループの2位4チームでプレーオフを行い、1チームだけが中国行きの切符をつかむ。一方、下位グループにあたるグループ5から8については、それぞれのグループの首位チームがグループ1から4の最下位チームと入替戦を行うことになる。
 フランスだけではなく、欧州ではまだ女子サッカーは発展途上にあり、レベル分けを行うことによって競技としての普及拡大を図っていこうという姿勢がうかがえる。また、ワールドカップへの出場権と言う観点では、34チームで5つの出場権を競うのではなく、上位16チームで5つの出場枠を競うことになる。この方が余裕のある日程を組むことができ、実力差があり、大差のつく試合を回避することもできる。男子に関しても、多くの加盟国をかかえ、加盟国間のレベル差も大きいアジアなどには参考となる点があろう。

■強豪ノルウェーに敗れ、ウクライナ、チェコに連勝

 フランスはワールドカップ出場を狙うことができる上位のグループ1に入り、ノルウェー、ウクライナ、チェコと中国行きのチケットを争うこととなった。ホームアンドアウエーの戦いは昨年10月13日の地元カンヌでのノルウェー戦。スタジアムには近代オリンピックの提唱者であり、女性のオリンピック参加に難色を示したピエール・ド・クーベルタンの名前が皮肉にも冠されている。このスタジアムのネーミングが災いしたのか、フランスは0-3と完敗してしまう。暗雲が立ち込めたが、続く10月下旬のウクライナ戦、11月のチェコ戦はいずれもアウエーの戦いであるが、連勝し、望みをつないで男子のワールドカップイヤーを迎える。

■4月からの戦いに向け合宿、国際大会を実施

 二巡めの戦いは4月から始まった。ワールドカップ初出場を目指すフランスは精力的に強化を行った。寒さの残る2月には南半球のレユニオンまで10日間かけて遠征し、合宿を行った。そしてチェコ戦を控えた4月上旬には豪州、カナダ、日本を招いて国際大会を開催した。この大会はナントとボルドーの間に当たる中西部リーグが主催したが、この地域は男子では強豪チームが存在せず、サッカー熱もそう高くないところである。そのような地域における女子サッカーの普及、そして男子も含めたサッカーのレベルアップを期待してこの地域で大会を開催したのであろう。

■国際大会に優勝、ポワチエで日本を破る

 4チーム総当りで行われたこの大会でフランスの最初の試合は過去1勝1敗の日本である。欧州選手権の初戦同様、試合会場が大きな意味を持った。日本戦の場所はポワチエである。米国人にとってパールハーバーがそうであるように、日本人にとってもポワチエというのは特別な感情を持って語られる地名であろう。1980年代に日仏貿易摩擦の緊張が高まった時期に、フランス政府は日本製のビデオデッキを輸入する際に通関処理をわざわざこのポワチエの地で行うことにより、日本製ビデオデッキの輸入を阻止しようとしたのである。このフランス政府の日本産業界への挑発は「新たなポワチエの戦い」と呼ばれ、日本人にとっては「ポワチエ」はフランス政府・産業界に対する憎悪と不信感の象徴であろう。ポワチエで日本がフランスと対戦するということは特別な意味があるのである。
 日本人にとっては通常の親善試合とは違う意味を持つ試合となったが、フランスは60分に決勝点を上げ、1-0で復讐に燃える日本を下したのである。続くアングロームでのカナダ戦は0-2と敗れたが、最終戦のリモージュでの豪州戦は1-0で勝ち、2勝1敗で優勝する。この国際大会での優勝はチェコ戦へのステップとなったのである。(続く)

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