第161回 フランス、チェコに完敗(1) 代表メンバーに3人が復帰

■フランス代表、サッカーの地盤沈下をとめることができるか

 2月12日に今年最初の国際試合が行われた。今年最初の国際試合となったのはクラブの試合ではなく、フランス代表がチェコを迎えて行う親善試合である。今年佳境を迎える2004年の欧州選手権予選を占う試合という以上に、フランスにおけるサッカーの地位を確認する上でも重要な試合である。本連載の第155回から第160回まで紹介したように、年が明けてからのフランスのスポーツファンの関心はパリ・ダカール・ラリー、バスケットボール欧州選手権予選、ハンドボール世界選手権などの他の競技に集中してきた。1月のフランスリーグは激しい首位争いを人気チームが演じているにもかかわらず、ファンはサッカー以外の競技に熱狂した。フランス代表がこの流れを止め、サッカー人気の地盤沈下に歯止めができるか否かは、サッカー界にとって非常に重要なことであろう。

■メンバー発表に驚きの声

 1月から2月にかけては欧州カップがないため、国内リーグ、フランスカップ、リーグカップが集中的に行われており、過密スケジュールの中でこのチェコとの親善試合がスケジューリングされた。フランスリーグ第27節が2月8日(オセール-ナント戦のみ2月9日)に行われたため、メンバーのクレールフォンテーヌへの集合は試合前々日の2月10日であった。
 このような短い準備期間の親善試合でどのようなメンバーをジャック・サンティーニ監督が選ぶかが注目されたが、2月6日に発表された20人のメンバーには驚きの声が上がった。サンティーニ監督は昨年夏に就任以来、必ず国内リーグで活躍している若手選手(正確には代表歴がない、あるいは少ない選手)を登用してきたが、チェコ戦のリストにはビシャンテ・リザラズ、ダビッド・トレゼゲ、ロベール・ピレスという復活組の名前があった。ピレスは昨年3月に負傷して以来の復帰であり、リザラズとトレゼゲは昨年のワールドカップ以来の代表復帰である。

■33歳のビシャンテ・リザラズ、クラブでの活躍が認められ復帰

 リザラズはすでに33歳であり、ワールドカップでは年齢から来るスピードの衰えが目立ち、そしてサンティーニ監督がフランス伝統の4-4-2システム以外のシステムも利用するため、典型的な4バックのサイドDFであるリザラズ以外の選手が起用されることが多く、フランス代表から外れたかと思われた。ところが、所属するバイエルン・ミュンヘンでは今年は大活躍。年齢から来る衰えを心配する声を跳ね返すかのように、この3月間は12試合全てにフル出場し、復帰を果たしたのである。

■ワールドカップで無得点のダビッド・トレゼゲ、負傷から復帰

 トレゼゲは無得点に終わったワールドカップ終了後、新シーズンに向けて準備をしている7月末に膝を負傷し、長期にわたって戦線離脱した。ようやく前年のイタリアリーグ得点王が12月初めに白黒の縦縞のユニフォームを着てピッチに戻ってきた。トレゼゲの復帰はイタリアカップのベスト8決定戦のレッジーナ戦。中村俊輔の所属するチームのホームゲームとあってプレス席の大半は日本人プレス、トレゼゲの復帰はイタリアやフランスよりも日本で大きく報道されたことから日本の皆様もよくご存知であろう。翌週に行われた欧州チャンピオンズリーグのバーゼル戦では久しぶりにゴールも決めている。トレゼゲはワールドカップでは不本意な成績に終わり、その後も負傷に泣いたが、フランス代表に不可欠な存在である。

■ワールドカップを欠場したロベール・ピレス、364日ぶりに復帰

 そして、ピレスについては本連載の第122回で紹介したとおり、昨年10月にハイベリーに戻ってきた。アーセナルの誇る厚い選手層にも恵まれ、途中交代の試合も含め、復帰以来すでに23試合に出場している。昨年10月に欧州チャンピオンズリーグでオセールと対戦した際にはサンティーニ監督も視察に訪れており、11月のユーゴスラビア(現在のセルビア・モンテネグロ)戦で代表復帰かと期待されたが、実現しなかった。そして今回のチェコ戦で代表復帰、昨年2月13日のルーマニア戦以来、実に364日ぶりにフランス代表のユニフォームを再び着る日がきたのである。
 3人が復帰した結果、代表から外れたのはジェレミー・ブレッシュ、シドニー・ゴブー、エリック・カリエール。奇しくもサンティーニ監督が昨年まで指揮をとっていたリヨンの選手である。
 さて、3人が不在でもフランス代表はチュニジアとの親善試合こそ引き分けたものの、その後は欧州選手権予選で3連勝、ユーゴスラビアとの親善試合勝利、と好調な成績を維持している。彼らの復帰がポルトガルに向けてチーム力を磐石のものとし、サッカー人気を復活させることができるのであろうか。(続く)

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