第299回 初出場・初得点物語(2) 悲運の選手、バ、ブラボー、ルルー

■ワールドカップに向けた新星、イブラヒム・バ

 前回本連載で紹介したステファン・ギバルッシュの前にフランス代表でのデビュー戦でゴールを決めたのがイブラヒム・バである。ペルージャに在籍していた際に中田英寿の同僚であったことから日本の皆様もよくご存知の選手であろう。バが代表にデビューしたのは地元開催のワールドカップ前年にあたる1997年最初のゲーム、1997年1月22日のブラガでのポルトガルとの親善試合である。アウエーの親善試合というのはもっともデビュー戦には最もふさわしい設定である。この試合、バは右ウイングに入り、中央のクリストフ・デュガリーへのクロスボールを配給する担当となる。バの活躍のチャンスは試合開始早々にやってきた。10分にデュガリーへクロスをあげ、そのこぼれ球をディディエ・デシャンが至近距離からゴールを決めて先制点となる。そして後半に入り、62分にはカウンターからバが飛び出して、追加点をあげ、初代表、初得点を記録し、翌年のワールドカップに向けた期待の星になる。

■ギバルッシュのデビュー戦の決勝点も、ワールドカップ直前に代表落ち

 翌年のワールドカップが地元開催であったため、親善試合しか組まれていなかったが、バはその親善試合に出場し、大会1年前となる6月にはイタリア、イングランド、ブラジルを迎えた「フランス・トーナメント」でも活躍する。シーズン終了後にはボルドーからACミランに移籍し、ますますの活躍が期待される。ミラン移籍後最初の代表戦となった10月11日の南アフリカ戦でもバは活躍をする。この試合では前回紹介したとおり、初代表のギバルッシュが初ゴールをあげて、同点に追いつく展開となったが、この試合で決勝点をあげたのがバである。78分にユーリ・ジョルカエフに代わってピッチに姿を現したバは5分後の83分にゴールを決めて、南アフリカとの初対決を勝利に導く。もしもバの活躍がなく、試合が引き分けに終わっていれば、フランスの選手は南アフリカに対して精神的に優位に立つことができず、翌年に行われたワールドカップの初戦の南アフリカ戦は違う結果になっていたかもしれない。ワールドカップイヤーを迎え、バが代表デビューしてから1年経つ1998年1月28日にはスタッド・ド・フランスが完成し、スペインを迎えてオープニングゲームが行われ、バも先発出場する。
 しかし、バのブルーのユニフォームはこれが最後となった。その後の親善試合には出場の機会はなく、前回紹介したギバルッシュ、スペイン戦でデビューしたベルナール・ディオメド、ダビッド・トレゼゲにポジションを奪われた。5月に行われた代表合宿には招集されたものの、最後の最後で代表リストから外れてしまい、悲運の選手となる。

■19歳のシンデレラボーイ、ダニエル・ブラボー

 ギバルッシュ、バと紹介したように過去の初代表・初得点と言う偉業を達成した選手は悲運を感じさせる選手が少なくない。本連載の第282回でフランスカップのベスト16決定戦の組み合わせ抽選会について紹介したが、そのミスフランスのレティシア・ブレジェとともに組み合わせ抽選を行ったのがダニエル・ブラボーである。ブラボーはスペインでのワールドカップを控えた1982年2月23日のパリでのイタリア戦の66分にディディエ・シスに代わって交代出場、これが代表デビュー戦となる。82分に得点をあげたブラボーは、イタリア戦62年ぶりの勝利に貢献し、19歳になったばかりの若者はシンデレラボーイとなる。しかしスペイン行きのメンバーから外れ、1984年の地元での欧州選手権もわずか1試合に出場しただけであった。イタリア戦でブラボーとともに代表デビューしたマニュエル・アモロスとは対照的な代表生活を送り、ジャン・ピエール・パパンの欠場により出場した1989年10月11日のスコットランド戦が最後のブルーのユニフォームとなる。

■長身ストッパー、イボン・ルルーの現役最後の試合

 そしてこのスコットランド戦を最後にユニフォームを脱いだイボン・ルルーもまた悲運の選手である。大型ストッパーであるルルーは1983年4月のユーゴスラビアとの親善試合で代表デビューする。長身を生かして22分にルルーがセンタリングを頭であわせて先制点、4-0という大勝の先陣を切った。その後もルルーはストッパーとして代表でのキャリアを積み、1984年欧州選手権、1986年ワールドカップの予選と本大会、1988年欧州選手権予選(予選敗退のため本大会出場なし)に出場し、1990年ワールドカップ予選にも出場する。スコットランド戦はデシャンのゴールで幸先よく前半を終えたが、後半ピッチにルルーの姿はない。前半に負傷したため、ルルーはハーフタイムで交代したが、負傷は深刻で、これがルルーの代表最後の試合だけではなく、プロ選手として最後の試合となったのである。
 ここまで悲運の選手を紹介したが、華々しいデビュー戦にふさわしいその後を飾った選手もいるのである。(続く)

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