第363回 新生フランス代表発表(2) 大量7人が初めての代表入り

■代表歴の多い4人が引退を表明

 前回の本連載ではすでに代表引退を表明していたマルセル・デサイー、リリアン・テュラムに加えてビシャンテ・リザラズ、ジネディーヌ・ジダンが代表から引退を表明したことを紹介した。この4人の年齢についてはすでに紹介したが、奇しくもこの4人は欧州選手権のフランス代表メンバーで代表試合出場数が最も多い4人である。欧州選手権終了時の代表キャップ数の1位はデサイーの116、これに103のテュラム、97のリザラズ、93のジダンが続く。5位はロベール・ピレスの74、6位パトリック・ビエイラの72、7位はファビアン・バルテスの70となっており、引退を表明した4人とそれ以外の選手の間に明らかな断層がある。しかし、代表歴が50試合以上ある選手はこれ以外にシルバン・ビルトール(65)、ティエリー・アンリ(63)、ダビッド・トレゼゲ(55)と攻撃陣に経験豊富な選手が残留した。逆に今回の欧州選手権で課題となった守備陣は経験豊かな選手が不在となり、新監督によるメンバーの選出に注目が集まった。

■引退選手以外にも多くの選手が招集対象外に

 そして注目のボスニア・ヘルツェゴビナ戦のメンバー21人が12日に発表され、大きな驚きを与えた。
 まず、リーグ戦が始まっていないイタリアとスペインのリーグに所属する選手の招集を見合わせた。すなわち、トレゼゲ、フィリップ・メクセス、オリビエ・ダクール、ルドビック・ジウイーらがメンバーから外れる。そしてビリー・サニョルは欧州選手権の負傷からまだ立ち直っていない。また、監督の意向でミカエル・シルベストル、クロード・マケレレ、スティーブ・マルレ、ジョアン・ミクーは招集されない見通しとなった。さらに注目の引退選手以外に多くの選手がメンバーから外れることになり、新しい血が必要となった。

■7人の代表初選出選手

 大幅にメンバーが入れ替わることは予想されていたことであるが、メンバーの3分の1にあたる大量7人がフランス代表初選出となることは誰もが予想していなかった。DFのエリック・アビダル(リヨン)、ガエル・ジベ(モナコ)、パトリス・エブラ(モナコ)、セバスチャン・スキラッチ(モナコ)、MFのリオ・アントニオ・マブーダ(ボルドー)アルー・ディアラ(ランス)、FWのピエール・アラン・フロー(リヨン)というメンバーである。本連載でアンダーエイジのフランス代表をしばしば紹介しているが、その中でも名前の挙がってこないメンバーも少なくない。また、国内の強豪チームに彼らは所属しているが、彼らのほとんどは国内外のベテラン選手に隠れており、本連載の読者の方々も見知らぬ名前が多いであろう。
 この中の最年少である20歳のマブーダに至ってはリーグデビューが昨シーズンであり、わずか21試合しかフランスリーグの出場経験がない。しかしながら日本も出場したツーロン国際大会では大活躍、瞬く間に日本では「ポスト・ベッカム」として注目を集めたが、フランスでは「ジャン・ティガナの再来」と言われている。また、23歳のディアラはその才能が認められて19歳でドイツのバイエルン・ミュンヘンに移籍、イングランドのリバプールに所属しているが、今季はランスにレンタルされている。

■6人が出場を逃したオリンピック世代

 7人のうち6人は23歳以下であり、現在開催されているオリンピックに出場資格があったが、フランスは昨年の11月にオリンピック予選を兼ねた22歳以下の欧州選手権出場をかけたプレーオフでポルトガルに破れ、予選の予選で姿を消してしまっている。オリンピック出場を果たし、開催国のギリシャを破って兄貴分の仇を討つことはならなかったが、オリンピックに出場しなかったからこそ、この6人を新監督のデビュー戦で起用することができたのである。欧州選手権はギリシャの前に涙を飲む形となったが、ギリシャでのオリンピックと同時期に行われる8月18日の親善試合では、10年前のジダンの再来となるような新戦力は出現するのであろうか。(この項、終わり)

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