第470回 再起をかけたコートジボワール戦(3) モンペリエで生き返ったフランス代表

■復帰組のマイナス面とプラス面

 ジネディーヌ・ジダン、クロード・マケレレ、リリアン・テュラムという復帰組を加えた陣容のフランス代表は大きく変わった。この3人は力量的に先発が指定席であるため、同ポジションの若手選手がはじき出される形となった。ブルーノ・ペドレッティ、カメル・メリアムなどがメンバーから外れた。若手選手の芽を摘むという批判がなかったわけではない。しかし、マイナス点よりもこの3人の力量に加え、選択しうるシステムの多様化というプラス面を歓迎する声のほうが大きかった。
  中盤の攻撃の中心にジダン、中盤の守備の中心にマケレレを配すことにより、4-2-3-1あるいは4-3-1-2というようにワントップとツートップの両方に対応できるシステムを採用することができるようになった。4-2-3-1はフランスが最強と言われた2000年の欧州選手権時から2002年のワールドカップまで主に使われたシステムであり、4-3-1-2はティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲという2トップを擁した昨年の欧州選手権時のシステムである。いずれのシステムにせよ攻撃の中心には背番号10のジダンが構えていた。

■バースデーゴール、復帰ゴールでフランス完勝

 モンペリエのモッソン競技場に姿を現したフランス代表の先発メンバーはGKグレゴリー・クーペ、DFは右サイドにビリー・サニョル、左サイドにウィリアム・ガラス、センターにはジャン・アラン・ブームソンとテュラム、守備的MFにはマケレレ、パトリック・ビエイラ、フローラン・マルーダ、攻撃的MFにジダン、そしてツートップにはアンリとシルバン・ビルトールという布陣である。試合前には国歌の演奏、フランス国歌ラ・マルセイエーズを歌うが、104回目の代表試合となるテュラムの「今までにこれほど国歌を歌って感動したことはない。今夜は特別な夜だ」というコメントがこの試合の全てを物語っていた。
  キックオフから今までの不振が嘘のように青いユニフォームがグラウンドを走り回る。28分にビルトールの蹴ったCKをガラスがヘッドで先制点を決める。ガラスにとって代表初ゴール、そしてこの日はガラスの28歳の誕生日であった。1-0で折り返した後半にはもっと素晴らしいプレゼントが待っていた。63分にはビルトールのCKをボレーで合わせた選手の左腕にはキャプテンマークが巻かれていた。このシュートが2点目となる。さすがジダン、復帰初戦でのゴールである。そしてその3分後の66分には俊足のドリブラーがGKをかわす。アンリは無人のゴールに難なく得点を決めて3-0となる。実はアンリもまたこの日が誕生日であり、この日誕生日を迎えた2人がそろってゴールを決めたのである。

■8月に転機を迎えるジダン

 試合はこのまま3-0でフランスの勝利となる。試合内容もドメネク監督の体制になってから最高といえるものであった。ジダンは11年前の8月14日の親善試合のチェコ戦で代表にデビューし、いきなり2得点を挙げるという衝撃的なデビューを飾り、昨年の8月12日、引退を表明し、そしてこの8月17日に復帰を見事な白星で飾り、8月にジダンは大きな転機を迎えることが多いようである。

■15年前の西ドイツ戦勝利を思い起こさせる勝利

 ジダン復活の舞台となったこのモンペリエでフランス代表が試合を行うのは4回目のことであるが、最初の試合は1990年2月の西ドイツとの親善試合である。この年はイタリアでワールドカップが開催されたが、西ドイツは優勝、フランスは前年に予選落ちしている。好対照なチームの対戦となったが、フランスはジャン・ピエール・パパンとエリック・カントナのアベックゴールで西ドイツを下している。この西ドイツ戦の勝利がその後のパパン-カントナというフランス・サッカー史上最高のツートップの時代の幕開けであった。その15年後、ベテラン選手が戻ってきた夏の夜、フランス・サッカーはモンペリエで生き返り、9月の天王山が楽しみである。(この項、終わり)

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