第523回 2006年アフリカ選手権(7) 2位ボルドー、首位リヨンを大会期間中に猛追

 去る2月7日にアフリカ選手権開催地のカイロで急逝された日本を代表するジャーナリスト、富樫洋一様のご冥福を心からお祈り申し上げます。

■アフリカ選手権の影響の少ない首位リヨンと2位ボルドー

 本連載第519回でフランスのクラブからアフリカ選手権に出場する選手について取り上げたが、アフリカ選手権期間中のフランスリーグの状況についてご紹介したい。
 1部リーグの20チームのうち19チームから53人の選手がエジプトに舞台を移して最大3週間の戦いに挑んだ。アフリカ選手権は1月20日から2月10日に行われ、1月21日に行われたフランスリーグ第23節から2月11日に行われた第26節までの4試合は、アフリカのスター不在となった。すでに紹介したとおり、第23節が行われる段階の首位はリヨンで勝ち点53、追う2位ボルドーは勝ち点39であり、実に両チームの勝ち点差は14である。両チームがフリカ選手権で失うのはリヨンはセネガルのラミン・ディアッタ、ボルドーはモロッコのマルアーヌ・チャマクをいずれも1人ずつ、両チームの充実した戦力を考えれば影響は少なく、リヨンとボルドーは順調に勝ち点を重ねると予想された。しかし、このアフリカでの大会の間に異変は起こり、ボルドーがリヨンを追い詰めたのである。

■モナコの芝の状態が悪く、リヨンの試合は延期

 まず、1月21日の第23節、ボルドーは4人をアフリカに送り込んでいるストラスブールとホームで対戦し、2-1で順当勝ちを収める。翌日にリヨンはオセールをホームに迎えるが、課題となったのが守備陣である。アフリカ選手権に向ったディアッタ以外に他レベイエール、カサパなど負傷者が相次ぐ。そのリヨンはオセール相手に先制点を奪ったものの、ついに89分に失点し、痛恨のドローとなる。しかしまだボルドーとの勝ち点差は12もある。
 続く第24節ではボルドーはランスに1-0と勝ったが、モナコに遠征したリヨンは運に見放された。この週末はフランス各地を大雪が襲い、ストラスブール、サンテエチエンヌと言う内陸部だけではなく、沿岸部のナントも降雪で試合が中止となった。1月28日に試合が行われる予定だった地中海岸のモナコには降雪はなかったが、思わぬアクシデントが起こった。モナコのルイ二世競技場の芝の張替え浩二を1月17日から26日にかけて行い、モナコは首位のリヨンを新しい芝の上で迎えようとしていた。リヨンからも450人のファンがモナコに駆けつけた。しかし、この芝の状態が不十分であると主審のベルトラン・レイエック氏は判断、試合は延期されてしまったのである。アウエーチームのリヨンはこの移動のためにすでに5万ユーロ以上を支出、金銭的にも痛手を受けたが、勝ち点を上積みすることができなかった。また、この時点でモナコ、リヨンともフランスカップで勝ち残っていたため、延期された試合の日程がつかず、リヨンは勝ち点獲得のチャンスを失った。

■注目の直接対決はスコアレスドロー

 そして第25節はリヨンとボルドーの直接対決となった。リヨンのホームのジェルラン競技場に満員の観衆を集めた試合、ボルドーが勝てば両チームの勝ち点差は一気に6にまで縮む。2位との勝ち点差が一桁になってしまった一方のリヨンは勝って勝ち点差を二桁に戻し、チャンピオンズリーグやフランスカップでタイトルを狙う余裕を見せたいところである。この試合は一進一退の攻防が続いたが、結局スコアレスドロー、リヨンとボルドーの勝ち点の差は9のまま第26節を迎える。

■ボルドー猛チャージ、リヨンとの勝ち点差7に肉薄

 第26節はアフリカ選手権決勝の翌日の2月11日に行われた。夕方、リヨンはランスとのアウエーゲーム。リヨンは守備陣に多数の負傷者を抱えるが、セネガルが準決勝に進出したため、さらにディアッタを欠く。試合はランスが先行、リヨンは苦しい戦いとなる。ようやく後半ロスタイムにシルバン・ビルトールが同点ゴールを上げ、勝ち点1を獲得するのが精一杯であった。20時にキックオフしたボルドーはアフリカ選手権からモロッコのチャマクも復帰しベストメンバー、対するレンヌは準決勝に残ったナイジェリアのジョン・ウタカを欠く。ボルドーは難なく2-0で勝ち点3を加え、アフリカ選手権開幕時に14も離れていたリヨンとの勝ち点の差を半分の7に縮めたのである。(この項、終わり)

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