第680回 21年ぶりのアルゼンチン戦(7) 復帰した3人のアルゼンチンワールドユース組

■初めてスタッド・ド・フランスに登場するアルゼンチン

 前回の本連載で紹介したとおり、1990年前後にフランスサッカーはアルゼンチンサッカーと再びいくつかの問題を起こす。このようなことに起因しているのかどうか定かではないが、両国は親善試合の機会が全くなかった。そしてこの2月7日にようやくスタッド・ド・フランスに初めてアルゼンチン代表が姿を現す。1998年に完成したこのスタジアムで、世界の強国の中でこれまで試合をしたことがなかったのはアルゼンチンくらいであろう。
 試合前の合宿所には両国とも変化があった。まず、ホームのフランスであるが、本来の本拠地のクレールフォンテーヌが改装工事中であり、使用できない。昨年11月のギリシャ戦の際は1998年のワールドカップでイタリアが使用したサンリスで合宿を行った。今回はアンジャンレバンに宿泊しサングラチアンのミッシェル・イダルゴ競技場で練習を行っている。アルゼンチン代表はルバロワのエバーグリーンローレルホテルに宿泊する。ルバロワといえば欧州を代表する高級住宅地、パリでマーティーの商品を持っている人を見かけたら、まずこのルバロワの住人であると判断していいだろう。このルバロワに宿泊し、練習はジェンネビリエで行う。

■ワールドカップ以降の成績が対照的な両国

 昨年のワールドカップ以降の両チームの成績は対照的である。フランスはワールドカップ決勝で苦汁を飲んだイタリアを欧州選手権予選で破るなど、ここまで5勝1敗と言う成績であり、唯一の敗戦は欧州選手権予選のアウエーのスコットランド戦である。一方のアルゼンチンはワールドカップの準々決勝で開催国ドイツにPK戦で敗れてから、アルフィオ・バジル監督が復帰する。新チームで9月にブラジル、10月にスペインと国外で親善試合を行っているが、いずれも敗れている。

■目新しさに欠けるフランスのメンバー

 アルゼンチン代表であるが、注目のゴンサロ・イグアインはメンバーには選出されなかった。またレイモン・ドメネク監督は、イグアインが新たに移り住んだマドリッドを1月下旬に訪れて本人と接触したが、フランス代表に本人が加わる意志がないことには変化はなく、この天才少年の代表デビューは実現しなかった。
 フランス代表は昨年11月のギリシャ戦のメンバーが基本である。しかし、中央の守備陣であるジャン・アラン・ブームソン、ウィリアム・ギャラスが負傷のため外れる。ワールドカップ終了後一度も代表の試合に出場していないフィリップ・メクセス、ボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合だけしか出場したことがないガエル・ジベなどに託すしかない。また、リールは若手選手の活躍により、リーグ戦、チャンピオンズリーグで好調な成績を残しており、誰かが選出されるかが注目されたが、誰も選出されなかった。

■2001年のワールドユース準々決勝に出場した選手

 今回のメンバーのうち注目されたのがジブリル・シセの復帰であろう。フル代表のアルゼンチンとの戦いは21年ぶりであるが、アンダーエイジでは記憶に新しいところでは2001年にアルゼンチンで開催されたワールドユースの準々決勝でフランスはアルゼンチンと対戦し、1-3で敗れている。この時のアルゼンチンの主力がジャビエ・サビオラであり、フランス戦では全3得点をあげる活躍を見せた。一方のフランスはこの時のメンバーのうち、その後代表で活躍しているのはメクセス、ジベ、シセくらいであるが、奇しくもその3人が代表に復活することになったのである。
 また、メンバーの発表は合宿所もしくはフランス協会の本部で行うのが通例であるが、今回はシャンゼリゼにあるアディダス社の新店舗で行われた。ルバロワに宿泊するアルゼンチンへの抵抗心の表れであろう。
 一方のアルゼンチン代表は21人、全員が欧州のクラブに所属している。フランスの1部リーグには11人のアルゼンチン人選手がいるが、フランスリーグからは選出されていない。また、6年前にブエノスアイレスでフランス相手に戦ったメンバーで今回もメンバーに選出されている選手は1人しかいないが、それが3点を奪ったサビオラである。
 アルゼンチンのワールドユースでの再戦となる4人の選手にも注目したい。(続く)

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