第681回 21年ぶりのアルゼンチン戦(8) フランス代表史上最多の観衆の前で敗戦

■注目される3つの記録

 世界ランキング4位のフランスが3位のアルゼンチンを迎え撃つとあって、注目の一戦となったフランス-アルゼンチン戦、これまでの対戦成績はフランス2勝、アルゼンチン4勝、3引き分けとややアルゼンチンがリードしている。
 この試合で3つの記録が生まれるのではないかと注目された。まず最初の2つは両国の最多代表出場である。フランス代表の最多出場記録はリリアン・テュラムが保持する126試合出場である。今回もメンバーに入っている。そしてアルゼンチン代表の最多出場記録はディエゴ・シメオネとロベルト・アヤラが保持する106試合である。シメオネは5年前に代表から退いたが、アヤラは1994年に代表入りしてから現在に至り、今回のメンバーにも入っている。そして3番目がフランス代表の国内の最多観衆記録である。これまでのフランス代表の観客動員記録は2005年3月26日に行われたワールドカップ・ドイツ大会予選のスイス戦で記録した79,373人である。今回の試合は久しぶりにチケットが前売りで売り切れ、最近のラグビー人気に押されているサッカーの底力を見せたいところである。

■メンバーの招集に苦労したレイモン・ドメネク監督

 さて、前回の本連載で選手について簡単に紹介したが、気がかりは守備陣である。レイモン・ドメネク監督はマルセイユのDFのジュリアン・ロドリゲスを23人目のメンバーとして呼び寄せた。ロドリゲスは代表歴はないがすでに28歳、近年では異例の高齢での代表入りとなった。そしてその後、CBとして期待がかかり、6年前のワールドユースのメンバーであるフィリップ・メクセスが負傷のためメンバーから外れ、代表歴のないアーセナルの22歳の若手のMFのマチュー・フラミニを代表に呼ぶ。本来ならば同ポジションの選手を招集して穴埋めしたいところであるが、別のポジションの選手を招集したところからも苦悩が感じられる。

■注目のCB陣はセバスチャン・スキラッチとジュリアン・エスクーデ

 注目の中央の守備陣であるが、結局ドメネク監督はセバスチャン・スキラッチとジュリアン・エスクーデを選んだ。スキラッチの代表デビューは2004年の欧州選手権が終わり、ドメネク体制の初戦となったボスニア・ヘルツェゴビナ戦である。それ以来これまでに10試合出場しているが、最後に代表の試合に出場したのは2005年9月のワールドカップ予選のフェロー諸島戦であり、1年半ぶりの代表の試合である。一方のエスクーデは27歳と年齢は若くはないが、昨年10月16日の欧州選手権予選のフェロー諸島戦に出場したのがこれまでで唯一の代表出場歴である。そしてこの2人はほぼ同世代であるが、CBのコンビを組むのはこれが初めてである。
 このように不安の残るCB陣であるが、それ以外はまずまずのメンバーが揃った。両サイドバックは右にビリー・サニョル、左にエリック・アビダル、そして最後方のGKはグレゴリー・クーペ、守備的MFはクロード・マケレレとパトリック・ビエイラ、攻撃的MFは右に売り出し中のフランク・リベリー、左にフローラン・マルーダ、そして攻撃陣はティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲである。

■ジャビエ・サビオラの一撃に泣き、聖地で5回目の敗戦

 一方のアルゼンチンの主将はアヤラが務め、新記録を達成する。また、6年前のワールドユースのフランス戦でハットトリックを決めたジャビエ・サビオラも最前線に控える。片やフランスのテュラムは負傷のためベンチで戦況を見守る。そしてスタッド・ド・フランスには79,862人というフランス代表史上最高の観衆が集まったのである。
 しかし、試合は残念な展開となった。サビオラが混戦の中から15分に先制点を決める。フランスはボールを支配するものの、シュートに結びつかず、逆にアルゼンチンはボール支配率で下回りながら、効果的なシュートを浴びせる。結局フランスはジブリル・シセは2分間しか試合に出場せず、ロドリゲス、フラミニという新人を起用することなく、0-1でアルゼンチンに敗れてしまう。
 今年初めの試合でフランスは敗れてしまった。スタッド・ド・フランスでは昨年3月1日のスロバキア戦以来の敗戦であったが、1998年の創設以来5回目の敗戦となったのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ