第871回 レイモン・ドメネク監督留任(1) 解任派と留任派に二分

■国民の世論はドメネク監督の交代を支持

 前回までの本連載では、欧州選手権で敗退した原因を分析してきた。レイモン・ドメネク監督の選手選考と本大会に入ってからの3試合における采配について、批判が集中していることを紹介した。フランス代表チームにとって次の目標である2010年のワールドカップに向けて、ドメネク監督が継続して指揮を取るかどうかが、話題になった。
 本連載ではドメネク監督に批判的な論調を展開したが、フランス国内はドメネク交代派とドメネク継続派に議論が二分された。
 まず、ドメネク監督続投に反対する勢力で一番大きかったのは世論である。一般的な世論調査では、ドメネク監督不支持、すなわちドメネク監督ではなく別の監督で2010年のワールドカップの予選と本戦に望むべしという意見が大勢であった。さらにサッカーに対するコアのファンほどドメネク解任論が強いという傾向もあった。
 また選手を代表チームに輩出する各クラブからもドメネク監督の解任を求める声は高まっている。ドメネク監督の出身クラブであるリヨンのジャン・ミッシェル・オラス会長、ボルドーのジャン・ルイ・トリオー会長だけがドメネク監督擁護派で、それ以外の国内のクラブのほとんどの首脳陣はドメネク監督の解任を求めている。

■ワールドカップ優勝の「1998年世代」も解任を要求

 そして世論やクラブ関係者以外でドメネク解任戦力として無視できないのが、いわゆる「1998年世代」である。今年は1998年に自国開催したワールドカップで優勝してからちょうど10周年と言うこともあり、当時の優勝メンバーがチームを結成して試合を行うなど、注目を集めた。ジネディーヌ・ジダン、エマニュエル・プチ、クリスチャン・カランブーなどの優勝メンバーがいわゆる「1998年世代」であるが、彼らは現在のドメネク監督に対して否定的である。さらに、ワールドカップ優勝メンバーより上の世代であるエリック・カントナ、ジャン・ミッシェル・ラルケ、ルイ・フェルナンデスなどもドメネク監督の交代を求めている。

■続投を望む協会幹部と現役選手

 一方、ドメネク監督の続投を望む声も少なくなかった。2006年のワールドカップ以降のドメネク監督の戦績は26戦して15勝5分6敗である。本大会での1分2敗と言う成績であり、前回の本連載でも述べたとおり運に恵まれなかった、という評価は少なくない。このドメネク監督続投派の代表が現在UEFAのミッシェル・プラティニ会長、フランスサッカー協会のジャンピエール・エスカレット会長などである。
 そしてドメネク擁護派として無視できないのが、現役の選手たちである。ベテランのリリアン・テュラム、パトリック・ビエイラやビリー・サニョルから若手のカリム・ベンゼマ、フランク・リベリーまで一致して現役の選手はドメネク監督の続投を期待している。すなわち、ドメネク監督は現在の協会の首脳陣、現在の選手からの支持を取り付けている。

■解任派の望むディディエ・デシャン、アルセーヌ・ベンゲル、ローラン・ブラン

 ドメネク交代論者が担ぎ出しているのがディディエ・デシャンである。1998年のワールドカップ優勝時のキャプテンであり、引退後はモナコの監督としてチャンピオンズリーグ準優勝を果たし、古巣のユベントス(イタリア)の指揮をとり、2部降格という憂き目にあったが、2部に相当するセリエBで優勝し、セリエAへの復帰を果たしている。一方、対抗馬としてあげられたのがかつてモナコを率い、日本の名古屋でも輝かしい成果を残し、イングランドのアーセナルで長年指揮を執ってきたアルセーヌ・ベンゲルである。また、1998年世代の一員で現在ボルドーの監督を務めているローラン・ブランを推す声も少なくない。デシャン、ベンゲル、ブランの3人が主要候補であるが、一般的な世論としてはデシャンが優勢であるが、サッカーのコアファンはベンゲルを支持するケースが多い。つまり、フランスサッカーの強固なファンはドメネク解任を望み、ベンゲルの就任を望んでいる。
 このような意見の渦巻く中で7月3日にフランスサッカー協会の理事会が開催され、ドメネク監督の去就について議論されたのである。(続く)

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