第901回 天王山を終えてチュニジアと親善試合(1) ルーマニア戦のメンバーで快勝

■ルーマニア戦でわかった3つのこと

 ワールドカップ予選序盤の天王山であるアウエーでのルーマニア戦は2-2のドローに終わった。この試合を最後にフランス代表は予選から当分離れ、3月まで予選の試合はない。
 ルーマニア戦を終えた段階ではっきりしたことが3つある。まず、中央の守備が悪く、ここから2失点を喫したと言うこと、第2点としては、失点はしたものの、試合を支配する力があったということ、第3点として最大のライバルであるルーマニアにホームで勝ち点を1しか与えなかったと言うこと、この3点である。その結果としてレイモン・ドメネク監督は安泰ではなく、14日のチュニジアとの親善試合後に7月と同様に理事会で去就を決定することになった。

■チュニジア戦の位置づけ

 チュニジア戦はルーマニアでの試合から戻って3日目、本拠地スタッド・ド・フランスで行われる。ルーマニア戦終了後に第2GKのウーゴ・ロリスが23歳以下のフランス代表に合流したため、代表に初招集となる25歳のルマンに所属するヨアン・ペレがクレールフォンテーヌに呼び寄せられた。
 チュニジア戦の位置づけはいくつかある。まず、ルーマニア戦でも露呈した守備の課題を解決することができるかどうか、第2点として親善試合と言うことで起用される若手選手は希望が持てるレベルに達しているかどうか、そして第3点としてドメネク監督を続投させるかどうか、ということである。ドメネク監督としては若手も起用したいが、ある程度の実績を残さなくては自分の存在が危うくなる。

■ルーマニア戦とほぼ同様の先発メンバー

 注目のスターティングメンバーであるがGKにスティーブ・マンダンダ、DFは左にガエル・クリシー、右にロッド・ファンニ、中央にジャン・アラン・ブームソンとエリック・アビダル、守備的MFはアルー・ディアラとジェレミー・トゥーララン、攻撃的MFは中央にヨアン・グルコフ、左にティエリー・アンリ、右にフランク・リベリー、FWは1トップでカリム・ベンゼマという陣容であり、アンリが主将を務める。
 ルーマニア戦との布陣の比較をすると、両サイドのDFがパトリス・エブラ、バカリ・サーニャからクリシーとファンニに代わり、ファンニは代表デビューとなった。両ストッパーであるが、ルーマニア戦の失敗を受けてフィリップ・メクセスやセバスチャン・スキラッチを起用するのではないかと予想されたが、ルーマニア戦で連続失点を喫した2人を継続して起用した。しかもアビダルの本来のポストはサイドDFである。攻撃陣に関してはルーマニア戦で活躍したグルコフを攻撃的MFの中央に配し、ベンゼマを1トップとして起用するためアンリをフローラン・マルーダが務めていた左サイドに起用する。結局メンバーの入れ替えは3人だけであり、ドメネク監督の勝利にかける意思が伝わってくる。

■主将アンリ2得点、グルクフ2アシスト

 さて、この試合もフランスが一方的にボールを支配する。ルーマニア線とは異なり、1分には早くもベンゼマがシュートを放つ。その後もフランスはチャンスをつかむが先制点を決めることができない。逆に30分、チュニジアの1トップであるイッサム・ジェマがドリブルし、ブームソンを抜き去り、シュートする。フランスのGKマンダンダの両足の間を抜けたボールがゴールインし、フランスはルーマニア戦に続いて、中央から崩され、先制点を奪われる。
 不安のよぎるスタッド・ド・フランスではあったが、ここを挽回したのが主将のアンリである。40分にはグルクフとアンリがワンツーパスを決めてアンリがシュート、アンリのゴールが決まってフランスは前半の内に同点に追いつく。同点で迎えた後半の立ち上がり、49分には再びグルクフからのパスを受けてアンリが逆転シュートを決める。そして58分にはルーマニア戦には出場していなかった3人のうちの1人であるベンゼマがこの試合が代表デビューとなるファンニからのパスを受けて得点を決める。
 チュニジアに対し、3-1とフランスは勝利を収め、ドメネク監督も一安心であったが、この試合は大きな問題を引き起こしたのである。(続く)

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