第1062回 2010年アフリカ選手権(3) フランスのクラブから59人の選手が出場

■ワールドカップ組が不振だった前回大会

 ワールドカップ出場をプレーオフの末に逃したエジプトが優勝した今回のアフリカ選手権であったが、前回の本連載で紹介したとおり、ワールドカップに出場する5チームの成績は上々であった。5チームの成績は、ガーナが準優勝、ナイジェリアとアルジェリアが4強、そしてカメルーンとコートジボワールが8強であり、すべてのチームがグループリーグを突破している。
 4年前の大会と比較してみよう。2006年大会はエジプトで開催されたが、この時の予選も2006年ワールドカップ予選と兼ねて行われた。アフリカからのワールドカップ出場枠は5であり、トーゴ、ガーナ、コートジボワール、アンゴラ、チュニジアがドイツ行きのチケットを手にし、その前哨戦としてエジプトでのアフリカ選手権に臨んだ。しかしながらこれらの5か国の中でグループリーグを勝ち抜いたのはコートジボワールとチュニジアの2か国だけであった。しかも両チームともグループリーグで首位を奪うことができず、2位通過であった。トーゴとアンゴラは同じグループBで戦ったが、共倒れで、コンゴ民主共和国とカメルーンの決勝トーナメント行きを許した。そして決勝トーナメントに進出したチュニジアは準々決勝でナイジェリアにPK負け、コートジボワールは決勝まで残ったものの、エジプトに決勝で敗れている。

■ワールドカップでも低調だったアフリカ勢

 そして4か月後のドイツでのワールドカップではアフリカ勢は低調で、ガーナが決勝トーナメントに進出しただけで、それ以外の4チームはグループリーグで敗退している。イタリアに次ぐグループ2位で決勝トーナメントに進出したガーナもブラジルの前に0-3となすすべもなく敗れている。
 このように考えると今回のワールドカップ出場組はこのアフリカ選手権に周到な準備をして臨んでおり、6月から7月にかけて南アフリカで大活躍をすることも想定される。

■トーゴの辞退により前回を下回る出場者

 さて、毎回、アフリカ選手権が注目を集めるのはフランスと縁の深い選手や監督が多数出場するからである。今大会にはフランスリーグから59人の選手が出場している。これは前回の2008年大会の60人とほぼ同じであるが、それ以前の2006年大会の72人、2004年大会の77人、2002年大会の67人よりも減少している。しかし、今回はトーゴが出場辞退しており、トーゴ代表の選手の中で8人はフランスのクラブに所属していた。もしもトーゴが参加していれば、前大会よりも多く、2002年大会と同様の67人の選手がフランスからアフリカ選手権に出場していたはずである。
 フランスはアフリカに多くの植民地を抱えていたことから、フランスから独立した国の選手がフランスリーグで活躍する例が中心である。今大会に出場する16か国のうち8か国がフランスから独立した国である。これら8チームにはすべてフランスのクラブの所属する選手がおり、50人の選手がエントリーしている。マリが一番多く11人、ガボンとベナンが9人、カメルーンが7人、コートジボワールが5人、チュニジア、アルジェリア、ブルキナファソがそれぞれ3人である。
 その一方で、フランス以外の国から独立した国のチームにも、ガーナ、ナイジェリア、アンゴラにフランスのクラブに所属している選手がいる。ガーナとナイジェリアは英国から、アンゴラはポルトガルから独立した国である。ナイジェリアには4人、ガーナには3人、アンゴラには2人、フランスのクラブに所属している選手がいる。

■強豪国では薄れる旧宗主国との関係

 従来はアフリカの選手が欧州でプレーする場合、旧宗主国のクラブに所属するケースが圧倒的であった。しかしながら、最近は実力のある選手はイングランドのプレミアリーグやイタリアのセリエA、あるいはスペインのリーガエスパニョーリャに所属する有力クラブへ移籍し、その次のクラスの選手がフランスのクラブを選択するようになってきている。
 その結果として、ワールドカップに出場する5チームにはいずれもフランスのクラブに所属している選手がいる。フランスから独立したカメルーンには7人、コートジボワールには5人、アルジェリアには3人、そして英国から独立したナイジェリアには4人、ガーナには3人といずれもフランスのクラブに所属している選手がおり、同様にプレミアリーグにも選手を送り込んでいるのである。
 このように強豪国では旧宗主国との関係が薄れてきたのは事実であるが、それでも2年に1回、フランスのサッカーファンのこの大会への関心は高いのである。(続く)

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