第1214回 王国ブラジルと対戦 (1) センターバックの新人として期待されるローラン・コシールニー

■ハンドボールの優勝に勢いをもらったラグビーはスコットランドに勝利

 前回までの本連載で紹介した通り、1月のフランスはハンドボール一色になった。他の競技での好成績はその競技の人気に対する脅威という考え方もあるが、むしろこの勢いに乗って「ハンドボールに続け」という空気が形成されている。
 2月最初の週末にはラグビーの6か国対抗が開幕する。2月5日の第1戦でスコットランドをスタッド・ド・フランスに迎えたフランスは終始リードを奪い、34-21とワールドカップイヤーを白星でスタートする。

■ハンドボールとラグビーに続け、上昇機運のサッカー

 その4日後、サッカーのフランス代表も同じスタッド・ド・フランスにブラジルを迎えて親善試合を行う。昨年の南アフリカでの惨敗の後、新チームになっても連敗するなど、どん底状態にあったフランス代表であるが、9月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦で勝利してから、ルーマニア、ルクセンブルクに勝利し、欧州選手権予選は3勝1敗と盛り返した。さらに11月のイングランドとの親善試合は、相手が若手中心のチーム編成であったとはいえ、敵地で勝利した。結局、2010年は5勝2分6敗と負け越してしまったが、最後に4連勝して悪夢の2010年を締めくくった。
 上昇機運にあるサッカーのフランス代表であるが、昨年暮れのテニスのデビスカップの準優勝、そして1月の男子ハンドボールの世界選手権優勝、さらには直前の6か国対抗戦でのスコットランド戦勝利と、他の競技でのフランス代表の活躍をよき刺激にしてサッカー王国ブラジルに勝利したいところである。

■大幅な変動のないメンバー構成

 ローラン・ブラン監督は2月3日に23人のメンバーを発表した。ワールドカップ以来メンバーが固定したGKはウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、セドリック・カラッソの3人である。
 DFには新人1人を含む8人が選出された。注目の新人はアーセナル(イングランド)に所属するローラン・コシールニーである。それ以外のメンバーは昨年11月のイングランド戦と同じ顔ぶれであり、ガエル・クリシー、バカリ・サーニャ、アディル・ラミ、フィリップ・メクセス、ママドゥ・サコ、アントニー・レベイエール、エリック・アビダルと全部で8人になる。10月のワールドカップ予選時にはDF登録は6人であり、ブラジルという強豪国相手に守備陣をチェックしようという首脳陣の狙いであろう。
 MFは7人、アルー・ディアラ、ヤン・エムビラ、フローラン・マルーダ、ヨアン・グルクフ、ヨアン・カバイエというイングランド戦のメンバーに加え、イングランド戦では外れたブレーズ・マツイディ、アブー・ディアビの2人である。サミール・ナスリ、マチュー・バルブエナというメンバーブラジル戦を経験させることができないのは残念であるが、負傷とあっては仕方のないところである。また、ラッサナ・ディアラはイングランド戦に続き声がかからなかった。
 そしてFWは昨年10月以来のメンバーであるカリム・ベンゼマ、ロイック・レミー、ケビン・ガメイロ、ギヨーム・オラオに加えジェレミー・メネスが加わり、ディミトリ・ペイエが外れている。

■唯一の新人はセンターバックのローラン・コシールニー

 このようにみると新人が1名、そして入れ替えはあったものの、ブラン監督の新体制になってから招集されているメンバーばかりであり、概ね監督の構想通りのチームが組みあがってきたと言えるであろう。
 その中で唯一の新人であるコシールニーはスポットライトが当たった。ポーランド系でありポーランド代表を選択する可能性もあったが、フランス代表を選んだ。また今夏ロリアンからアーセナルに移籍したが、フランスでの1部の経験は昨季のみ1シーズンだけしかない。しかし、アーセナルではレギュラーとして活躍している。
 さらに、コシールニーが注目を集めているのはセンターバックだからである。本連載でも何度も紹介してきたように、近年フランスが人材難に悩んでいる唯一のポジションである。特にウィリアム・ギャラスが代表から呼ばれなくなり、アビダルが本来のポジションである左サイドDFとして起用されていることから、センターバックの新人は他のポジションの新人以上の期待と注目を集めることになったのである。(続く)

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