第1181回 イングランドと親善試合 (6) ウェンブリーで快勝、4連勝で2010年を締めくくる

■結果が期待される守備陣

 前回の本連載ではイングランドが若手選手を積極的に起用する一方、フランスはエリック・アビダルを復帰させながら、ウーゴ・ロリスをGKとしては6年ぶりの主将として起用したことを紹介した。それではこのウェンブリーのピッチに立ったフランスのイレブンを紹介しよう。
 GKは先述のとおり、ロリス。昨年の秋にスティーブ・マンダンダから正GKの位置を奪って1年以上になる。DFは右サイドはバカリ・サーニャ、左サイドはアビダル、そして中央はフィリップ・メクセスとアディル・ラミのコンビである。アビダルはワールドカップ以来の復帰となる。すなわちワールドカップ後に定着している中央の2人とフランス代表としてコンビを組むのは初めてのことであり、フランスにとっては守備陣の強化が課題であり、アビダルをはじめとする守備ラインは結果が期待される立場にある。

■好調のカリム・ベンゼマが1トップに

 MFは守備的MFを1人置き、ここにヤン・エムビアを配置し、攻撃的な位置に2人、右にヨアン・グルクフ、左にサミール・ナスリとなる。そして攻撃陣は3人、1トップにはカリム・ベンゼマ、そしてウイングは右にマチュー・バルブエナ、左にフローラン・マルーダとなる。
 ローラン・ブラン体制になってこれが2試合目の親善試合であるが、前回の親善試合は就任して初陣となったノルウェー戦、この試合はワールドカップ組がメンバーから外れていたことを考えると実質的にこのイングランド戦が最初の親善試合である。ブラン監督は1トップか2トップかを模索しているようであるが、このイングランド戦は1トップで臨む。ボルドーの監督時代以来2トップを好んできたブラン監督であるが、代表監督に就任してからは1トップのほうがいい成績を残している。直前のルクセンブルク戦は力量の違いもあり2トップで戦ったが、強豪相手に1点勝負となることを想定すれば1トップで臨み、これからの欧州選手権の予選、そして本大会に備えたいという想いであろう。
 また、負傷していたメンバーがカムバックし、大激戦区となったMFであるが、攻撃陣はグルクフとナスリという最強コンビ、そして守備はエムビア1人に任せることになった。

■ベンゼマ、ルクセンブルク戦に続き先制点

 そしてフランスはウェンブリーで最高の試合を展開した。まず16分は左サイドからの攻撃、左サイドでベンゼマがボールをキープ、いったん内側にいたマルーダとワンツーパス、マルーダからのパスをニアポストにシュートし、ベンゼマが得点し、ウェンブリーを沈黙させる。ベンゼマは10月12日のルクセンブルク戦に続く先制ゴールを決めた。フランスはボール支配率で経験の少ないイングランドを上回り、試合を優位に進め、1点リードしてハーフタイムを迎える。
 ハーフタイムで負傷を抱えているメクセスがベンチに下がり、ママドゥ・サコがストッパーの位置に入る。サコは21歳以下の代表チームの中心選手であり、主将を務めていたが、ブラン監督就任後の8月のノルウェー戦から代表に招集された。しかしながら出場の機会はなく、ベンチで代表の試合を見ていたが、ウェンブリーという大舞台での代表デビューとなった。またサコはパリサンジェルマンに所属しているがこの日はパリサンジェルマンのロバン・ルプルー会長、アントワン・コンブアレ監督、アラン・ロッシュ採用部長、ブルーノ・スクロプタ広報部長など幹部がウェンブリーに来ており、記念すべき日となった。

■右サイドから生まれた追加点

 後半に入ってからもフランスの勢いは衰えず、55分の追加点は右サイドから生まれる。グルクフが右サイドを駆け上がってきたサーニャにパス、サーニャはティエリー・アンリを思わせるようなスピードでドリブルしセンタリングをあげる。このセンタリングをバルブエナがボレーシュート、この日が代表5試合目というベン・フォスターは防ぐことができず、フランスは2点のリードを奪う。
 イングランドは試合終盤の86分、スティーブン・ジェラードに代わって入った長身のピーター・クラウチが1点を返すにとどまった。
 主力の不在だったイングランド相手とはいえ、11年ぶりの敵地で見事な勝利、フランス代表は4連勝で2010年を締めくくったのである。(この項、終わり)

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