第1180回 イングランドと親善試合 (5) 23歳ウーゴ・ロリス、GKとして6年ぶりの主将

■2人が先発で代表デビューしたイングランド

 イングランドにとってフランスはあらゆる分野でライバルであり、聖地ウェンブリーにフランスを迎えるのは11年ぶりのこともあって、この一戦の試合のチケットは前売りで完売となった。
 前々回の本連載ではフランスがエリック・アビダルを復帰させたことを紹介し、前回の本連載ではイングランドはファビオ・カペッロ監督が大量の若手選手をメンバーに加えたことを紹介した。イングランドのファンにとっては何人の選手がイングランドの代表にデビューするかは注目である。
 カペッロ監督が先発メンバーとして選んだ11人のうち、CFのアンディ・キャロルと右の守備的MFのジョーダン・ヘンダーソンの2人はこの試合がイングランド代表デビューとなり、左サイドDFのキラン・ギブスはこの試合が代表2試合目である。

■イングランドを支えるベテラン勢、ベテラン層が不在のフランス

 それ以外にも代表歴の浅い選手がほとんどであり、代表歴20試合以上というのはわずか3人、しかしその3人というのがリオ・ファーディナンド(80試合目)、スティーブン・ジェラード(89試合目)、ガリー・バリー(44試合目)というビッグネームである。
 一方のフランスは代表歴は一桁というメンバーはマチュー・バルブエナ、ヤン・エムビラ、アディル・ラミの3人だけであり、1人当たりの平均代表出場数は22.9である。
 しかし、フランスには、イングランドの3人のような代表経験の豊富なベテラン層が不在である。代表出場歴が40試合あるのは前々回の本連載で紹介した左サイドのDFのエリック・アビダル(51試合目)とその前方の左サイドMFのフローラン・マルーダ(62試合目)だけである。フランスにおいて弱点はキャプテンシーを発揮できるベテラン選手の不在であろう。今回の南アフリカでのチームの内紛も、もしティエリー・アンリが本調子であり主将であったならば起こらなかったというのは的を得た指摘であろう。

■主将はGKとしてファビアン・バルテス以来のウーゴ・ロリス

 中盤の底に起用されると予想されたアルー・ディアラはベンチスタート、したがって、それだけにアビダルへの期待も高まるが、ローラン・ブラン監督がキャプテンマークを託したのはアビダルではなかった。キャプテンマークを着用したのはGKのウーゴ・ロリスであった。
 フランス代表においてGKが主将としてペナントを交換するのは実に6年ぶりのことである。2004年10月9日のワールドカップ予選のアイルランドでファビアン・バルテスが主将を務めて以来のことである。(これ以降、キックオフ時に主将を務めていた選手が交代し、GKが試合途中から主将になったケースはバルテス自身と2年前のグレゴリー・クーペの例がある)

■若きリーダーに期待するローラン・ブラン監督

 2004年当時はパトリック・ビエイラが主将を務めていたが、直前のフェロー諸島戦でビエイラがレッドカードを受け、アイルランド戦は出場停止となったためにバルテスが主将を務めた。バルテスは獅子奮迅の働きをし、フランスが劣勢の試合をスコアレスドローに持ち込んだことは本連載第382回で紹介したとおりである。バルテスは主将を務めたのはこの試合が2試合目であるが、バルテスが初めて主将を務めた試合はこの年の夏のボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合であり、この試合はアビダルの代表デビュー戦である。  つまり、GKが主将の試合というのを経験したことがあるのは現在のメンバーではアビダルだけであり、アビダル自身が南アフリカで事件にかかわっていなければ、主将は若いGKではなく、自分自身であったであろう。
 さて、聖地ウェンブリーでのフランス代表の主将を任されたロリスであるが、所属チームのリヨンの主将はクリスが務めており、いきなりの大役であろう。バルテスが主将をフランス代表で務めた時、すでにバルテスは33歳で70試合以上の代表歴があった。23歳でこの試合が代表19試合目というロリスとは大きく異なるが、カペッロ監督が若手に期待しているのと同様、ブラン監督も若きリーダーに期待しているといえよう。(続く)

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