第1279回 2011年20歳以下ワールドカップ(1) フランシス・スメルキ体制下で5年間鍛えたフランス

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■コロンビアで開幕した20歳以下ワールドカップ

 フランスをはじめとする欧州各国のリーグ開幕は8月中である。シーズン開幕前の国際的なイベントとして本連載第1277回から1277回で紹介したドイツで開催された女子ワールドカップ、そして前回と前々回の本連載で紹介した2014年ワールドカップ予選の組み合わせ抽選会に加え、コロンビアで7月29日に開幕した20歳以下ワールドカップである。
 20歳以下ワールドカップはかつてはワールドユースと呼ばれ、1979年には日本で開催され、日本中を熱狂の渦に巻き込んだことから日本のファンの皆様がよくご存じの大会であろう。

■10大会ぶりに出場した1997年の豪華メンバー

 フランスはこの大会に出場するが、前身のワールドユースから通算して今回で18回を数える大会であるものの、フランスの出場回数はこれが4回目である。初回の1977年大会に出場し、本家のワールドカップ同様第1回大会の開幕戦に出場している。開幕戦でスペインに1-2と敗れ、開催国のチュニジアに勝利しただけで、グループリーグで敗退している。
 その後は欧州予選で敗退が続き、2回目の出場は1997年のインドネシア大会である。この時はティエリー・アンリ、ダビッド・トレゼゲ、ニコラ・アネルカ、フィリップ・クリスタンバル、ミカエル・ランドロー、ビリー・サニョル、ウィリアム・ギャラス、ミカエル・シルベストルなど、その後のフランス代表を支える人材が集まったが、準々決勝でウルグアイにPK戦の末敗れている。

■アルゼンチンのハビエル・サビオラにハットトリックを許した2001年大会

 3回目の出場は2001年のアルゼンチン大会である。この模様については「スポーツナビ」に6回にわたって掲載した「連覇を狙うフランスサッカー 若き"ブルー"の肖像~ワールドユース、フランス戦記」で紹介したが、決勝トーナメントに進出し、準々決勝で開催国でありこの大会で優勝することになるアルゼンチンと対戦する。アルゼンチン戦ではハビエル・サビオラにハットトリックを許し、フランスは1-3と敗れる。なお、この試合で一矢を報いたのが現在のフランス代表で活躍しているフィリップ・メクセスである。また、この2001年大会のフランス代表を率いていたのがレイモン・ドメネクである。出場メンバーのうち、メクセス以外にジブリル・シセ、アルー・ディアラがその後フル代表で活躍したが、多くの選手がプロの世界から去ってしまったことも事実である。

■5年前に結成されたフランシス・スメルキ組

 フランスはその後も欧州地区の予選に相当する偶数年に行われた19歳以下欧州選手権で上位に入ることができず、再び長いトンネルに入る。2005年大会はウーゴ・ロリス、ヨアン・グルクフの活躍で優勝したが、奇数年の大会は世界へのチケットは用意されていなかった。フランスは4大会連続で20歳以下ワールドカップの出場を逃したが、昨年地元で開催された19歳以下欧州選手権でついに優勝する。この模様は本連載第1136回と第1137回で紹介したが、それからほぼ1年、10年ぶりの世界の舞台に戻ってきた。
 前年の同世代の欧州選手権で優勝したということで今回のフランス代表は過去にないほど大きな期待を集めている。メンバーの多くは5年前から年代別のフランス代表に入り、気心の知れたメンバーである。このチームを率いるのはフランシス・スメルキ監督である。昨年の19歳以下欧州選手権の優勝チームを率いただけではなく、その前年は18歳以下代表、さらにその前年は17歳以下代表という具合に年代別の代表監督を務め、今回の20歳以下代表チームのメンバーを2006年から見てきたことになる。
 スメルキ組は2008年には17歳以下欧州選手権に出場し、準決勝で開催国トルコにPK戦で勝利したが、決勝でスペインに0-4と大敗し、準優勝にとどまる。しかしこの悔しさをその2年後の19歳以下欧州選手権で晴らしたことは本連載第1137回で紹介した通りである。
 このスメルキの下で5年にわたる長い熟成を重ねた若い選手たちがコロンビアの地で世界を相手に戦うのである。(続く)

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