第1280回 2011年20歳以下ワールドカップ(2) 注目のガエル・カクタとアントワン・グリツマン

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■登録された21人の選手

 2001年大会以来5大会ぶり4回目の20歳以下ワールドカップを戦うフランス代表、この大会が20歳以下ワールドカップという名称になってからは初めての本大会出場である。昨年の夏に行われた19歳以下欧州選手権でライバルスペインを下して優勝したフランスであるが、当時のチームを母体として開催国のコロンビアに乗り込む。
 大会登録メンバーは21人、GKはピエリック・クロ(ソショー)、ジョナタン・リガリ(モンペリエ)とルーカス・ベロヌス(ニース)、DFは中央にカリデュー・クリバリー(メッス)、クリス・マバンガ(レンヌ)、セバスチャン・フォール(リヨン)、フローリアン・ルジューヌ(ビジャレアル:スペイン)、右サイドにはロイック・ネゴ(ASローマ:イタリア)とマキシム・コラン(ブローニュ・シュール・メール)、左サイドにはリオネル・カロル(ベンフィカ:ポルトガル)とティモテ・コロジエチャック(リヨン)、MFにはクレモン・グルニエ(リヨン)、エンゾ・レアル(リヨン)、アントワン・グリツマン(レアル・ソシエダ:スペイン)、ヤニス・タフェ(リヨン)フランシス・コクラン(アーセナル:イングランド)、グエイダ・フォファナ(ルアーブル)、ガエル・カクタ(チェルシー:イングランド)、FWはアレクサンドル・ラカゼット(リヨン)、セドリック・バカンブ(ソショー)とジル・スム(アーセナル:イングランド)と言うメンバーである。

■チェルシーのガエル・カクタ

 21人のメンバーのうち、国外のクラブに所属しているのは6人、いずれもビッグクラブと言われるチームばかりである。国外組の中で最も実績があるのが、本連載第704回などで紹介したことのある日系人選手のカクタであろう。4年前にRCランスからイングランドのチェルシーに渡り、今年1月からシーズン終了までフラムにレンタルされ、新シーズンは再びチェルシーでプレーすることになっている。プレミアリーグで13試合出場しているが、ターンオーバー制を引くチェルシーではチャンピオンズリーグ要員となっており、チャンピオンズリーグには6試合出場、昨年9月に行われたマルセイユとの試合で先制点のアシストを決めたことは本連載第1174回で紹介した通りである。

■レアル・ソシエダのアントワン・グリツマン

 そしてもう1人、グリツマンはワインで有名なブルゴーニュのマコン出身、14歳の時に国内外の複数のチームの下部組織のテストを受けるが、国内のクラブからは受け入れられず、スペインのレアル・ソシエダの下部組織に加入する。レアル・ソシエダでの5年目はチームが2部に降格していたが2009年にリーグ戦にデビューし、このシーズンほとんどの試合に出場し、クラブの1部復帰に貢献する。さらに2010-11シーズンもレギュラーとして活躍して、世界の舞台を迎えることになった。
 しかし、国外で試合出場経験が豊富な選手はこの2人くらいである。

■3分の1の選手は1部リーグの試合の出場経験なし

 一方、国内での実績に目を転じると、昨季トゥールーズに所属し、リヨンで新シーズンを迎えるタフェ、ロリアンから今季アーセナルに転じたコクランくらいしか目立った数字を残していない。
 国内のチームでもトップチームの試合に出場した経験のない選手は少なくない。国内外で1部リーグの試合に出場したことのある選手は21人中13人、3分の1の選手は1部リーグの試合を経験していない。やはりまだ20歳ということでトップレベルの試合に出場することは壁が高く、若年層の選手もフランスリーグには多いが、その多くはアフリカ諸国からやってきた選手である。
 逆に言うならば、シーズン開幕と重なるこの時期にアンダーエイジの大会を実施しても彼らの生活の糧であるクラブにはそれほど影響がない。そして若いタレントを発掘するために多くのスカウトがコロンビアに集結している。彼らのサッカー選手のキャリアに大きな影響を与える大会なのである。(続く)

このページのTOPへ