第1281回 2011年20歳以下ワールドカップ(3) コロンビアに大敗するも決勝トーナメント進出

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■長旅で合流したトマ・フォンテーヌ

 欧州のトップクラスのリーグであるイングランドやスペインのリーグでレギュラーとして活躍している選手から、まだトップレベルでの試合出場経験のない選手まで存在する20歳以下のフランス代表であるが、コロンビア入りしてから開幕直前にストッパーのクリス・マバンガが負傷したため戦線を離脱した。大会規定では選手を補充することができるため、リヨンのトマ・フォンテーヌを呼び寄せる。フランスからコロンビアは遠い。まずエールフランスのストライキにぶつかり、出発が遅れる。7月31日の午後にリヨンを出発したフォンテーヌはスペインのマドリッドで最初のトランジット、2回目のトランジットはペルーのリマ、目的地のコロンビアのボゴタに到着したのは翌日の夜のことであった。フォンテーヌが加わったことにより、21人の選手のうち6人がリヨンの選手となった。

■大観衆の前で我を忘れたフランスの選手

 フォンテーヌが合流したその夜、フランスは開催国のコロンビアと対戦する。豪雨のため試合中止も懸念されたが、30分遅れでキックオフ、4万2000人の地元ファンが競技場を埋め尽くす。立ち上がりフランスはまずまずの動きを見せ、コロンビアのゴールを襲う。そして先取点はフランス、イングランドのアーセナルの一員としてチャンピオンズリーグにも出場したことにあるジル・スムがドリブルから見事なシュートを21分に決める。しかし、トップレベルでの試合経験の少ないフランスの選手たちは大観衆の前に本来の力を出せなくなった。
 30分にはペナルティエリアの中でフランスの代役ストッパーのカリデュー・クリバリーが反則を取られ、PKを決められて同点に追いつかれる。マバンガの不在が悔やまれる。ボルテージの上がったスタジアムは黄色いユニフォームが横縞のユニフォームを圧倒する。
 同点で迎えた後半、48分に勝ち越し点を奪われると、その後、集中力の切れたフランスは失点を繰り返し、62分、64分にゴールを決められ、1-4と大敗して初戦を落としてしまったのである。欧州のライバルのスペインはコスタリカに4-1と大勝スタート、若いイレブンは早くも精神的に窮地に追い込まれてしまったのである。

■チームを救った主将グエイダ・フォファナ

 中2日というスケジュールで行われる第2戦、初戦でマリを下した韓国が相手である。フランスは選手を一部入れ替え、青いユニフォームを着用して、韓国との一戦に臨む。この試合も先制点はフランスのスム、27分に得点をあげ、1点リードして後半を迎える。欧州組が不在の韓国であるが、57分にFKを直接決めて同点に追いつく。このゴールでひるまなかったのがフランスの主将のグエイダ・フォファナである。2部のルアーブルに所属し、1部での経験こそないが、ほぼ2シーズン、所属チームではフル出場、さらにこのチームでは16歳から主将をつと得てきており、未来のフランス代表主将である。浮足立つチームメイトを鼓舞し、その主将自ら81分に勝ち越し点をあげる。さらにアディッショナルタイムには途中出場のアレクサンドル・ラカゼットが3点目、フランスは3-1と勝利して勝ち点で韓国に並んだのである。

■マリに勝利し、2位でグループリーグを突破

 決勝トーナメントには各グループ上位2チームと3位の中から成績の良い4チームが進出できる。フランスの最終戦はここまで無得点で2敗のマリが相手。今大会4チーム出場しているアフリカ勢の中でマリだけが元気がない。そのマリ相手にフランスは攻め続けるが、なかなかゴールを奪うことができない。数字の上では引き分けても決勝トーナメントに進出できるが、欧州王者の名誉にかけて勝利して決勝トーナメントに進みたい。一方、マリもフランスに勝利すれば、決勝トーナメントの可能性はある。69分、マリは2回目の警告で1人足りなくなる。その直後、セドリック・バカンブが均衡を破る先制点、さらに77分には韓国戦同様ラカゼットが途中出場ながら追加点を奪う。
 同時刻に行われたコロンビア-韓国戦でコロンビアが勝利したため、フランスは首位を奪うことはできなかったが、決勝トーナメントに進出したのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ