第1351回 地殻変動、アフリカ選手権(2) フランス語圏を中心に61人がフランスから本大会出場

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■予選で敗退したフランス語圏の強豪、カメルーンとアルジェリア

 前回の本連載では28回目を迎える今回のアフリカ選手権で2010年のワールドカップ出場国や、過去に優勝経験のある国が予選で敗退したことを紹介した。フランスサッカーとアフリカの結びつきという点ではどうだろうか。
 今大会の予選で敗退した有力国は、エジプト、カメルーン、ナイジェリア、南アフリカ、アルジェリアなどであろう。このうちカメルーンとアルジェリアはフランスから独立した国であり、フランスリーグで活躍する選手も少なくない。

■フランス語圏から9チームが出場

 一方、今大会に初出場した3か国のうち奇跡の予選突破を果たしたニジェールはアフリカの年といわれる1960年にフランスから独立している。そして今回が4回目の出場となるガボン、7回目の出場となるマリ、8回目の出場となるブルキナファソも同じく1960年にフランスから独立しており、独立50周年を飾っている。さらに、今回が10回目以上の出場となる常連の7か国のうち、コートジボワール、セネガル、ギニア、チュニジア、モロッコの5か国はフランスから独立している。すなわち出場16か国のうち半数以上の9か国はフランスから独立した国であり、従来通りフランス色の強い大会である。
 他方、今回予選落ちした有力国であるエジプト、ガーナ、南アフリカはいずれも英国から独立している。今大会の出場国のうち、英国から独立した国は初出場のボツワナ、8回目出場のスーダン(エジプトと英国から独立)、常連国のザンビアとガーナの4か国だけであり、どちらかというとフランスよりも英国のほうがアフリカ選手権からは遠くなってしまったといえるであろう。
 近年はフランスから独立した国の選手が必ずしもフランスリーグで活躍するわけではなくなってきている。これは欧州のトップレベルの各国が優秀なタレントを国を問わず発掘して獲得しているからである。

■61人がフランスのクラブに所属

 さて、今回のアフリカ選手権に出場する選手のうち、フランスのクラブに所属している選手の数は61人になる。本連載でも毎回フランスのクラブに所属する選手の数を紹介してきたが、前回の2010年大会は59人、前々回の2008年大会は60人である。2004年大会の77人、2006年大会の72人には及ばないが、近年は60人前後の選手がフランスからアフリカ選手権に出場している。
 国別にこの数字を見ていくと一番多いのはマリの13人、続いてセネガルの10人、ガボンの8人といったところが目立つ。いずれもフランスから独立したフランス語圏であるが、フランスから独立した残り6か国もフランスのクラブで活躍する選手がおり、コートジボワール6人、ブルキナファソ5人、チュニジア、モロッコ、ギニアはそれぞれ4人、ニジェールは2人となっており、フランス語圏9か国から56人の選手がフランスリーグに所属している。
 逆に、フランス以外から独立した7か国のうち、フランスのクラブに所属している選手がいるのはガーナに5人いるだけである。

■フランス語圏以外に目立つ国内組

 ガーナ以外の6か国にはフランスのクラブに所属している選手はいない。もう少し正確にいうならば、これらの国の代表選手が英国(イングランド)など旧宗主国のクラブに所属しているというわけでもない。フランス以外の国から独立した国の代表メンバーは、アンゴラとポルトガル、赤道ギニアとスペインのように旧宗主国のリーグに約半数が所属しているケースもあるが、欧州などの国外のクラブに所属するのではなく、自国のクラブに残っているケースが多い。例えば、リビアやボツワナは半分以上が国内組であり、スーダンは23人のメンバー全員が国内のクラブに所属している。また注目すべきは英国から独立したザンビアで、国内のクラブに所属する選手は6人だけであるが、英国のクラブに所属する選手はおらず、欧州組はスイスとロシアのクラブに所属している選手が1人ずついるだけである。国外組のほとんどは南アフリカやコンゴ民主共和国のクラブに所属し、本連載第1337回で紹介した躍進著しい中国のクラブにも2人が所属している。
 このように見てくると予選の段階で地殻変動のあった今回のアフリカ選手権であるが、フランスに関してはこれまで通りアフリカとの絆を継続しているのである。(続く)

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