第1366回 世界ランキング2位のドイツに勝利(2) フランス代表が初めて戦うブレーメン

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■新生ドイツとの対戦はフランスの3勝1分

 今年最初の国際試合となるドイツ戦、フランスとドイツは数多くの対戦を繰り返しており、本連載でたびたび紹介してきた。しかし、1990年の東西ドイツの統合後は、4回対戦しているが、そのいずれもが親善試合である。本連載では2003年11月15日のゲルセンキルヘンでの親善試合の模様(3-0でフランスの勝利)を第255回から第260回で取り上げ、2005年11月12日にサンドニで行われた親善試合の模様(0-0でドロー)については第490回で紹介している。これ以前には2001年2月27日にサンドニでフランスがドイツを1-0と下し、新生ドイツとの初顔合わせとなった1996年6月のシュツットガルトでの親善試合もフランスが1-0と勝利している。このようにドイツとの戦績はフランスの3勝1分と相性がいい。

■近年の充実ぶりが目立つドイツ

 しかし、ドイツも今世紀になってからのワールドカップでは2002年準優勝、2006年3位、2010年3位と常に3位以内であり、欧州選手権についても2004年はグループリーグで敗退したものの、2008年は準優勝しており、スペインに次ぐ世界ランキング2位というのもうなずける。
 しかも、近年は育成制度が充実するとともに、移民の2世、3世が代表チームに入り、優れた成果を残している。これはまさに1998年のワールドカップと2000年の欧州選手権を制したフランスと同じパターンである。

■フランスのクラブがしばしば試合をしているブレーメン

 試合の舞台はブレーメンのヴェーザー競技場、4万3000人収容の伝統あるサッカー専用競技場である。かつては日本の奥寺康彦が活躍したことから日本の皆様もよくご存じの競技場であろう。
 クラブレベルではベルダー・ブレーメンとフランス勢はしばしば試合を行っており、記憶に新しいところでは2008-09シーズンのUEFAカップのベスト8決定戦でサンテチエンヌがベルダー・ブレーメンと対戦している。ベルダー・ブレーメンはブレーメンで行われた第1戦で先勝、サンテチエンヌでの第2戦は引き分けに持ち込み、1勝1分で勝ち抜き、最終的には決勝に進出している。このときはフランス勢が涙をのんだが、2004-05シーズンのチャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦ではリヨンとベルダー・ブレーメンが対戦している。ブレーメンで第1戦が行われ、リヨンがシルバン・ビルトール、アルー・ディアラ、ジョニーニョのゴールで3-0と勝利している。さらにリヨンで行われた第2戦でリヨンは7-2と記録的なスコアで勝利している。
 しかしながら、ヴェーザー競技場は2006年の地元開催のワールドカップに向けて改修し、ブレーメンも開催都市として立候補しながらも落選して、ヴェーザー競技場は使用されなかった。もっともドイツで行われたワールドカップの場合、ブレーメンだけではなく、ミュンヘンのオリンピックスタジアム、デュッセルドルフのLTUアリーナ、メンヘングランドバッハのボルシアパークという名だたる競技場も使用されず、ドイツがいかにワールドレベルの競技場を多数有しているかがお分かりであろう。

■ブレーメンにゆかりのあるドイツ代表選手たち

 ブレーメンでは、ドイツ代表の試合も2005年9月に南アフリカとの親善試合を行ったのが最後であるが、これまでに1度しか負けたことがないというドイツ代表にとって相性の良い競技場である。そしてフランス代表もこれまでドイツ各地で試合をしてきたが、このブレーメンで試合をするのは初めてのことである。
 一方、ドイツ代表にとってもこの競技場で試合を行うのは7年ぶりのことであるが、このブレーメンゆかりの選手は少なくない。今回ドイツ代表に選ばれた22人のうち、国外のクラブに所属するのはわずか3人である。しかし、その3人のうち2人がこのベルダー・ブレーメンでプレーした経験がある。まず、現在スペインのレアル・マドリッドに所属しているメスト・エジルは2008年から2010年まで所属していた。そして、この日1トップを務めるミロスラフ・クローゼは現在はイタリアのラツィオ・ローマの選手であるが、2004年から2007年まで緑のユニフォームを着ていた。
 そして、今回の22人のうち唯一現在ベルダー・ブレーメンに所属している選手を忘れてはならない。GKのティム・ビーゼである。ドイツ代表の正GKはマヌエル・ノイアーであるが、この試合は地元のクラブに所属するビーゼが起用された。地元ファンの前で好プレーを見せて、欧州選手権でのレギュラーの座をつかみ取りたいところである。(続く)

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