第1427回 ロンドンオリンピック間もなく開幕(4) ワールドカップ後17連勝の女子フランス代表

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■欧州勢には関心が低く、狭き門であるオリンピックの男子サッカー

 前回、前々回の本連載ではオリンピックにおける男子サッカーについて紹介した。プロ化の解禁となった1984年のロスアンジェルスオリンピックでフランスはドゥンガを擁するブラジルを10万人以上の観衆の前で下し、金メダルを獲得したが、それ以降は予選敗退が多く、1996年のアトランタオリンピックに出場して準々決勝に進出した以外はすべて予選敗退が続いている。そして今回のロンドンオリンピックも予選に相当する21歳以下欧州選手権の本大会に出場することすらできず、オリンピックの2年前にすでにロンドンへの道を断たれている。国民の間にもオリンピックのサッカーに対する認識が低く、同年に開催される欧州選手権に関心が集まるのはやむを得ない。そして、欧州選手権やワールドカップは欧州から10数チームが出場できるのに対し、オリンピックは開催国の英国を含めて欧州からは4チームという「狭き門」もファンの関心を下げているといえるであろう。

■多極化している女子サッカーの勢力地図

 一方、女子サッカーにとって、オリンピックは最高の舞台である。ワールドカップや欧州選手権もあるが、フル代表が出場し、他の団体球技同様、オリンピックの金メダルはワールドカップや欧州選手権のそれをしのぐ価値がある。
 フランスの女子サッカーは男子に比べるとその人気はともかく、実力面でも後塵を拝していた。世界の女子サッカーは欧州中心に動いているのではなく、米国やカナダといった北米勢、南米ではブラジル、そして中国、日本、北朝鮮という東アジア勢の力は強大である。さらに欧州もノルウェー、スウェーデンという北欧勢に加え、ドイツ、イングランドなどが覇権を争っている。すなわち、男子に比べ世界レベルでは多極化しており、欧州の中でも北欧勢、英独勢の壁がある。

■初めてフランスが世界で存在感を示した2011ワールドカップ

 このような女子サッカーの勢力地図の中で、世界の舞台とは無縁であったフランスであるが、ブレイクしたのは昨年のワールドカップである。大会前はそれほど注目を集めていなかったが、2007年から指揮を執るブルーノ・ビニ監督の意識がベテランから若手まで年齢層の広い選手たちに浸透し、ドイツでのワールドカップではナイジェリアを下し、ライバルのカナダに競り勝つ。ドイツには敗れたものの大健闘し、ここで評価をあげる。決勝トーナメントではイングランドにPK勝ちし、史上最高となる準決勝進出。米国に敗れたものの、その試合内容は高い評価を受けた。

■7月の親善試合は3連勝、順調な足取りで開幕を迎える

 その夏から1年、フランスは乱高下した男子とは対照的に順調そのものである。昨年のワールドカップの3位決定戦でスウェーデンに敗れて以来、欧州選手権予選、親善試合を繰り返しているが、なんと現在まで17連勝中である。欧州選手権予選ではイスラエル、アイルランド、ウェールズ、スコットランドを全く寄せ付けず、6戦全勝で得点24、失点はわずかに2である。
 そして男子と違い、クラブレベルでの日程がそれほど過密ではないため、多くの親善試合を組むことができる。昨年8月のポーランド戦から始まって11試合も親善試合を行っている。この中にはイングランド、カナダという強豪国とも対戦している。
 女子のフランス代表は4月以降はクラブの佳境を迎えるため、試合を行っていなかったが、オリンピック直前の7月には集中的に強化のための親善試合をこなした。
 まず7月4日にはオルレアンでルーマニアと対戦し、エロディー・トミスの先制点を皮切りに前半だけで4点を奪い、6-0と圧勝する。7月11日にはロシアをボーベに迎える。この試合で主将を務めたガエタン・ティネーが11分に先制、その後マリー・ロール・デリーが2得点を挙げ、3-0と連勝する。
 そして大会前最後の親善試合は本大会出場国であり、昨年のワールドカップチャンピオンの日本をパリのシャルトリ競技場に迎える。この試合フランスはパスをよくつなぎ日本を翻弄する。前半にデリー、後半にウェンディ・ルナールが得点を挙げ、2-0とワールドカップチャンピオンを下す。
 フランスは7月25日、スコットランドのグラスゴーのハンプデンパークで、北京オリンピックの覇者であり、昨年のワールドカップでフランスが敗れた米国と戦うのである。(この項、終わり)

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