第1590回 辛うじて敗戦を免れたベルギー戦(1) 立て直しを図りメンバーを大幅に入れ替え

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ディディエ・デシャン体制2年目の最初の試合となる8月の親善試合

 フランス代表は、6月の南米遠征ではウルグアイとブラジルに連続して完封負け、昨年夏のディディエ・デシャン監督就任以来の成績は4勝2分5敗と負け越している。ワールドカップ予選のスペイン戦から南米遠征にかけて3連敗でシーズンを終えたフランス代表であるが、新シーズンは恒例の8月の親善試合から始まる。
 今年の8月の親善試合は8月14日のベルギーとの親善試合である。本連載でもしばしば紹介している通り、フランスが最もたくさんの試合を戦っている国はベルギーであり、ライバルとの一戦でチームを立て直したいところである。
 近年の8月の親善試合の相手と場所を見ると、昨年はウルグアイ、一昨年はチリとホームで戦い、それ以前は欧州勢との対戦が多いが、2004年にボスニア・ヘルツェゴビナとレンヌで対戦したのがホームで欧州勢と対戦した最後の試合で、ノルウェー、スウェーデン、ボスニア・ヘルツェゴビナとアウエーで対戦している。今回のベルギー戦もアウエーであり、ブリュッセルでの試合となる。

■南米遠征とメンバーを大量9人入れ替えた23人のメンバー

 チームの立て直しのためにメンバーの変更は必至であり、トルコで行われたU-20ワールドカップの決勝戦にも駆けつけており、優勝メンバーから代表入りするメンバーの人選をしている。
 注目のメンバー発表は8月8日、多くの報道陣の前で行われた。23人が発表され、GKはウーゴ・ロリス、スティーブ・マンダンダ、ミカエル・ランドローの3人、DFはマチュー・ドビュッシー、エリック・アビダル、エリアキム・マンガラ、アディル・ラミ、ガエル・クリシー、パトリス・エブラ、バカリ・サーニャ、ローラン・コシエルニーの8人、MFはジョシュア・ギラボギ、ジョフレイ・コンドグビア、リオ・マブーバ、エチエンヌ・カプー、ムーサ・シソッコ、クレマン・グルニエの6人、FWはフランク・リベリー、マチュー・バルブエナ、ディミトリ・ペイエ、カリム・ベンゼマ、オリビエ・ジルー、サミール・ナスリの6人となる。

■肝臓移植手術から復帰したエリック・アビダル

 6月の南米遠征と比較すると9人のメンバーが入れ替わっている。ほぼ4割のメンバーの入れ替えは、デシャン監督がチームを改革しようとしている意思の表れであろう。9人のメンバーのうち、新人は1人だけ、7月のU-20ワールドカップで活躍したコンドグビアである。
 一方、それ以外の8人はすでに代表経験のあるメンバーであるが、その中で特筆すべき選手がいる。
 まずはベテラン選手のアビダルである。アビダルが代表チームに招集されるのは昨年2月の戦以来のことである。アビダルは昨年3月に肝臓移植の出術を受け、その後長くピッチを離れ、今年4月にリーグ戦に復帰した。アビダルはバルセロナに所属し、2年前のチャンピオンズリーグで優勝し、トロフィーも持ち上げたこともあるが、今季バルセロナを離れ、大型補強を行うモナコへ戻ってきた。モナコはアビダルがプロデビューを飾った時に所属していたクラブであり、さらにアビダルが代表にデビューしたのは今から9年前の2004年8月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦であり、代表デビューと同じ8月の親善試合でカムバックした。まさに奇跡のカムバックと言えるであろう。

■出場停止処分期間が過ぎてもカムバックできなかったサミール・ナスリ

 そしてもう1人の驚きがナスリである。アルジェリアにルーツを持つナスリはジダン2世と期待される若手プレーヤーであったが、本連載第1420回で紹介した通り、昨年の欧州選手権でジャーナリストに対し暴言を吐き、2年間の代表からの追放という処分を受けた。処分はその後3試合出場停止と減じられたが、出場停止が明けた昨年10月の日本戦、スペイン戦ではメンバーに選ばれず、その後も招集されることなく、このままフランス代表から消えるかと思われていたが、6月の南米遠征でリストに復帰した。しかしながら負傷をしたため代表から外れてしまい、今後どうなることかと思われたが、この夏の親善試合での1年2か月ぶりの復帰となったのである。(続く)

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