第1711回 ブラジル入りの前の3試合(1) ワールドカップメンバー抜きで4年前にノルウェーと対戦

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ブラジル入りの前に3か国と対戦

 前回までの本連載では、5月13日に発表されたワールドカップ本大会に向けた登録メンバー23人と予備登録7人の顔ぶれを紹介した。フランスを始め、欧州の主要リーグは5月17日の週末にシーズンを終える。30人のメンバーは5月19日にクレールフォンテーヌに集合し、合宿に入る。そしてフランス国内で3試合、親善試合を行い、6月9日にブラジルに向けて旅立つ。
 親善試合は5月27日にノルウェーとスタッド・ド・フランスで対戦、6月1日にニースでパラグアイと対戦、そして出発前日の6月8日にはリール近郊のビルヌーブ・ダスクでジャマイカと対戦する。フランスはグループリーグでホンジュラス、スイス、エクアドルと対戦する。3か国とも本大会には出場しないが、ノルウェーは仮想スイス、パラグアイは仮想エクアドル、そしてジャマイカは仮想ホンジュラスという想定であろう。

■南アフリカでの敗退後、ローラン・ブラン監督の初陣のノルウェー戦

 この3連戦の最初の対戦相手のノルウェー、実はフランス代表にとっては苦い思い出のある相手である。4年間のワールドカップ南アフリカ大会、フランスはチームの内紛がおこり、惨敗に終わる。そしてレイモン・ドメネク監督に代わって新しい監督にローラン・ブランが就任した。新監督就任の第1戦でフランス代表はワールドカップ南アフリカ大会のメンバー23人を全員はずし、それ以外のメンバーで戦うことになった。この試合が2010年8月11日にオスロで行われたノルウェー戦である。この試合は多くの代表未経験者も招集し、チームとしては急造であったが、フランスはチームプレーを展開しながらも0-1と惜敗する。フランス代表にとっては100年以上の歴史の中でこれだけメンバーを落として戦ったこともないであろう。このノルウェー戦での敗戦の次に行われた試合は9月初めの欧州選手権予選のベラルーシ戦、この試合はワールドカップ組も加わって戦ったが、0-1と敗れ、南アフリカのワールドカップから4連敗を喫することになったのである。

■ノルウェー戦で代表デビュー、今回もメンバー入りした5人

 このオスロでのノルウェー戦にエントリーされた22人のうち、今回の23人のメンバーに入ったのがGKのステファン・ルフィエ、DFのママドゥ・サコー、マチュー・ドビュッシー、MFのブレーズ・マツイディ、ヨアン・カバイエ、FWのカリム・ベンゼマの6人である。4年前のノルウェー戦の時点で代表経験があったのはベンゼマだけで、ルフィエ、サコー、カバイエ、ドビュッシー、マツイディは南アフリカでの事件の件もあり、代表入りし、4年後につなげたと言えるであろう。そしてこの5人はノルウェー戦の次に行われたベラルーシ戦には先発出場していない。ベラルーシ戦に出場しなかったことが功を奏したのかもしれない。

■4年前のノルウェー戦で代表デビューした5人が今回も先発

 そして、4年前のノルウェー戦のメンバーに入った6人のうち、代表経験があったベンゼマ以外の5人は、奇しくも全員が今回のノルウェー戦の先発メンバーとなった。ノルウェー戦の先発メンバーはGKはルフィエ、DFは右にドビュッシー、中央にローラン・コシエルニーとサコー、左にパトリス・エブラとなる。MFは中盤の底にカバイエ、右にポール・ポグバ、左にマツイディ、FWは右にマチュー・バルブエナ、左にアントワン・グリエズマンというメンバーである。11人中半数近い5人が4年前のノルウェー戦が代表デビュー戦である。また、この先発メンバーで4年前のワールドカップのメンバーだったのはエブラとバルブエナ、エブラに関してはチームを崩壊させた張本人であり、複雑な思いでこのノルウェー戦を迎えたであろう。一方のバルブエナはデシャン体制になってからはほぼ全試合に出場、デシャン監督の懐刀と言えるであろう。
 このように4年の年月を経て行うノルウェー戦、先輩たちの失敗によって得たチャンスを4年後に活かした選手に注目である。(続く)

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