第1714回 ブラジル入りの前の3試合(4) ジャマイカに歴史的な大勝、いざブラジルへ

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■負傷のフランク・リベリーを外したディディエ・デシャン監督

 パラグアイ戦は、試合終了間際に追いつかれ、ドローとなり、南米勢相手に5試合連続で勝ち星なしという結果になった。結果そのものよりも、親善試合第1戦に欠場したフランク・リベリーの背中の調子が思わしくなく、第2戦のパラグアイ戦も欠場する。ディディエ・デシャン監督は23人のリストからリベリーを外す。さらにクレマン・グルニエも6月5日の練習で負傷したため、メンバーから外れる。デシャン監督は2人に代えてレミ・カベラとモルゲン・シュナイデルランをメンバーに入れたことは本連載第1710回で紹介した通りである。またこれに先立ち、第2GKのスティーブ・マンダンダも合宿入り直前のフランスリーグの最終戦で負傷し、メンバーから外れ、ステファン・ルフィエがメンバー入りしている。
 結局4年前の南アフリカでのワールドカップのメンバーにも入っていた選手はウーゴ・ロリス、パトリス・エブラ、バカリ・サーニャ、マチュー・バルブエナの4人だけである。

■ピエール・モーロワ競技場と改称した大スタジアム

 リベリーという攻撃の軸を欠く中でのブラジル行きとなるが、6月8日に行われた親善試合の最終戦はリールの本拠地、ビルヌーブ・ダスクのピエール・モーロワ競技場でのジャマイカ戦である。一昨年夏にリール都市圏大競技場としてオープンした収容人員5万人の大スタジアムは、リールの元市長で主将としても活躍したピエール・モーロワの名を昨年から冠し、スタジアムの名称が変更された。フランス代表はニースのアリアンツ・リビエラ競技場に続き、新しいスタジアムで初めての試合となる。

■カリム・ベンゼマを左サイドで起用、オリビエ・ジルーが中央に

 相手のジャマイカ、ちょうど1週間後の15日にフランスが第1戦で対戦するホンジュラスを想定した相手である。つまりこのジャマイカ戦のメンバーが第1戦のメンバーであると言えるであろう。
 フランス代表の布陣はGKにウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ラファエル・バラン、ママドゥ・サコー、パトリス・エブラ、MFは3人で中央の低めに位置にヨアン・カバイエ、右にムーサ・シソッコ、左にブレーズ・マツイディ、FWは中央にオリビエ・ジルー、右にマチュー・バルブエナ、左にカリム・ベンゼマとなる。バランとシソッコがこの3つの親善試合で初先発となる。また、ベンゼマを左サイドに起用したが、ジルーと2トップのような位置取りも考えられるであろう。

■ジャマイカを圧倒、8-0で勝利し、親善試合負けなし

 満員の大スタジアムでフランスはノルウェー戦、パラグアイ戦に次いでボール保持率は64%とジャマイカを圧倒する。次々とシュートがゴールに吸い込まれる試合になった。17分にカバイエが起点となってバルブエナ、ジルーとつなぎ、ジルーからパスを受けたカバイエが先制ゴール。3分後の20分にはベンゼマのパスを受けたマツイディが2点目、38分にもベンゼマがゴールして3-0で折り返す。
 後半もフランスの攻撃は休むことなく、53分にはベンゼマ、ジルーとつなぎ、目論見通りの2トップが機能してジルーがゴール。ベンゼマは63分にはマツイディのパスを決めて5-0と大差がつく。さらに66分にはマツイディが6点目、そしてジルーがベンチに下がった後に入ってきたアントワン・グリエズマンが77分にはベンゼマのパスを右足でシュート、1週間前のパラグアイ戦に次ぐ得点である。そしてグリエズマンは試合終了間際の89分にもシソッコのパスを今度は左足で決めて8-0とフランスが大勝した。
 フランス代表の長い歴史においてこのスコアは1995年の欧州選手権予選のアゼルバイジャン戦の10-0に次ぐ大勝である。そしてフランスは大会前の親善試合を2勝1分と無敗で乗り切った。ちなみに準優勝した2006年は3戦全勝、優勝した1998年は2勝1分であり、本大会に希望を膨らませてメンバーはジャマイカ戦の翌日にブラジルへと向かったのである。(この項、終わり)

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