第1713回 ブラジル入りの前の3試合(3) ニースの新スタジアムでパラグアイとドロー

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■不安なフランク・リベリーの状態

 前回と前々回の本連載ではブラジル行きを前にした親善試合の第1戦のノルウェー戦について紹介した。このところなかなか勝ち星をあげることができなかったノルウェーに対し、5月27日は実に26年ぶりの勝ち星をあげることができた。本拠地スタッド・ド・フランスでは3月のオランダ戦に次ぐ勝利、そしてワールドカップ前最後のパリ近郊での試合での快勝に、7万5000人のファンは歓喜した。
 しかし、その対象の中で懸念材料がある。それは攻撃のエースと言えるフランク・リベリーの欠場である。背中を痛めているリベリーは所属しているドイツのバイエルン・ミュンヘンでもほとんど試合に出場していない。シーズン終盤の5月に出場したのはわずか1試合、5月日に行われたドイツカップの決勝戦だけである。この試合リベリーは30分に途中出場し、延長後半の108分にベンチに退くまで78分間プレーした。ノルウェー戦もベンチから戦況を見つめるだけで90分が過ぎてしまった。これがリベリーの5月に出場したすべての記録である。そしてカレンダーは変わり、いよいよブラジルでの戦いの始まる6月になった。6月1日は舞台をニースに移して親善試合2試合目、パラグアイとの1戦である。この試合を前にディディエ・デシャン監督は初めてリベリーについて状況を公表し、検査を受けたことを発表した。

■主力が負傷を抱えて敗退した2002年大会と2010年大会

 過去のワールドカップでも2002年はジネディーヌ・ジダンは負傷を抱えていたため、第1戦、第2戦を欠場し、負傷を押して臨んだ第3戦に出場したがチームはグループリーグで敗退している。2010年大会もストッパーのウィリアム・ギャラスが負傷で欠場、結局ストッパーが不安定だったことがチーム崩壊と並んでグループリーグ敗退の原因となった。

■昨秋オープンしたニースのアリアンツ・リビエラ競技場、ウーゴ・ロリスが先発

 このようにリベリー不在のまま、フランスは第2戦、パラグアイとの試合を迎える。会場のニースのアリアンツ・リビエラ競技場は昨年9月にオープンしたばかりのスタジアムであり、3万5300人の観衆が集まった。ニースと言えば今春訪日したニコラ・マルテルを思い出される日本のファンの方もおられるだろうが、フランス代表としては44年ぶりのニースでの試合となる。昨年開業してラグビーでは今季優勝したトゥーロンがクレルモン・オーベルニュと戦った33,996人、サッカーではニースがパリサンジェルマンを迎えた35,030人という記録が残っているが、それを上回る新記録となった。
 そしてこの試合、最も大きな拍手を受けたのが背番号1である。第1戦のノルウェー戦ではベンチに回っていた正GKのウーゴ・ロリスがキャプテンマークをつけてゴールの前に立つ。ロリスはニース出身でニースの下部組織で育ち、プロ契約もニースで結ぶ。現在はイングランドのトットナムに所属するロリスは文字通り故郷に錦を飾った。

■一方的に攻めながらパラグアイとドロー、南米勢相手に遠い勝利

 さて、フランス代表の布陣はGKにロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、ローラン・コシエルニー、ママドゥ・サコー、パトリス・エブラ、MFは3人で中央の低めに位置にヨアン・カバイエ、右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、FWは中央にオリビエ・ジルー、右にマチュー・バルブエナ、左にロイック・レミーとなる。
  真新しいスタジアムでフランスはパラグアイを圧倒し、一方的に攻める。32分にはリベリーの代役として左サイドに入ったレミーがスーパーシュート、惜しくもゴールはならなかったが、満員の観衆を沸かせた。後半に入ったところで、フランスはエリアキム・マンガラ、リオ・マブーバを投入するがゴールには至らない。そして64分には初めてのFWの交代、左サイドのレミーに代えてアントワン・グリエズマンが登場する。82分にグリエズマンがゴール前に上がっていたコシエルニーからのボールを受けてシュートを決める。時間帯的にフランスの勝利かと思われたが、パラグアイは試合終了直前に追いつきドローとなる。
 フランスは圧倒的に押しながらドローに終わる。フランスは南米勢に対する勝利を収めることができず、5試合連続で引き分け以下となった。そしてこのパラグアイ戦の翌日に最終の23人のメンバーを提出するのである。(続く)

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