第1940回 本年最終戦のイングランド戦 (4) フランス、23年ぶりにウェンブリーで黒星

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ドイツ戦から守備陣は入れ替えず、攻撃陣を入れ替えたフランス

 試合開始前の黙祷、上から下まで白一色のイングランドに対し、フランスは上から青、白、赤のトリコロール。両チームの選手は喪章を巻いての対戦となる。
 イングランドの先発メンバーについては前回の本連載で紹介した通りであるが、フランスの先発メンバーは次の通りである。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、ラファエル・バラン、ローラン・コシエルニー、ルカ・ディーニュ、守備的MFは右にモルガン・シュナイデルラン、左にブレーズ・マツイディ、攻撃的MFは右にハテム・ベンアルファ、中央にヨアン・カバイエ、左にアントニー・マルティアル、そして1トップはアンドレ・ピエール・ジニャックである。
 4日前のドイツ戦と比較すると4-3-3システムから4-2-3-1システムに変更している。守備陣での入れ替えは1人だけ、左サイドのDFはパトリス・エブラに代わってディーニュが入る。中盤より上は大きく入れ替え、2試合連続して先発するのはマツイディとマルティアルだけであり、4人を入れ替えた。同時多発テロで身内が巻き込まれたラッサナ・ディアラとアントワン・グリエズマンは先発メンバーから外れたが、ベンチから交代出場のチャンスをうかがう。

■ウィリアム王子も両監督と共に献花

 試合前の国歌演奏は、大型ビジョンに「ラ・マルセイエーズ」の歌詞が映し出され、スタジアム内が青白赤の三色に染まる。ウィリアム王子も臨席し、両チームの監督と共に11月13日のパリ同時多発テロの犠牲者を追悼して花束を捧げる。

■多くのスポーツイベントが中止、延期となる中での試合決行

 同日にブリュッセルで行われる予定だったベルギー-スペイン戦は中止となったことは前回の本連載で紹介したが、ハノーバーで行われる予定だったドイツ-オランダ戦はキックオフの2時間前に中止となっている。さらに11月22日にラグビーのヨーロッパカップの予選プールの第2節のスタッド・フランセ-ムンスター(アイルランド)戦がパルク・デ・プランスの隣のジャン・ブーアン競技場で行われる予定だったが、警備上の理由で延期となる。このように多くのスポーツイベントが中止や延期になる中でフランス代表の試合が行われたことは関係者、中でもイングランドの市民の努力なしにはなしえなかったことであろう。もはやこの試合は単なるサッカーの試合ではなく、平和を希求するスポーツ界の大きなデモンストレーションとなった。

■シュートチャンスの少ない試合、イングランドの新星が先制ゴール

 しかし、ひとたびキックオフされれば、それはサッカーの試合となる。7万観衆、そして世界中のサッカーファンの期待は高まったが、フランスはファンの期待を裏切るような内容の試合となった。
 ボール支配率はほぼ互角であったが、お互いにシュートチャンスがなかなか生まれず、ファンにとってはもどかしいゲーム展開である。少々期待を裏切ったのがベンアルファである。この秋のディディエ・デシャン監督のメンバー選考の驚きとして、長期にわたって代表から離れていた選手の復帰がある。ラッサナ・ディアラはその期待に応えて、ポール・ポグバ、マツイディと組む3人の中盤はドイツ戦で威力を見せた。ところがベンアルファはスピードがなく、簡単に相手に攻撃を阻止されてしまう。
 一方のイングランド、39分に先制点を奪ったのはデル・アリであった。アリはトットナム・ホットスパーに所属するが、半年前までは3部に相当するフットボールリーグ1部のミルトンキーンズ・ドンズにレンタルされていた19歳の選手である。10月のエストニア、リトアニアとの連戦で代表にデビュー、この日はチーム最古参のウェイン・ルーニーからのパスを受け、25メートルのロングシュート、アーセナルに所属するコシエルニーの足に当たってコースが変わり、チームメイトのロリスの守るゴールネットを揺らした。
 さらに後半開始早々の48分にはルーニーが追加点をあげる。イングランドは2-0と勝利し、実に23年ぶりにウェンブリーでフランスに勝利する。そして秋口から続くフランスの連勝は5でストップ、今年最後の試合を白星で飾ることができなかったのである。(この項、終わり)

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