第2529回 フランス男子、24年ぶりにオリンピック出場(6) ルーマニアとスコアレスドロー、両チームともオリンピックへ

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■男女のオリンピック出場権争いが同時進行

 グループリーグの最終戦でルーマニアとの直接対決、フランスは引き分け以上で決勝トーナメント進出、すなわち東京オリンピック出場となる。イタリアで行われているこの21歳以下の欧州選手権と並行としてフランスでは女子のワールドカップが行われている。すでに本連載で紹介したとおり、欧州勢にとってはワールドカップでの上位3チームが東京オリンピックの出場権が与えられる。男女の東京オリンピックの欧州代表が大会のほぼ1年前にイタリアとフランスで決まるわけであるが、男子はグループリーグが終了した時点で代表国が決まる。男子の代表が4チーム決まろうとしている段階で、女子のワールドカップは決勝トーナメント1回戦が進行中である。男子のグループリーグの最終戦が行われた6月24日の段階で女子は欧州勢が7チームも残っており、今回の女子ワールドカップにかける欧州勢の意気込みが伝わってくる。
 そして男子のルーマニア戦の前日には、女子がブラジルを延長で破っており、男女そろってオリンピックに出場したいところである。

■ルーマニアを後押ししたイタリア在住のルーマニア人

 今回の21歳以下の欧州選手権はイタリアとサンマリノの開催というものの、イタリアは北東部のみで行われる。フランスの入っているグループCはサンマリノとチェゼーナで行われている。この北東部にはルーマニアからの移民が数多く住み、国民的英雄ゲオルグ・ハジの二世、ヤニス・ハジが父親同様の背番号10をつける故国のチームを応援した。かつてはルーマニアからの移民はフランスに数多く定住したが、現在は距離的に近いこともあり、イタリアに多く住み、今大会でもクロアチア、イングランド戦の連勝は熱心なファンの応援の影響もある。

■疲労の蓄積したルーマニア

 この勢いでフランスにも勝利したいルーマニアであるが、最終戦は勝手が違う。まず、前回の本連載で紹介したとおり、フランスが3点差をつけて勝利すれば、イタリアがオリンピック出場となる。また、ルーマニアはクロアチア、イングランドに連勝したものの、先発メンバーを変えず、おそらくフランス戦もほとんど同じメンバーで戦うであろう。一方のフランスは第1戦と第2戦で先発メンバーを3人入れ替え、選手の負荷の均等を図っている。さらに、ルーマニアは第1戦、第2戦とも18時30分キックオフの第1試合であった。この時間帯はまだ太陽が出ており、特に暑い夏となった今年、選手の消耗は激しい。他方のフランスは第1試合も第2試合も日が暮れてからの21時キックオフであった。

■スコアレスドロー、フランスは24年ぶり、ルーマニアは56年ぶりのオリンピック

 このように日程面からくる疲労の気にかかるルーマニアであったが、会場のディノ・マヌッツィ競技場は開催国イタリアの出場しない試合ではグループリーグでは最多の1万2000人の観衆が集まった。
 フランスはGKはポール・ベルナルドーニ、DFはケルバン・アミアン、イブラヒマ・コナテ、ダヨ・ウパメカノ、マラン・サール、MFはマテオ・ゲンドウジ、ルカ・トゥザール、オリビエ・エンチャム、FWはジョナタン・イコネ、ジャン・フィリップ・マテタ、マーカス・テュラムというメンバーである。
 試合は立ち上がりはルーマニアが優勢に進めるが、フランスはよく守る。個々でルーマニアはリスクをかけて勝利を狙うのではなく、オリンピック出場に向けた現実的な戦いにスローダウンする。一方のフランスも後半に入った時点で首位突破ではなく、イタリアを上回る勝ち点7を得ることに方向転換する。後半は両チームとも引き分け狙いの試合となり、スコアレスドローとなり、両チームが決勝トーナメント進出、オリンピック出場となったのである。フランスは1996年のアトランタ大会以来24年ぶり12回目、ルーマニアにとっては前回の東京大会以来56年ぶり3回目のオリンピックとなった。
 決勝トーナメントでは準決勝でフランスはスペインに1-4と大敗する。ルーマニアもドイツに2-4と敗れ、決勝戦はスペインが2-1とドイツを下す。ファイナリストの2チームが抜きんでた力を見せ、東京に乗り込むのである。(この項、終わり)

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