第2636回 コロナウイルス感染拡大(1) 欧州からサッカーを奪う

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■3月11日までは中止1試合、無観客1試合

 前々回と前回の本連載ではコロナウイルスの感染拡大で無観客試合となった3月11日のパリサンジェルマン-ボルシア・ドルトムント(ドイツ)戦について紹介したが、この試合を最後に欧州ではサッカーの試合が行われていない。
 フランスリーグの第29節は3月13日から15日にかけて行われる予定であった。第28節は前々回の本連載で紹介したとおり、感染が特に著しいグランテスト地方で3月7日に行われるストラスブール-パリサンジェルマン戦のみが中止(延期)になり、それ以外の試合は行われた。また、2部リーグでは3月6日に行われるシャンブリー-ルマン戦を無観客試合で行うことが3月3日に決定されている。これらの時点ではフランスにおける感染者数はまだ3桁であり、国民の多くは深刻にはとらえていなかった。

■ボルシア・ドルトムント戦勝利の翌日に全土の学校の休校が発表

 しかし、3月8日にフランス国内での感染者数が1,000人を突破し、雲行きが怪しくなってきた。フランス政府は1,000人以上の集会を禁止し、これを受けて3月11日のパリサンジェルマン-ボルシア・ドルトムント戦並びにそれ以降のリーグ戦が無観客で行われることが決定した。フランス国内で2試合目の無観客試合についてはパリサンジェルマンの勝利をパルク・デ・プランス周辺に集まった3,000人のファンは歓喜の夜を過ごしたが、コロナウイルスの威力はサッカーファンの希望を砕いた。
 3月11日にパリサンジェルマンが快勝した時もコロナウイルスは勢力を広げ、3月11日の時点での感染者数は2,200人を超えた。
 3月12日にフランス政府とフランスサッカー連盟は厳しい決定を下さざるを得なくなる。 フランス政府についてはこの日の夜にエマニュエル・マクロン大統領がテレビを通じて国民に語りかけ、3月16日からフランス全土における幼稚園から大学までの学校の休校を発表するとともに、70歳以上の高齢者に外出しないことを要請した。マクロン大統領は医者の家系の出身であり、感染症の拡大を何としても防ぎたいのであろう。

■フランス国内におけるすべてのサッカーの活動が停止

 フランスサッカー連盟はフランス国内におけるすべてのサッカーにかかわる活動を停止することを発表した。これは何万人も観客の集まるプロの試合の開催だけではない。各地域のリーグや女子やアンダーエイジの試合もすべて中止となった。そして中止になったのは試合だけではなく、練習も中止され、すべてのサッカーが行われなくなったのである。
 フランス国内では他のスポーツもサッカー同様に試合、練習が行われなくなった。フランスのスポーツイベントで最初に影響を受けたのは3月1日に行われる予定であったパリハーフマラソンである。前日の2月29日にフランス政府は5,000人以上集まる集会を禁止、これを受けて、およそ4万人が参加する予定だったパリハーフマラソンは9月6日に延期となった。3月6日と7日に予定されていたクロスカントリーのフランス選手権も中止された。
 他の競技団体もサッカーと同じ動きであり、現在のフランスではスポーツが行われなくなっている。さらに、3月14日の夜にエドゥアール・フィリップ首相は食料品店や薬局などの生活必需品を取り扱う商店以外の営業停止という政府決定を発表、フランス社会は平常を失った。

■3月11日を最後に欧州全体で試合が中止

 サッカーやスポーツどころではない状態になったのはフランスやイタリアだけではなく、スペインも非常事態宣言を発表し、ドイツ、英国でも感染拡大の勢いはとどまらず、欧州がパンデミックの中心となっている。
 欧州の五大リーグはフランス同様、3月7日と8日の週末には試合が行われたが、3月14日と15日の週末には試合が行われていない。そしてこの状態はいつまで続くかが先は見えない。さらに、今年はシーズン終了後に欧州選手権も予定されている。すでに6月に10試合を消化する、というようなプランも持ち上がっているが、全くわからない状態となっているのである。(続く)

このページのTOPへ