第2637回 コロナウイルス感染拡大(2) リーグ戦等の再開のめど立たず、欧州選手権も延期に

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■エマニュエル・マクロン大統領、2回目のテレビ演説、15日間は不要不急の外出禁止

 前回の本連載ではコロナウイルスの感染拡大の影響により、3月11日のパリサンジェルマン-ボルシア・ドルトムント(ドイツ)戦を最後にフランス国内ではサッカーが行われなくなったことを紹介したが、その後も事態は急速に悪化している。3月12日にはエマニュエル・マクロン大統領から3月16日からのフランス全土の学校の休校、さらに3月14日には生活必需品を扱う商店以外の営業停止、すなわち食料品店、薬局、ガソリンスタンド、銀行、たばこ・新聞販売所以外のレストラン、カフェ、映画館などを3月15日0時から閉鎖することがエドゥアール・フィリップ首相から国民に伝えられた。
 3月に入ってから感染者、死者の数が急増したコロナウイルスの猛威を前に、3月16日にはマクロン大統領がテレビを通じて2回目の演説、フランスは戦争状態にあり、3月17日正午以降のすべての集会、旅行を禁じ、15日間の不要不急の外出禁止を命じた。当然、買いだめなどの行為は起こるが、違反者には罰則が課せられる。

■プロ選手も感染、グランテスト地方のトロワの石鉉俊

 3月14日に感染者数が4,500人を超えた段階でフランスはステージ3(全国的にウイルスが流行している状態)に入った。そして数多くの感染者の中にはサッカー関係者も含まれ、最初の感染者は2部のトロワに所属する韓国代表の石鉉俊である。トロワはフランス国内では最も感染の広がっているグランテスト地方にある。石鉉俊は1部のスタッド・ド・ランスでプレーしていたが、冬の移籍市場でランスに移ったばかりであった。

■再開のめど立たず、来季に向けた順位決定方法に2つの案

 前回の本連載で紹介した通り、3月14日と15日に開催される予定のフランスリーグ第29節は中止(延期)とお伝えしたが、各チームは試合だけではなく練習も中止しており、活動再開の見通しは立っていない。
 こうなってくると気になるのは未消化の試合をどうするかである。現時点でフランス国内で未消化なのは、リーグ戦の1部と2部の第29節から第38節までの10節(1部と2部を合わせて180試合)、そして第28節で中止となったストラスブール-パリサンジェルマン戦、フランスカップの決勝(パリサンジェルマン-サンテチエンヌ)、リーグカップの決勝(パリサンジェルマン-リヨン)、また、1部と2部の入替戦の2試合(ホームアンドアウエー)と入替戦出場権をかけた2部のプレーオフ2試合である。これらの試合を消化しないと、来季のリーグ1部と2部の構成チーム、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの出場チームを決定することができない。もし、今季試合が再開できない場合の対応を巡って意見が二分された。まず、今季の試合をすべてなかったことにするという考え方、もう1つは全試合の行われた第27節終了時の順位等で決定するというものである。
 第27節終了時の順位で決定するのであれば、来季のチャンピオンズリーグの出場するのは1位のパリサンジェルマン、2位のマルセイユ、3位のレンヌ、ヨーロッパリーグにはリーグ4位のリールに加え、5位モンペリエ、6位リヨンとなる。そして降格するのは19位のアミアンと最下位のトゥールーズである。
 この方式に反対し、今季の試合をすべてなかったことにするという方式を支持しているのがリヨンである。今季の試合をすべてなかったことにした場合、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの出場チームも今季と同様となり、リヨンはパリサンジェルマン、リールとともにチャンピオンズリーグに出場できる。

■欧州選手権が1年延期、6月末までに残り試合を完遂

 このような議論はパンデミックの中心となった欧州の他の国でも沸き起こっているはずである。そしてその議論の基本にあるのは日常となる国内リーグ戦を全うするということである。このような中でUEFAは今夏の欧州選手権の開催の1年延期を発表した。そしてフランスでは最低でも17日間が必要な未消化の試合を6月の末までに完遂することを表明した。週に1度の日常を取り戻すために、4年に1度の欧州選手権の開催を延期した。いち早くリーグ戦の中止を決定し、そして東京オリンピックを完全な形で開催する日本とは大きな考え方の違いである。(この項、終わり)

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