第135回 2002年デビスカップ・ファイナル(1) フランス、2年連続して決勝進出

■サッカーは影の薄い「フランス代表」

 前回まで紹介したユーゴスラビアとの対戦で完勝したが、フランス代表メンバーと言ってジネディーヌ・ジダンやティエリー・アンリを思いつく人は実は多数派ではない。他のスポーツの選手を思いつくフランス人のほうが多いのではないだろうか。圧倒的な人気がサッカーに集中する日本とは異なり、フランスの場合、ラグビー、テニス、バスケット、ハンドボールなど人気スポーツは分散している。これらはいずれもフランスが世界のトップレベルにあるスポーツばかりである。特にラグビーは今年の六か国対抗では全勝優勝、そしてテニスは昨年デビスカップを制覇し、実力に関してはサッカーをしのぎ、人気についてもサッカーをしのぐ勢いである。
 11月はラグビーの国際交流月間であり、フランスは南アフリカ、カナダに勝利し、ニュージーランドと引き分けるという上々の成績を残し、来年のワールドカップに向けてファンの期待が高まった。11月はラグビーのフランス代表の動向が連日のように報道され、一方のサッカーのフランス代表はユーゴスラビア戦の前後しかマスコミには登場しなかった。
 ところが、11月下旬になってもう一つのフランス代表がマスコミにしばしば登場するようになった。それは男子テニスのフランスチームのメンバーである。本連載の第25回で紹介した通り、昨年フランス人にとって最も感動的だったスポーツシーンはメルボルンでのデビスカップ決勝の豪州戦であった。そしてその感動の瞬間が再び1年経ってやってこようとしているのである。

■オランダ、チェコを破り、準決勝進出

 デビスカップのワールドグループは16か国で争われ、全豪オープンの直後の2月に1回戦、ビッグトーナメントのない4月に2回戦、全米オープンの直後の9月に準決勝が行われ、シーズン最後の11月末あるいは12月始めに決勝が行われる。前年の覇者フランスは1回戦でメッスにオランダを迎える。初日のシングルス2試合ではセバスチャン・グロジャンとアルノー・クレマンが連勝し、2日めのダブルスを迎える。ところがセドリック・ピオリンとファブリス・サントロのペアが敗れ、最終日の第1試合でグロジャンが勝って2回戦進出を決める。
 ポーで行われた2回戦では1回戦でブラジルを下したチェコと対戦する。初日のシングルスに出場したのはグロジャンとエスクーデ。1勝1敗という成績だったが、2人とも負傷し、特にエスクーデは3日めのシングルスには出場できないことになった。ここで奮起したのがダブルスプレーヤーのサントロである。ミカエル・ロドラと組んだダブルスで勝利、オランダ戦での汚名を返上する。そして3日めはエースのグロジャンが敗れ、2勝2敗のタイとなった最後の試合でシングルスに登場。チェコのナンバー2のボーダン・ウルラッヒと対戦。第1セットは7-6、第2セットは7-5と先取したが、第3セット、第4セットを連取され、勝負は最終セットに持ち込まれた。1991年の優勝メンバーのサントロは最終セットを6-3ととり、準決勝に進出したのである。

■9.11から1年、ナショナリズムの高揚する米国をローランギャロスで撃破

 9月20日から行われた準決勝はローランギャロスに米国を迎える。クレーコートということで米国はピート・サンプラスをはずし、ジェームス・ブレイクを起用。そしてもう1人のシングルスの選手もクレーコートのヒューストンでサンプラスを決勝で破って優勝したアンディ・ロディックを起用する。同時多発テロからちょうど1年という時期での対戦。プロ選手としてツアーを戦っている選手にとってデビスカップは賞金ではなく国家の名誉のために戦う数少ない試合である。クレーコートが得意な選手をそろえ、ナショナリズムの高揚する時期に星条旗を背負って大西洋を渡った米国チームはフランスにとって連覇への関門である。しかし、声援が認められているデビスカップではホームチームが有利である。フランスは初日のシングルスでクレマン、グロジャンが連勝、2日めのダブルスでロドラ・サントロ組がフルセットの末破れたが、最終日のシングルスの第1試合でグロジャンが勝ち、決勝進出を決めたのである。

■決勝の相手はロシア、舞台はベルシー

 そして決勝は11月29日から12月1日までパリのベルシー多目的スポーツセンターで行われる。決勝の相手は準決勝でアルゼンチンを破ったロシア、不思議なことに今年のデビスカップでベスト4に残った国はいずれもサッカーでのワールドカップでは不本意な成績に終わっている。今年最後のスポーツ界の大イベント、フランスの連覇なるか、ロシアの初優勝か、楽しみは尽きない。(続く)

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