第209回 NBAファイナル (2) サンアントニオ・スパーズ、ファイナルに進出

■テキサス-パリ、深夜の生中継

 栄光のNBAファイナルを目指すイースタンカンファレンスファイナルはサンアントニオ・スパーズとダラス・マーベリックスというテキサス勢の顔合わせになった。両チームともフランス人選手が所属していることから、フランスでも注目を集め、フランスでは深夜の2時半あるいは3時からこのカンファレンスファイナル全試合を生中継することが急遽決定し、フランスのスポーツファンはその後1か月間にわたり睡眠不足に悩まされることになったのである。
 両チームともレギュラーシーズンは60勝22敗、直接対決は2勝2敗と五分の成績。サンアントニオとダラスは300キロしか離れていない。スパーズの注目選手は2年連続でレギュラーシーズンMVPに選出されたティム・ダンカン。しかし、深夜にテレビの前に座っているフランスのファンにとってお目当てはフランス人のトニー・パーカーである。21歳の誕生日を迎えたばかりの若者がチームの司令塔として活躍している。一方のマーベリックスにはタリク・アブドル・ワハッドとアントワン・リゴードーという2人のベテランのフランス人選手が所属しているが、リゴードーは負傷のためメンバーから外れており、アブドル・ワハッドに期待したい。

■ティエリー・アンリ、サンアントニオでトニー・パーカーを応援

 5月20日の第1戦はサンアントニオで行われた。この試合に応援に駆けつけたのがサッカーのティエリー・アンリである。背番号9のパーカーの激励に大西洋を渡ってやってきたのである。初戦はポイントガードのパーカーが試合を自由自在に組み立て、自らも18得点をあげる活躍をする。そしてスパーズは終始試合を有利に進めるが、マーベリックスのオフェンスのダーク・ノビツキー、マイケル・フィンリーが大活躍。試合時間残り14秒で見事な逆転劇、アウエーでの初戦を113-110と見事にものにする。
 第2戦もサンアントニオで行われ、パーカーの19得点と、エースのダンカンの32得点という活躍、第1戦では18得点差を逆転されたスパーズであるが、第2戦は前半につけた25点差をキープし、119-103というスコアで1勝1敗のタイに持ち込み、決戦の舞台はダラスに移る。

■「ミスター第3クォーター」の活躍でファイナルに王手

 ダラスでの2試合、パーカーは伝説をつくる。初のファイナル進出を目指し、地元ファンの期待も高まるダラス。24日のサンアントニオでの試合はスパーズが先行する展開だったが、マーベリックスが先行し、第3クォーター開始早々には49-38と11点差をつける。ところがこの第3クォーターに爆発したのがパーカーである。パーカーは第3クォーターだけで19得点をあげる奇跡的な活躍をする。この試合全体でスパーズが逆転し、敵地のファンを沈黙させる2勝目を上げたのである。
 そして26日の第4戦でもパーカーが第3クォーターに11得点をあげる。パーカーは試合全体でも25得点をあげる活躍をしたが、これで「ミスター第3クォーター」という称号を得る。パーカーの第3クォーターの活躍でスパーズは102-95と勝ち、ついにファイナルにあと一歩となり、第5戦は中一日置いて地元に戻って行われたのである。

■パーカー不調も一致団結したスパーズがファイナル進出

 地元の第5戦でファイナル進出を決めたいスパーズは序盤から得点を重ねる。第2クォーター終了時で11点差をつけ、第3クォーターに入ってもダンカンがゴールを決め続け、ファイナル進出は確実と思われた。ところが第3クォーターの後半から試合は急転する。マーベリックスが怒涛の反撃に転じる。ディフェンス陣がスパーズの攻撃を封じ込め、攻めては伏兵フィンリーが第3クォーターの15得点を含む31得点の大活躍。7点のビハインドで迎えた第4クォーターはマーベリックスの29-10のワンサイド、終わってみればマーベリックスが103-91と大逆転。フランス人期待のパーカーもわずか7得点と大ブレーキですでに東の空が明るくなってきたファンを失望させたのである。一方、もう1人のフランス人選手のアブドル・ワハッドがようやくこの試合で初得点、第6戦は再びダラスへと移動して行われたのである。
 第6戦はパーカーがウイルス性の腹痛のため体調を崩し、出場わずか13分、そして無得点という不振、そしてエースのダンカンのシュートも決まらず、スパーズは第3クォーター終了時で56-69と13点のビハインド。ところが最終クォーターにスパーズは一致団結し、なんと34-9という神がかりのスコアで大逆転。ダラスは1963年のケネディ暗殺以来の沈黙に包まれた。
 パーカーはフランス人初のNBAファイナリストとなり、ジェイソン・キッドのいるニュージャージーネッツとの戦いに臨むことになったのである。(続く)

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