第441回 マスターズシリーズ・モンテカルロ大会 (1) 欧州に春を告げる赤土での戦い

■欧州でシーズン最初に行われるビッグトーナメント

 スポーツに理解を示し、スポーツ界に大きな貢献をしたモナコ公国のレーニエ3世が4月6日に逝去したことを前々回の本連載でご紹介した。モナコは1週間の喪に服し、サッカーではフランスリーグのモナコ-リール戦が延期された。そしてレーニエ3世の逝去後初めてモナコで行われる大きなスポーツイベントがテニスのモンテカルロ大会である。
 このモンテカルロ大会はグランドスラムのすぐ下に位置するマスターズシリーズであり、いろいろな意味で注目を集めるトーナメントである。テニスのシーズンはカレンダーと同じく1月に始まり12月に終わる。シーズン当初の北半球は冬であり、南半球や緯度の低いエリアでのトーナメントが中心となる。また、この時期に欧州で行われるトーナメントのグレードは高くない。この時期のビッグトーナメントは1月にグランドスラムの全豪オープン、そして3月に米国のインディアン・ウェルズとマイアミでそれぞれマスターズシリーズのトーナメントが行われただけである。欧州でシーズン最初に行われるマスターズシリーズ以上のトーナメントがこのモンテカルロ大会であり、モナコやフランスだけではなく欧州中のテニスファンが注目するのである。

■地中海の太陽とそよ風を浴びる屋外でのトーナメント

 注目を集める理由はそのグレードだけではない。欧州に春の訪れを告げる大会であるからである。テニスは本来的には屋外のスポーツである。しかし、1月から3月まで欧州では屋内でしかトーナメントが行われない。ようやく4月になると欧州での屋外でのトーナメントが争われるようになり、まず4月の第1週にスペインのバレンシアが欧州でシーズン初めての屋外でのトーナメントであり、モンテカルロが第2戦となるが、大会の格や注目度を勘案すると、モンテカルロが実質的に最初の欧州での屋外での公式戦となり、地中海の太陽とそよ風を浴びて熱戦が繰り広げられる。

■ローランギャロスへと続くモンテカルロのクレーコート

 そして注目すべきはサーフェースである。春のテニスシーズンには2つの頂点がある。まず5月末から6月にかけて行われるローランギャロス(全仏オープン)、そして6月末から7月にかけて行われるウィンブルドン(全英オープン)であるが、ローランギャロスはクレーコート、ウィンブルドンはローンコートで行われる。4月から5月まで行われるトーナメントは全て土の上で争われ、そのゴールはローランギャロスである。そしてローランギャロスの終了後、ウィンブルドンまでのトーナメントは芝生の上での戦いとなるのである。すなわち、4月から6月までの3か月間、ほとんどのトーナメントは欧州内で行われ、4月、5月はクレーコートのみ、6月はローンコートのみで行われる。クレーコートのトーナメントの開幕戦はモンテカルロの前週にカサブランカとバレンシアで行われるトーナメントであるが、有力選手がエントリーするのはこのモンテカルロからである。また、2月間のクレーコートでのトーナメントのうちマスターズシリーズに位置するのはモンテカルロ、ローマ、ハンブルグと3つあるが、その先陣を切って行われるのがこのモンテカルロであり、ローランギャロスをゴールとするクレーコートの争いにおける最初の関門である。モンテカルロでの成績が向こう2か月間の土の戦いを左右するのである。

■クレーコートを席巻するスペイン・南米勢

 クレーコートは近年、スペインや南米の選手が得意とし、このモンテカルロも例外ではない。昨年はアルゼンチンのギレルモ・コリア、その前の2002年と2003年はスペインのホアン・カルロス・フェレーロが連覇、2001年はブラジルのグスタボ・クエルテンが優勝を飾っており、フランス勢の優勝は2000年のセドリック・ピオリンまでさかのぼらなくてはならない。クレー開幕戦となったカサブランカとバレンシアのトーナメントでも、カサブランカではアルゼンチン勢同士の戦いとなり、バレンシアではベスト4のうち3人を地元スペイン勢が占めた。現在世界ランク1位でハードコートの上では無敵のスイスのロジェ・フェデラーも今年初めてクレーコートでのトーナメントに参戦し、悲しみの中で開幕する歴史あるモンテカルロでのトーナメントへの関心は尽きないのである。(続く)

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