第447回 ラグビー現象(3) 2年ぶりにフランス勢同士の決勝戦

■6チーム中3チームが首位、2チームが2位のフランス勢

 前回の本連載ではフランスのラグビーの都であるトゥールーズが今季の欧州カップの決勝に進出したことを紹介したが、今回はもう一つのファイナリストを紹介しよう。
 フランスから今季の欧州カップにスタッド・フランセ、ビアリッツ、トゥールーズ、ブルゴアン、カストル、ペルピニャンという6チームが出場した。グループリーグは6つのプールに分かれて行われ、全てのプールにフランスのチームが1チームずつ入り、ホームアンドアウエーで6試合行う。フランス勢は前回紹介したとおり、スタッド・フランセ、ビアリッツ、トゥールーズがそれぞれプール首位となり、決勝トーナメントに進出し、カストル、ペルピニャンも決勝トーナメント進出は逃したものの、プール2位に入り、レベルの高さを示している。

■キッカーの活躍でビアリッツが4強入り

 ビアリッツは地元に3万2000人の観衆を集めてアイルランドのムンスターと対戦する。この試合、両チームとも1トライであり、キッカーが勝負の決め手となった。ビアリッツのキッカーはフランス代表にも入っているディミトリ・ヤチビリであり、ゴール1本、ペナルティ4本を決めて14点をあげる。このヤチビリのキックによりビアリッツは19-10と勝利したが、ヤチビリ以外にもジャン・バプティスト・エリサルド、フレデリック・ミシャラクなどの選手が揃っているフランスはキッカーの宝庫である。

■長いロスタイムの最後の逆転劇

 前々回の本連載でスタッド・フランセの活躍を紹介したが、4強のうち3チームはフランスのチームとなったのである。サッカーの欧州カップでフランス勢が4強に残ることができなかったのとは対照的な成績である。
 満員のパルク・デ・プランスでのスタッド・フランセとビアリッツの戦いは歴史に残るものになった。この試合終始リードを保ったのはビアリッツであった。8分にスーパーブーツのヤチビリがPGを決めて3点先制する。前半を9-3で折り返し、後半に入って65分にフランス代表のCTBであるダミアン・トレイユがこの試合初めてのトライを決めた直後にはスコアは17-6と広がった。しかし、パリの名門は超満員の観客の期待に応えたのである。まず、73分にジェローム・フィヨルがトライ、そして自らがゴールをゴール成功させて4点差に差を縮める。そして規定の80分が過ぎてもイングランド人の主審はノーサイドの笛を吹かず、ロスタイムに入ってしばらく経ったところでフランス代表のWTBのクリストフ・ドメニシが劇的なトライを決める。この時、すでにロスタイムに入って9分目、長い長いロスタイムの劇的なトライ(ゴール成功)でスタッド・フランセは2001年以来4年ぶりの決勝進出を決めたのである。

■これまでのファイナリストの半数がフランス勢

 フランス勢同士の決勝となったが、これまで同一国のチーム同士による決勝はただ1回しかなく、しかもそれは2年前のトゥールーズ-ペルピニャン戦というフランス勢同士の対戦である。そしてこれまで9回欧州カップは争われてきたが、フランス勢が決勝に進出しなかったのはわずか2回、残りの7回は少なくとも1チームはフランス勢が決勝に進出している。10回という短い歴史であるが、のべ20チームの決勝進出チームのうちフランス勢はその半数の10チームを占めているのであり、北半球のクラブレベルでのラグビーがフランス勢を中心に回っていることを表している。サッカーの世界で多くの日本人選手がイタリアのセリエAで活躍しているのと同様、ラグビーの世界でも多くの日本人選手がフランスのクラブで活躍をしたことから、海外のトップレベル志向の強い日本人のファンの皆様ならばよくご存知のことであろう。
 さて、決勝は5月22日にスコットランドはエジンバラのマレーフィールド競技場で行われるが、準決勝を前にして、すでに4万枚のチケットが売れている。前回のフランス勢対決はラグビーの都トゥールーズが制しているが、今回は政治経済の都のチームが勝つのか、ラグビーの都のチームが勝つのか、興味は尽きない。(この項、終わり)

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