第450回 トゥールーズ、輝く3度目の欧州制覇

■サッカーと好対照なフランス勢の華々しい成績

 本連載第445回から第447回で「ラグビー現象」と言うタイトルでフランスにおけるラグビーの隆盛を紹介したが、国内シーズンのフィナーレの前に、欧州チャンピオンを争う欧州カップの決勝が行われた。国内リーグの終盤に欧州チャンピオンを決める決勝戦が行われるのはサッカーと同様であるが、フランスのスポーツファンにとってラグビーとサッカーが大きく違うのが欧州カップでのフランス勢の活躍である。本連載の第447回で紹介したとおり、歴代のファイナリストの半数がフランスのクラブチームであり、フランス勢は3回の優勝を誇っている。40年以上の歴史を誇るチャンピオンズリーグ(チャンピオンズカップ)の決勝でフランス勢がまだ1度しか勝利していないのとは好対照である。
 そして今年の決勝の組み合わせはトゥールーズとスタッド・フランセ、ラグビーの都と首都のチームの対戦となった。サッカーで言えばさしずめマルセイユとパリサンジェルマンがチャンピオンズリーグの決勝で対戦するとお考えいただきたい。想像するだけで心の躍るカードであるが、両チームの最近の成績を考えれば、絶対にありえないカードであることも残念ながら事実である。

■準決勝の翌週に国内リーグで激突

 両チームの準決勝の戦いぶりについてはすでに本連載で紹介しているが、両チームが決勝進出を決めた翌週には国内リーグで両チームが対戦した。上位4チームが決勝トーナメントに進出できるが、この段階でトゥールーズは79ポイント(勝敗以外にもトライ数に応じてポイントが付与される)で3位、スタッド・フランセが77ポイントの4位と決勝トーナメント進出の瀬戸際にある。また、両チームとも名門であるが、1997年にスタッド・フランセが1部リーグに復帰してからの対戦成績はスタッド・フランセが6勝5敗と勝ち越しているが、この11回の対戦でアウエーのチームが勝利したのはわずか2回という戦績からスタッド・フランス優勢という声が強かった。しかし、リーグ史上最多の観客の前で行われた試合はトゥールーズが先制トライを上げ、その後もリードを保ちつつ19-15とリードして前半終了。ところが後半はスタッド・フランセが3トライ(2ゴール)、2ペナルティゴールを上げ、トゥールーズを無得点に押さえ、40-19と地元ファンに応える逆転勝利で、順位も3位と4位が入れ替わったのである。

■ロスタイムに追いついたトゥールーズが延長で突き放す

 そしてそれから3週間、舞台はスコットランドのエジンバラである。5万人を越える大観衆の前で繰り広がれた試合はトライこそなかったもののスリリングな展開となった。前半はトゥールーズ出身でスタッド・フランセのスタンドオフのダビッド・スクレラが先制を含む3本のペナルティゴールを決める。一方、スタッド・フランセはこの日スクラムハーフに入ったジャン・バプティスト・エリサルドが2本のペナルティゴール。後半にも1本ずつパネルティゴールを決めて、ロスタイムに入る段階でスタッド・フランセが12-9と僅差のリード。ところがロスタイムに入って6分経ったところで、トゥールーズはゴール正面の至近距離でペナルティのチャンスを得る。エリサルドがベンチに下がっていたため、スタンドオフのフレデリック・ミシャラクがキッカーを務める。ゴールを決めて80分を終了し、前後半10分ずつの延長戦に突入した。
 試合の流れはすでにトゥールーズ、延長開始早々のトゥールーズの攻撃に対し、スタッド・フランセはペナルティを犯す。ミシャラクが難なく決めて、トゥールーズはこの試合初めてリードを奪う。エンドが代わった延長後半にも開始早々、40メートルという長距離のドロップゴールを決め、6点差をつける。100分の戦いを終え、トゥールーズは3週間前に逆転負けを喫した相手に見事な逆転勝ちを演じた。

■欧州王者もレベルの高い国内では苦戦

 トゥールーズは初めて3度目の優勝をしたチームとなった。欧州のトップに立ったトゥールーズであるが、忘れてはならないことがある。それは最終節を控えた国内リーグで4位に甘んじていることであり、欧州カップの決勝でトゥールーズが下したスタッド・フランセや準決勝で敗退したビアリッツなどの後塵を拝していることである。逆に言えば、フランス・ラグビーのレベルの高さを物語っており、サッカーファンはただため息をつくばかりである。(この項、終わり)

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