第552回 欧州の頂点目指すフランスのラグビー(2) ビアリッツ、初の決勝進出

■スペインのサンセバスチャンで試合を行うビアリッツ

 欧州カップの決勝トーナメントの初戦である準々決勝の初日、フランス勢は前回王者のトゥールーズに続きペルピニャンも敗れ、暗雲立ち込めるエイプリルフールとなった。4月2日に最後のフランス勢として姿を現したのが昨年の国内チャンピオンであるビアリッツである。
 ビアリッツはホームでイングランドのセールを迎える。ところが、ホームゲームとは言ってもビアリッツで試合を行うのではない。試合会場は国境を越えたスペインのサンセバスチャンのアノエタ競技場である。本連載の読者の皆様ならばよくご存知の競技場である。第287回の連載で紹介したとおり、2004年のフランスカップでバイヨンヌがパリサンジェルマンを迎える際に提案した競技場である。結局国外でのフランスカップの試合は実現しなかったが、バイヨンヌとビアリッツは隣接しており、ビアリッツがビッグゲームをスペインで行うのも理解できよう。

■フランス勢最後の灯を守ったビアリッツ

 そのバイヨンヌは欧州カップのグループリーグで2位となり、欧州チャレンジに転戦し、ロンドン・アイリッシュに5-48と大敗、さらに欧州チャレンジではフランスからブリーブも出場しているが、これまたイングランドのグラスターに敗れており、まさにフランス勢最後の砦となった。
 通常はサッカーのレアル・ソシエダのチームカラーの紺と白で埋まるこの競技場はこの日は赤と白のビアリッツのチームカラーに染まり、フランス代表としても活躍するディミトリ・ヤチベリの活躍で終始ビアリッツがリードする。結局19-10というスコアでビアリッツが勝利、フランスの最後の希望の灯を守ったのである。ビアリッツは昨年、一昨年と準決勝に進出しており、これが3年連続の準決勝進出となった。

■日本代表も見学に訪れたビアリッツの練習

 準決勝進出を決めたビアリッツを訪問したのは準決勝で対戦するバースの偵察部隊だけではなかった。来年の来年のワールドカップを目指す日本代表がフランス遠征中にこのビアリッツの練習を見学に行った。日本代表に帯同していた日本のジャーナリストも多かったことから、このことは日本の皆様もよくご存知であろう。

■ヤシビリの活躍でついに初めての決勝進出

 さて、準決勝は4月22日にビアリッツ-バース、4月23日にレンスター-ムンスターという組み合わせで行われた。準決勝も再びビアリッツはサンセバスチャンのアノエタ競技場を試合会場として選ぶ。ビアリッツはこれまで2年連続して準決勝に進出し、いずれも敗れているが、一昨年の相手はトゥールーズ、昨年の相手はスタッド・フランセとフランス勢同士の戦いで敗れている。この日の相手のバースは1998年のチャンピオンチームであるが、バスクの選手の闘志は全く衰えることがなかった。試合は準々決勝でも活躍したヤシビリのキックがさえる。均衡した試合でトライチャンスが少ないと見るや、PGを狙い、実に5PGを成功させる。これにダミアン・トライユの1DGを加えて18点、一方のバースもノートライで3PGのみ、結局ビアリッツは18-9というスコアで初めての決勝進出となり、フランス勢として6チーム目の決勝進出クラブとなり、フランスのラグビーがクラブのレベルでも欧州の頂点にあることを示したのである。
 もう一方の準決勝はムンスターがアイルランド勢同士の戦いを制し、2000年、2002年に次ぐ、3度目の決勝進出を決めた。フランス勢はこれまで欧州カップではアイルランド勢を不思議と苦手としており、通算成績はフランス勢が5勝10敗と負け越している。しかし、ビアリッツとムンスターの対戦成績は1勝1敗の五分である。最初の対戦は2001年の準々決勝で38-29でムンスターが勝っているが、昨年の準々決勝ではビアリッツが19-10と勝利している。実は昨年の準決勝はビアリッツが初めてホームゲームをサンセバスチャンのアノエタで行った試合であり、以来ビアリッツはアノエタで3連勝している。
 そして5月20日の決勝はウェールズのカーディフ、ミレニアム競技場で行われるが、すでにチケットは完売、サッカーのチャンピオンズリーグ決勝以上の盛り上がりである。(この項、終わり)

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