第669回 2007年ハンドボール世界選手権(4) アイスランドに敗れ、勝ち点0で2次リーグへ

■アイスランドの大勝を望んだウクライナ

 1次グループの最終戦のアイスランド戦で前半8-18と大差を付けられたフランスであるが、アイスランドが勝てばアイスランド、フランスとともに2勝1敗で並ぶウクライナの選手たちはフランスの逆転勝ちを望んでいるわけではなかった。
 試合を終えたばかりの彼らはフランスが逆転勝ちするより、アイスランドが大勝することを望んでいたのである。フランスが逆転勝ちすれば1位フランス、2位ウクライナとなる。一方、アイスランドがフランスに20点差以上つけて勝利すれば1位アイスランド、2位ウクライナとなる。いずれのケースも1次リーグを2位で突破するのであるから違いがないように思われる読者の方が多いと思われるが、この大会特有の大会規定にその理由がある。

■1次リーグの成績が一部持ち込まれる2次リーグ

 1次リーグの上位2チームが2次リーグに進出するが、この2次リーグの方式が他の大会とは異なっている。2次リーグはグループA、B、Cの上位2チームからなるグループ1とグループDEFの上位2チームからなるグループ2という6チームずつの2つのグループに分かれるのである。そして1次リーグで同じグループだったチームとの対戦は2次リーグではなく、1次リーグの成績を持ち込むことになるのである。

■三者三様のベストシナリオとワーストシナリオ

 したがって、ウクライナにとってフランスが逆転勝ちした場合は、フランスとともに2次リーグに進出するが、フランスに1次リーグで負けていることから2次リーグが始まる段階で1敗(勝ち点0)という成績からスタートする。アイスランドがフランスに大勝した場合は、アイスランドとともに1次リーグ突破となるが、1次リーグでアイスランドに勝っていることからウクライナは勝ち点2で2次リーグをスタートすることができるのである。フランスに対しアイスランドが前半を終了した段階で10点差をつけていることから、20点差もありえない点差ではなく、ウクライナにとって最高のシナリオとなる。
 さて、フランスにとってはどうなるであろうか。まず、アイスランドに勝った場合、2次リーグに進出し、さらに勝ち点2のアドバンテージを得ることができる。これがフランスにとっての最良のシナリオである。そして第2のケースとしてアイスランドに20点差未満で敗れた場合、フランスは得失点差により1位にも2位にもなりうるが、2次リーグに進出する。しかし、アイスランドとともに進出するため、フランスは勝ち点0で2次リーグに臨むことになるのである。そしてフランスが20点差以上で敗れた場合は、フランスにとって最悪のシナリオ、アイスランドとウクライナが2次リーグに進出し、ウクライナが勝ち点2のアドバンテージを得ることになる。
 そしてアイスランドにとっての最良のシナリオは、フランスには勝つが、得点差を20点差以内に収め、フランスとともに2次リーグに進出し、勝ち点2のアドバンテージを獲得することである。20点差以上で勝利すれば、2次リーグ進出のパートナーは前日敗れたウクライナであり、勝ち点のアドバンテージがなくなる。そしてアイスランドにとってもっとも避けるべき最悪のシナリオはフランスに逆転負けを喫することであり、こうなればアイスランドの世界選手権は終わってしまう。

■2次リーグ進出を果たすが、アドバンテージのないフランス

 このようにウクライナ、フランス、アイスランドにとって三者三様のベストシナリオとワーストシナリオがある。そして実際にゲームをしているのはフランスとアイスランドである。何とか逆転勝ちを収めたいフランス、得点差を大きく広げずに勝ちたいフランス、お互いがそれぞれの最良の結果を目指して後半が始まった。
 後半に入ってすぐの33分にアイスランドが21-10と11点差に差を広げるが、結局はこれがこの試合で一番差が開いた瞬間であった。その後、フランスは4連続得点で14-21と7点差に追い上げる。しかしこれが後半で一番フランスがアイスランドに迫ったスコアであった。その後は点差をつめることができず、最終スコアはアイスランドが32-24と8点差で勝利をものにする。アイスランドにとっては一番よい結果となり、フランスにとっては2番目によい結果となり、ウクライナにとって最悪の結果となった。フランスは2次トーナメントに進出したものの、勝ち点0からのスタートとなったのである。(続く)

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