第671回 2007年ハンドボール世界選手権(6) ドイツに敗れるが、決勝トーナメントに進出

■オリンピック、世界選手権の初代王者のドイツ

 1次リーグのアイスランド戦での敗戦によってアドバンテージのない状態で2次リーグを戦ったフランスであるが、ポーランド、スロベニアとアドバンテージのあったチームに連勝し、通算成績を2勝1敗とする。グループ1はこの時点でフランス、アイスランド、ドイツ、ポーランドが2勝1敗で並び、26日は休養日となり、休養日明けの重要な1戦の相手は地元ドイツである。地元開催で優勝を狙うドイツは、オリンピックだけではなく世界選手権でも初代チャンピオンについている。
 サッカーをしのぐ人気を誇りながら、このところ世界選手権、オリンピックでは優勝から遠ざかり、東西統一後のタイトルは2004年の欧州選手権だけである。2004年のオリンピックは銀メダルを獲得したが、その翌年に行われた前回の世界選手権では9位に終わっている。今回も国民の期待が大きかったが、1次リーグでは隣国ポーランドに敗れている。そのドイツも2次リーグに入ってからはフランス同様調子を上げ、スロベニア、チュニジアに連勝と全くフランスと同じ足取りである。

■勢いのドイツ、地力のフランス

 フランスが2次リーグになって調子を上げてきたのはGKのティエリー・オメイエの活躍によるところが大きい。オメイエは昨年モンペリエを離れ、ドイツのキールに移籍している。このキールで正GKの座を争っているのがドイツ代表のGKであるヘニング・フリッツなのである。また、第666回の本連載で紹介している通りフランス代表の16人のメンバーのうち6人がドイツでプレーしており、お互いに手の内をよく知った顔合わせである。昨年の春にはベルシーで行われたトーナメントにドイツが出場し、フランスが35-25と勝利しているが、東西分裂時代も含めた通算の対戦成績は、これまで80戦してフランスが24勝、ドイツ(東西ドイツ含む)が49勝、7つの引き分けと圧倒的にドイツに分があり、地元開催の優勝を目指すドイツの勢い、フランスの地力の対戦が注目された。

■大観衆の声援に押されて勝利したドイツ

 ドルトムントのウェストファーレンホールは1万2000人の大観衆で埋まった。試合は序盤は一進一退で始まるが、前半も中盤を過ぎたあたりで大歓声に後押しされたドイツがフランスとの点差を広げる。前半は14-9とドイツが5点をリードして折り返す。半年前のワールドカップでは見られなかったような熱狂する観衆の中でさすがのフランスも萎縮しているのか。
 後半に入ってもドイツの勢いは止まらず、後半が3分の1経過した39分には13-20と7点差をつける。しかし、後半も半分を過ぎたあたりからフランスが次々にゴールを決めて追い上げ、残り2分となった58分には26-28とその差はわずか2点差となる。この戦いで敗れると決勝トーナメント進出が黄信号となるため、両チーム負けられない熱戦となったが、結局はドイツがフランスを突き放す29点目を上げて、フランスを29-26と振り切ったのである。

■スロベニア、チュニジアの敗戦でフランスは決勝トーナメント進出

 この結果、ドイツは3勝1敗と一歩リード、そしてフランスは2勝2敗で一歩後退した。すでに2勝し、2試合を残しているアイスランド、ポーランドはフランスよりも上位になる可能性がある。フランスの4位争いのライバルはスロベニアとチュニジアである。ドイツ-フランス戦は他の2試合と異なる会場で、先に試合が行われ、フランスは残り2試合の結果を待つことになった。
 ドイツ-フランス戦が終了したころ、別会場で始まったのが2勝1敗のアイスランドと1勝2敗のスロベニアの試合であった。まず、スロベニアはアイスランドに敗れて1勝3敗となった。最終日にフランスがチュニジア戦で敗れ、スロベニアがポーランドに勝利した場合、フランスとスロベニアは2勝3敗で並ぶが、直接対決でフランスが勝利しているため、フランスはスロベニアよりも上位の成績を確保した。
 また、チュニジアは土曜日の最終戦で行われるポーランド戦、日曜日のフランス戦で連勝した場合、フランスと並ぶ2勝3敗となり、直接対決の成績でチュニジアがフランスよりも上位となる。しかし、チュニジアはポーランドに31-40と敗れ、脱落する。この結果、フランスはグループ1で4位以内を確定し準々決勝進出を決めたのである。(続く)

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