第772回 決勝進出かけてイングランドと対戦(2) イングランドのパワーに敗れ、3位決定戦へ

■準々決勝と同じ先発メンバーの両チーム

 ニュージーランドを下した開催国のフランス、そして豪州に勝利した前回優勝のイングランド、いずれも劣勢と言われた中を逆転勝ちして準決勝に駒を進めた。勢いに乗る両チームはこの勢いを大切にして頂上にアタックしたいところである。
 注目のメンバーであるが、イングランドもフランスも準々決勝と同じ先発メンバーでこの一戦に臨む。準々決勝からほぼ1週間日程が空いていることに加え、準々決勝での戦いぶりに両チームとも確信をもっているからであろう。フランスのニュージーランド戦勝利は2人のSOの力によるところが大きい。先発の21歳のリオネル・ボークシスを先発させ、確実にキックで得点を重ね、後半の勝負どころで前回大会の最大の貢献者であるフレデリック・ミシャラクを投入し、ミシャラクが好走を見せて逆転トライに結びつけた。ここ一番での切り札的な存在であり、4年前の戦いで敗れているミシャラクを起用するか、安定したキックのボークシスを起用するか、世論は分かれたが、ベルナール・ラポルト監督は準々決勝と同じメンバーを選び、スタッド・ド・フランスに戻ってきた。

■開始1分30秒でイングランドが先制トライ

 まず4万人の「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」、そして残る4万人の「ラ・マルセイエーズ」の大合唱となる。キックオフ直後、試合は意外な展開となる。ファーストスクラムからイングランドSHのアンディ・ゴマソールがグラバーキック。このボールに追いついたWTBのジョシュ・ルーシーがフランスのフランスFBのダニエル・トレイユを振り切って左中間に先制トライを決める。開始わずかに1分30秒のトライはイングランドにとって今大会スタッド・ド・フランス2試合目にして初めての得点である。

■リオネル・ボークシスの起用が成功、3PGで逆転

 5-0とイングランドが先制するが、ボールと試合を支配したのはフランスであった。ボールの支配率はフランスが65%、フランスが得点を挙げるのは時間の問題であった。ボールを支配されたイングランドは反則を犯し、8分に30メートルのPGをボークシスが決める。そして18分にはハーフウエーライン近くからまたボークシスがPGを決めて、フランスが逆転に成功する。
 試合はこのあたりから両チームの消極的なキック合戦になってしまう。イングランドのFBロビンソンがキックされたボールをリターンしても得点には結びつかず、フランスのバックスリーがキャッチしてもすぐ蹴り返してしまう。そして、最初のトライの後のコンバートを失敗したジョニー・ウィルキンソンは調子が戻らず、26分にはDGを狙うが失敗、29分にもPGのチャンスを得るが失敗してしまう。試合はフランスが1点リードしてハーフタイムを迎えた。
 後半になって44分にフランスはPGのチャンスを得て、ボークシスが3本目のPGを決める。2回のプレースキックのチャンスを2回とも外しているウィルキンソンとの明暗は分かれた。

■終盤にイングランドがパワー爆発、ウィルキンソンのキックで逆転を許す

 そしてようやくウィルキンソンが初めてキックを成功させたのは46分のことであった。35メートルのPGを決めてイングランドは1点差に詰め寄る。イングランドは陣地を支配し始める。ここでフランスは切り札ミシャラクを投入する。この日まだトライの雄たけびを上げていないフランスのファンは、ミシャラクの創造性あふれるプレーが初トライを奪い、イングランドを突き放すと、期待した。
 一方イングランドも1点勝負は変わらない。59分にはウィルキンソンがDGを狙うが、ポストに当たって得点ならず、フランスのリードは続く。フランスもイングランドもベンチの選手を総動員した総力戦となる。試合も終盤を迎え、スタッド・ド・フランスのファンは1週間前のベロドロームと同じ光景を目にする。フィジカルに勝るイングランドがボールと陣地を支配する。主将のラファエル・イバネスに交代して出場したドミトリ・サルゼウスキはたまらずスクラムで反則を犯し、PGをウィルキンソンが決め、残り5分でイングランドは逆転する。さらに78分にはウィルキンソンがDGを決めて5点差となり、フランスはトライが必要となるが、イングランドのパワーの前に屈し、インゴールにボールを持ち込むことができず、9-14で敗れてしまった。
 イングランドは連覇を目指し、グループリーグで完敗した南アフリカと決勝で対戦、そしてフランスは開幕戦で敗れたアルゼンチンと3位の座を争うことになったのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ