第1171回 NBA開幕 (2) 最多となる12人のフランス人プレーヤー

■2003年にはミカエル・ピートラスとボリス・ディアウがNBA入り

 前回はフランス人のNBAのパイオニアとしてミシガン大学からサンホセ州立大を経由してサクラメント・キングス入りしたタリク・アブドル・ワハッド、UCLAからボストン・セルチックスにドラフト指名されたジェローム・モイゾ、パリ・バスケット・ラシンからサンアントニオ・スパーズ入りしたトニー・パーカー、イタリアのクラブからダラス・マーベリックスへ入団したアントワン・リゴードーを紹介してきた。
 特筆すべきは彼ら4人がすべて、NBAでもフランス代表チームでも活躍していることである。
 このパイオニアたちの活躍はフランス人の選手と米国のNBAのチーム双方に良い影響を与えた。リゴードーという現役の代表選手の移籍に刺激を受けたのが、ポー・オルテッズに所属していたミカエル・ピートラスとボリス・ディアウである。2003年にドラフトでピートラスはゴールデンステート・ウォリアーズに、ディアウはアトランタ・ホークスに指名され、ピレネー山脈のふもとのチームメイトは大西洋を渡り、ライバルとなったのである。ピートラスはエール・フランスという愛称でその後オーランド・マジックに移籍し、活躍している。ディアウは2006年に日本で開催された世界選手権に出場、骨折により出場することができなくなったパーカーに代わり主将を務めたことから日本の皆様もよくご存じの選手であろう。そしてディアウは2005年にフェニックス・サンズに移籍し、プレーオフに出場し、カンファレンス決勝まで進んでいる。

■次々とNBA入りするフランス人のトッププレーヤー

 2005年にはジョアン・ペトロがポー・オルテッズからシアトル・スーパーソニックス入りし、ロニー・トリアフが米国の大学からロサンゼルス・レイカーズ入りする。2006年にはスペインのレアル・マドリッドに所属しており、世界選手権5位チームのメンバーだったミカエル・ジェラバルがシアトル・スーパーソニックス、ヤクーバ・ディアワラがイタリアのボローニャからデンバー・ナゲッツ入りする。

■1巡目9位でシカゴ・ブルズ入りしたジョアキム・ノア

 また、2007年にはフランス人として最も高い評価を受ける選手が生まれた。テニス選手のヤニック・ノアを父とミス・スウェーデンの母の間で生まれたジョアキム・ノアである。ノアはニューヨーク生まれでパリにも居住したことはあったが、ニューヨークの高校からフロリダ大学に進み、全米チャンピオンとなる。シカゴ・ブルズから1巡目9位という順位で指名を受け、入団する。ちなみにこの年のドラフトはフロリダ大学から3人の1位指名が生まれ、5人のプロ選手が誕生するという黄金チームであった。

■フランス人選手はNBAで活躍、今季は12人がシーズン開幕を迎える

 フランス人NBA選手の素晴らしさは、過酷なスケジュールであるNBAの中で常時出場し、成長を遂げているということである。昨季までに15人のフランス人選手がNBAでプレーしたが、1シーズンでNBAを去ったのはデビューが遅かったリゴードーだけであり、これまで引退したアブドル・ワハッド、モイゾ、ジェラバル、ディアワラの4人はいずれも複数年プレーし、1シーズンで50試合近く出場している。そして今季でパーカーは10シーズン目、ピートラスとディアウは8シーズン目、トリアフとペトロは6シーズン目となる。
 今季は新たにケビン・セラファンがワシントン・ウィザーズに加わり、パプ・シはアトランタ・ホークスの一員となった。このように有力なフランス人選手のNBAへの進出はとどまることを知らず、今季は12人のフランス人がNBAでシーズン開幕を迎える。
 現在NBAには36か国から87人の外国人選手が所属しているが、フランスは最多の勢力である。そしてアブドル・ワハッドがNBAに加わった1997年以降、フランス人選手の数は減ることはなく増加の一途であり、今季12人になった。フランスの12人という数字は2位のカナダ、セルビア、アルゼンチンの5人を大きく引き離している。2005年のbjリーグ開幕、2006年の世界選手権開催で空前のバスケットボールブームに沸く日本はゼロ、アジアからは豪州から3人、中国から2人、イランから1人の6人だけである。
 多くのフランス人プレーヤーの活躍に沸くNBA、今年も深夜のテレビ中継にかじりつき睡眠不足となる季節がやってきたのである。(この項、終わり)

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