第1297回 2011年ラグビーワールドカップ開幕(1) 全48試合を地上波で生中継するフランス

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■本家のサッカーをしのぐ勢いのラグビーワールドカップ

 いよいよ4年に1回のラグビーワールドカップがやってきた。サッカーのワールドカップに遅れること57年、1987年に始まったこのラグビーのワールドカップは今回でまだ7回目でしかない。しかしながら種目別の世界選手権(ワールドカップ)としては本家サッカーをしのぐ勢いである。
 もちろん、競技そのものの世界での普及度、世界レベルでのテレビ視聴者数、そして予選並びに本選の出場国の数などはラグビーのワールドカップには及ばない。しかし、競技の性格上、試合と試合のインターバルが必要であり、大会期間はサッカーの30日に比べて長く、9月9日に始まる今大会の決勝は10月23日であり、1月半の熱戦となる。また、出場国、特に欧州並び南半球の有力国における注目度はサッカーのそれをしのぐのである。

■欧州と南米中心から文字通りワールドカップとなったサッカー

 1987年にワールドカップが始まった当時は、それまで北半球の5か国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス)と南半球の3か国からなるインターナショナルボード8か国の中での最強国を選ぶことがテーマであった。これは1930年に始まったサッカーあるいはその他の競技の世界選手権も同じであろう。
 しかし、その後の盛り上がりの地理的な広がりがラグビーは他の競技とは決定的に違う。サッカーの場合、欧州と南米が中心であったが、時代とともにアフリカやアジアなどの他の地域の国も台頭し、これらの地域からの参加国も増え、これらの地域での注目度も上がり、文字通りワールドカップとなった。これはサッカー以外の多くの競技にも当てはまるであろう。

■インターナショナルボード8か国が常に主役のラグビー

 一方のラグビーはインターナショナルボード8か国が常に主役であった。本大会出場国数は第1回大会から第3回大会までが16か国、第4回大会以降が20か国となったが、4グループでのグループリーグを行って上位2チームが決勝トーナメントに出場するという大会形式は変わらない。(第4回大会のみグループリーグの首位が無条件で決勝トーナメント進出、各グループの2位チームで決勝トーナメント進出のためのプレーオフが行われた)
 インターナショナルボードメンバーはちょうど8か国であるが、インターナショナルボードメンバー以外の国で決勝トーナメントには、これまでの6回の大会でフィジーが2回(第1回、第6回)、サモアが2回(第2回、第3回)、アルゼンチンが2回(第4回、第6回)、カナダが1回(第2回)と、4か国がのべ7回進出しただけである。第1回大会と第2回大会は南アフリカが人種差別政策のため出場していなかったことを考えるとこの数字は実際には2回減るであろう。逆にインターナショナルボード出場国で予選プール敗退という取りこぼしをしてしまった経験がある国はウェールズ(第2回、第3回、第6回)とアイルランド(第4回、第6回)だけである。

■サッカーをしのぐ人気、全試合が地上波で生中継されるフランス

 このように伝統国が常に上位を占めることにより伝統国においては人気が高まっている。このラグビーの強豪国の中ではサッカーのワールドカップには出場できない国もあるが、たとえば両方のワールドカップに出場している国ではサッカーのワールドカップよりもラグビーのワールドカップの方がテレビの視聴率などで見る限り、注目度は高い。
 フランスにもこの法則は当てはまる。2010年のサッカーワールドカップはチームが空中分解してしまったという事情はあるが、その前の準優勝した2006年のワールドカップドイツ大会よりもその前後のラグビーのワールドカップの方がテレビの視聴者数は多いのである。
 そして今大会は予選プールが40試合、3位決定戦を含む決勝トーナメントが8試合、合計で48試合あるが、フランスではすべてこれらの試合を地上波で生中継するのである。試合数が64試合と多いサッカーと単純に比較はできないが、国民のラグビーワールドカップへの注目度が高いことがお分かりいただけるだろう。(続く)

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