第1303回 宿敵ニュージーランドと対戦(2) 22歳のモルガン・パラをスタンドオフで起用

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■カナダ戦の翌日にニュージーランド戦のメンバーを発表

 前回の本連載ではワールドカップでは2勝2敗と五分、3位決定戦を除くと2勝1敗とフランスがニュージーランド戦に勝ち越していることを紹介したが、予選プールで初めて今回はフランスとニュージーランドが戦う。これまでの対戦はいずれも決勝トーナメントでの戦いであり、負けられない戦いであったが、今回は予選プールとはいえ、負けるわけにはいかない。
 ベストメンバーの日本戦、メンバーを落としたカナダ戦は、最終的に差はついたものの、フランスにとって不本意な時間帯も多かった。マルク・リエーブルモン監督はこのニュージーランド戦のメンバーをカナダ戦の翌日に発表した。

■ニュージーランド戦の先発メンバー

 FW第1列はジャン・バプティスト・プー、ディミトリ・サルゼウスキー、リュック・デュカルロン、第2列のロックはパスカル・パペとリオネル・ナレ、第3列はフランカーがティエリー・デュソートワールとジュリアン・ボネール、ナンバー8がルイ・ピカモール、ハーフ団はスクラムハーフがディミトリ・ヤシビリ、スタンドオフがモルガン・パラ、センターはマキシム・メルモスとオーレリアン・ルージェリ、ウイングはマキシム・メダールとバンサン・クレルク、フルバックはダミアン・トレイユという布陣である。

■日本戦よりもカナダ戦に多く出場しているニュージーランド戦のメンバー

 このメンバーをみると3試合連続先発出場となったのはセンターのオーレリアン・ルージェリ(カナダ戦はウイングで登場)、ウイングのバンサン・クレールの2人だけであるが、カナダ戦とこのニュージーランド戦に連続して先発出場している選手は8人(プー、デュカルロン、パペ、ボネール、ピカモール、パラ、メルモス、トレイユ)、日本戦とニュージーランド戦に先発出場している選手は4人(ナレ、デュソートワール、ヤシビリ、メダール)、このニュージーランド戦が初先発となる選手はサルゼウスキー1人である。
 逆に日本戦とカナダ戦に先発出場しながらニュージーランド戦のメンバーから外れたのがフッカーのウィリアム・セルバとスタンドオフのフランソワ・トラン・デュックである。
 このように見てみると、ニュージーランド戦に出場する選手は日本戦よりもむしろカナダ戦に多く出場していたことが分かる。また、ゲームの中心となるスタンドオフの変更は大きな方針の転換である。

■スタンドオフは本来はスクラムハーフのモルガン・パラ

 そしてこのニュージーランド戦のメンバーの最大の驚きはスタンドオフに本来はスクラムハーフであるパラを起用したことであろう。パラは日本戦には途中出場しており、スタンドオフも務めたが、フランス代表としてこれまで31試合に出場したうち、スタンドオフとして先発したことはない。また、所属クラブのクレルモンでもこのところスタンドオフとして先発したことはなく、2年前の2009年4月、ブルゴワンに所属していた際のバイヨンヌ戦が最後であり、そのバイヨンヌ戦は大敗している。
 このような意表を突く起用に疑問を感じるファンも少なくないが、期待しているのは2007年大会の準々決勝の再現であろう。本連載第769回と第770回でこの戦いについては紹介しているが、予選プールでフランスは初めて黒星を喫し、プール2位として失意の決勝トーナメント、オールブラックスとの一戦の司令塔としてスタンドオフに起用されたのが21歳のリオネル・ボークシスであった。この試合は、一旦は13点差をつけられたフランスが20-18と逆転勝利している。今回もそれまでの2戦で不安定なフランスに対し、ニュージーランドはトンガ、日本に対し盤石の勝利、試合前の予想はニュージーランド有利である。22歳のパラを通常とは異なるポジションで起用するのはその予想を覆すための奇襲であり、ファンは4年前のカーディフでの戦いの再現を願っているのである。(続く)

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