第1374回 凱旋試合となるか6か国対抗(4) アイルランド戦は3月4日に延期

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■試合中止の決定を遅らせたラグビー界の事情

 昨年のワールドカップ準優勝から4か月、フィリップ・サンタンドレ新監督の下、6か国対抗ではイタリアとスコットランドに連勝したフランス、スコットランド戦についてはスコットランドの粘りに苦しんだがまずまずの出足である。そして課題となったのが寒波のため中止となったアイルランド戦である。前日までゴーサインが出ていながら、試合当日、さらにはキックオフ時間を過ぎて試合中止が決定したが、ここまで試合中止の決定が遅れたのは欧州のラグビー特有の事情がある。

■サッカーと異なるラグビーのカレンダー

 まず、欧州におけるラグビーカレンダーである。サッカーの場合、週末に国内リーグ戦が行われるが、それ以外にカップ戦やリーグカップなどの国内タイトル、チャンピオンズリーグあるいはヨーロッパリーグという欧州カップ、さらには代表の試合があり、それらは週の半ばなどに行われ、代表の試合についてはインターナショナルマッチデーが設けられ、国内リーグとそれ以外の試合の間隔があくように設計されている。
 ラグビーの場合、国内タイトルはリーグ戦一本、クラブレベルでの国際試合はサッカーのチャンピオンズリーグに相当するハイネケンカップとヨーロッパリーグに相当するヨーロッパチャレンジカップがある。これに加えて代表の試合がある。
 ラグビー選手はサッカーの選手に比べて少ない数のタイトルを争うわけであるが、試合における消耗度を考えれば妥当であろう。したがってラグビーの試合は基本的には週末にしか行われず、1週間の間隔をあけて選手は試合に臨む。ハイネケンカップやヨーロッパチャレンジカップはチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグ同様グループリーグを経て決勝トーナメントで欧州一を争うわけであるが、グループリーグは11月中旬から1月中旬にかけて行われ、決勝トーナメントは4月7日に始まり、5月19日に決勝戦が行われる。すなわち、代表チームが6か国対抗で活動する2月初めから3月中旬まではハイネケンカップは行われない。一方、国内リーグは基本的に毎週末行われ、ハイネケンカップやヨーロッパチャレンジカップの試合の行われる週末には試合が行われない。

■代表の試合のある日にも行われる国内リーグ

 しかし、クラブの試合と代表の試合が重なるケースは少なくなく、フランスではワールドカップ期間中も国内リーグが行われていたことは本連載で紹介したとおりである。フランス代表の今年の6か国対抗のスケジュールを見ると、イタリア戦、アイルランド戦、イングランド戦のある週末はリーグ戦も行われており、5試合中3試合が日程が重なっているのである。したがって、サッカーのように試合のない週半ばに再調整することは難しく、また3月下旬以降に試合を組むことも難しいのである。

■大挙して海を渡ってくるサポーター

 さらに試合中止の決断を遅らせたのはサポーターの存在である。年に1度の対戦とあってファンは1年前から日程を組み、敵地に赴くファンが多数いる。サッカーでも敵地に乗り込むサポーターは少なくないが、ラグビーの場合はスタジアムが二分されるとっても過言でないほど両チームのサポーターの数が拮抗することも珍しくない。したがって今回のアイルランド戦もスタッド・ド・フランスには多くのアイルランドからのファンが押し寄せた。この緑に染まったサポーターを目の前にして試合の中止を決断することは勇気のいることである。
 このような2つの理由によって、試合中止の決定がなかなかなされなかったわけであるが、試合中止の決定をするとともに代替日程の決定をしなくてはならなかったのである。
 前述の理由で3月下旬以降のシーズン中に開催することは難しいため、秋の開催も検討されたが、結局は3月4日に行われることになった。この週末も国内リーグの試合が開催されるが、中止になった2月11日もその週末には国内リーグの日程が入っていた。ちなみに、2月10日から12日にかけて行われた第17節は全7試合が開催された。
 このようアイルランド戦は3月4日に行われることになり、フランスはこの第3戦からアイルランド、イングランド、ウェールズという強豪との休みなしの3連戦を戦うことになったのである。(続く)

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