第1782回 デビスカップ、またも準優勝(3) ロジャー・フェデラーとスタニラス・ワウリンカが支えるスイス

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■17回目の決勝進出となるフランス、2回目のスイス

 2連覇中のチェコに対し、初日のシングルス2試合、2日目のダブルスに勝利し、早々と決勝進出を決めたフランス、17回目の決勝を迎えることになる。1981年に現行のワールドグループ制になってからの決勝進出はこれで8回目、だいたい4年に1回のペースで決勝に残っている。過去7回の決勝戦の戦績を見ると3勝4敗、2001年に豪州を破って優勝して以来、2002(ロシア戦)、2010年(セルビア戦)と決勝で惜敗している。
 決勝ではスイスと対戦するが、スイスが決勝に進出したのはこれまでに1回だけ、1992年のことである。スイスは昨年も一昨年もワールドグループの1回戦で敗退、入れ替え戦に相当するプレーオフで辛うじて勝利して、今季もワールドグループで戦うことになった。また、フランスとスイスはデビスカップでこれまでに12回対戦しているが、対戦成績はフランスが10勝2敗と圧倒している。過去の数字を見ればフランスが圧倒的に有利であり、またスイスが決勝に進出してきたことを不思議に思われる読者の方も多いであろう。

■スイスの誇るロジャー・フェデラーとスタニラス・ワウリンカ

 このスイスの決勝進出を支えてきたのがロジャー・フェデラー、スタニラス・ワウリンカという2人のトッププレーヤーである。フェデラーについては決勝戦を迎える段階で世界ランキング2位、2004年から2012年にかけて世界ランキングトップの座についている。これまでツアーで82勝、そのうち四大大会では17回優勝している。現在33歳の大ベテランであるが、まだ10代であった1999年にデビスカップチーム入りしている。
 そしてワウリンカは偉大なるフェデラーの陰に隠れ、スイスナンバー2の存在となっているが、最新の世界ランキングは4位、自己最高のランキングは3位である。これまでにツアーでは7勝しているが、今年初めの全豪オープンでは準々決勝でセルビアのノバク・ジョコビッチにフルセットで勝利、この勢いに乗って優勝、うれしいグランドスラム初優勝を遂げている。すでに29歳であるワウリンカも2004年に10代でデビスカップチーム入りしている。

■2人に続く選手の不在が課題のスイスデビスカップチーム

 この2人を擁しながらもデビスカップで上位進出をしてこなかったことの方が不思議であろう。 決勝進出を果たした今年も1回戦から準決勝まですべて3勝2敗という成績で勝ち上がってきた。これまで上位進出できなかった、そして上位進出した今年も僅差の連続だった理由はダブルスプレーヤーの不在、そしてこの2人に続く選手の不在にある。

■1回戦はノバク・ジョコビッチ不在のセルビアに3勝2敗で勝利

 今年のスイスの決勝までの足取りを振り返ってみよう。1回戦はセルビア戦、スイスのシングルスはフェデラーとワウリンカ、一方のセルビアはジョコビッチを欠く布陣である。初日のシングルスでスイスは連勝し、王手をかける。翌日のダブルスはマルコ・キュディネリとミカエル・ランマーというともに30歳を超えるベテラン選手のペアで臨む。この2人はシングルスではフェデラーとワウリンカに次ぐ力の持ち主であるが、世界ランキングはキュディネリは200位台、ランマーは500位台、そしてダブルスが得意というわけではない。すなわち、チームのナンバー3とナンバー4が2日目の試合に出場していると考えればいい。セルビア戦はこの2人のペアが勝利し、3勝した時点でスイスの準々決勝進出が決まる。勝敗が決してしまった後の日曜日のシングルス2試合はメンバーを交代し、3セットマッチで行われた。スイスはキュディネリとランマーが出場したが、いずれも敗れてしまう。もしフェデラーとワウリンカが3日目も出場していれば5戦全勝していた可能性は強いが、日曜日にメンバーを変えたことによって3勝2敗という結果になったのである。
 もしセルビアのジョコビッチが出場し、シングルスでフェデラーを破り、ワウリンカに全豪オープンでの雪辱を果たしていれば、結果はどうなったかわからない。これが団体戦のデビスカップの魅力であり、怖さなのである。(続く)

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