第1916回 欧州勢相手に順調に連勝(5) 欧州第2代表のルーマニア

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■第2戦はルーマニアと対戦

 ワールドカップ初戦でイタリアに勝利したフランス、ボーナスポイントを獲得することはできなかったが、8年前の地元開催の第1戦は伏兵アルゼンチンに敗れ、それが後々まで響いたことを考えれば、悪くはなかった、という評価が妥当であろう。
 フランスの第2戦は9月23日のルーマニア戦である。ライバルのアイルランドは試合間隔があき、第2戦は9月27日のルーマニア戦である。アイルランドは初戦のカナダ戦はボーナスポイントを獲得して勝利したが、まずはルーマニアに大勝し、アイルランドと同程度の成績で予選プールの最終戦を迎えたいところである。

■オリンピック競技場で初めてのラグビーの試合

 フランス-ルーマニア戦はロンドンのオリンピック競技場で行われる。今大会の特徴として、サッカーの聖地ウェンブリーのように通常ラグビーを開催しない巨大な競技場で試合を行うが、このオリンピック競技場も同様である。2012年のロンドンオリンピックの開閉会式と陸上競技のために建設されたメイン会場であるが、オリンピック後の利用は本拠地として使用するチームについて、サッカーのトットナム・ホットスパー、ウェストハム、ラグビーのロンドンWASP、サラセンズが候補に挙がり、結局ウェストハムが使用することになった。このオリンピック競技場でラグビーを行うのはこのフランス-ルーマニア戦が最初である。今大会では予選プールで4試合、3位決定戦の合計5試合が行われる。

■フランスに流れたルーマニアのラグビー選手

 フランスと対戦するルーマニアであるが、フランス戦が大会の第1戦となる。ルーマニアは昨秋日本と対戦していることから日本の皆様はよくご存じであろう。ルーマニアの世界ランキングは17位、グループDの中では18位のカナダに次ぐ低い位置にある。ルーマニアはワールドカップには第1回大会から皆勤であり、8大会連続して出場しているが、過去7大会はすべて予選プールで敗退している。また、2001年にはトゥイッケナムでイングランドに0-134という記録的な敗戦を喫している。
 しかしながら、輝かしい過去を誇っており、フランスとの過去8勝2分40敗という戦績を誇り、5か国のメンバーにもしばしば勝利している。ルーマニアのラグビーを語る上で欠かせないのがニコラエ・チャウチェスク時代の暗い過去と、フランスとのつながりである。
 古今東西の独裁者はスポーツを巧みに利用してきたが、ルーマニアの独裁者は大衆受けするサッカーを支持し、大衆受けしないラグビーを冷遇した。冷戦当時はラグビーにはワールドカップもオリンピックも存在せず、国威発揚にはワールドカップ、欧州選手権、オリンピックなどの各種国際大会が存在するサッカーの方が独裁者にとっては好都合であった。
 その結果、ラグビー選手は故国を捨て、西欧のクラブに移籍することになる。ルーマニアの選手たちが向かったのはフランスであった。ルーマニア語とフランス語はもともと同じラテン系の言語であることから親和性もあり、多くの選手がフランスのクラブに所属した。そしてその伝統は独裁者が人民によって公開処刑されてから25年たった今も続いている。そして代表監督もルーマニア人またはフランス人が務めてきた。

■ウェールズ人のリン・ハウエル監督、欧州予選で2位に導く

 2012年の秋に日本と米国に敗れ、ルーマニア人のハミ・デュミトラス監督が更迭され、代わりに就任した現在のリン・ハウエル監督はウェールズ人である。ルーマニアのラグビー史上初めてフランス人以外の外国人が指揮を執ることになった。2013年から始まった欧州選手権の1部Aリーグ、欧州の強豪6か国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリア)以外で争われるワールドカップ予選である。上位2チームがワールドカップへのチケットをつかむことができる。ルーマニア、ジョージア、ポルトガル、ロシア、スペイン、ベルギーの6か国がホームアンドアウエー形式で戦い、ルーマニアはジョージアにホームで引き分け、アウエーで敗れた以外の8試合は全て勝利し、ジョージアに次ぐ欧州第2代表の座を勝ち取ったのである。(続く)

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