第1992回 試練の続くラグビーフランス代表 (4) アイルランドに5年ぶりの勝利

 5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■過去の対戦成績が悪いアイルランド戦

 ギ・ノベ新体制になり、先発4人、途中交代2人という大量6人の新人を起用したホームでのイタリア戦は23-21という僅差での勝利となった。これまでの6か国対抗での成績、さらには直近の対戦となる昨秋のワールドカップでの32-10という結果からは心もとない初戦となった。
 第2戦はイタリア戦から1週間後の2月13日、アイルランドとスタッド・ド・フランスで対戦する。アイルランドとは昨年のワールドカップでは予選プールの最終戦で9-25と完敗している。さらに近年の対戦成績も分が悪く、2011年のワールドカップの直前のテストマッチで勝利して以来、2分3敗と5年近く勝利していない。しかし、そのアイルランドも予選プールを首位で通過しながら、決勝トーナメントではアルゼンチンに敗れており、不本意な結果となった。ニュージーランド人のジョー・シュミット監督が引き続き指揮を取り、メンバーをほとんど入れ替えず、今年の6か国対抗の初戦はウェールズ16-16と引き分けている。

■ワールドカップ時とはメンバーが入れ替わったフランス

 真価の問われる第2戦、ノベ監督が送り出した青いジャージーのフィフティーン、イタリア戦でデビューした6人のうち、ジェファーソン・ポワロ、ヤクバ・カマラ、セバスチャン・ベジ、ビルミ・バカタワ、ジョナタン・ダンティの5人が先発メンバーに名を連ねた。昨年のワールドカップでの対戦で先発したメンバーはギレム・ギラド、ヨアン・マエストリ、ダミアン・シューリーの3人だけである。一方のアイルランドは15人中9人が昨年のワールドカップでも先発している。

■反則が目立ちリードされた前半のフランス

 このように昨年のワールドカップでの結果、メンバーの継続性、そして前週の第1戦での戦いぶりからフランスは圧倒的に劣勢であると予想され、試合開始からその通りの展開となり、フランスは劣勢に立たされる。15分にフランスはマエストリがアイルランドのスタンドオフのジョナサン・セクストンにノーボールタックル、40メートル近い距離からセクストン自身がペナルティゴールを決め、アイルランドが先制する。さらに29分にもフランスはラックの中で反則、セクストンが2本目のペナルティゴールを決め、6-0とリードを広げる。
 フランスはようやく30分にペナルティゴールのチャンス、イタリア戦で途中からキッカーを務めたジュール・プリソンが決めて3点を返す。さらにその直後もプリソンはドロップゴールを狙うが、これは外れる。フランスは前半終了間際にスクラムでコラプシングの反則、ペナルティゴールを決められた。再開後のキックオフでアイルランドに反則があり、プリソンがペナルティゴールを難しい位置から狙ったが、これは成功せず、フランスは3-9と6点差で後半を迎えた。
 ボール支配率ではフランスがやや優勢な前半であったが、反則が目立ち、反則数の数が点差となって表れた。また、この試合のフランスのスリークォーターバック4人(バカタワ、ダンティ、マキシム・メルモズ、テディ・トマ)はいずれも昨年のワールドカップのメンバーではない。深いラインを引くフランスのスリークォーターバックス陣であるが、機能せず、唯一バカタワが孤軍奮闘という感じであった。

■後半終盤につかんだチャンスからマキシム・メダールが逆転トライ

 後半になってノベ監督はアイルランドよりも早く選手を交代させ、48分には今回初代表入りした7人の中で唯一出場機会に恵まれなかったカミーユ・シャが主将のギラドに代わってピッチに入る。
 後半になって反則の多くなってきたアイルランドに対し、優勢に試合を進めるようになったフランスであるが、肝心なところでのハンドリングエラーが出て、後半半ばまで敵陣22メートルラインの中に入れずじまいである。
 65分には初めて22メートルラインを突破し、シュリーのトライかと思われたがテレビマッチオフィシャルの判定はノートライ。しかし、70分にはフランスはアイルランドのゴールライン前で5メートルスクラムのチャンスをつかみ、早い球出しからフルバックのマキシム・メダールがついにこの試合初めてのトライをゴールポストの下に決める。プリソンのコンバートも決まり、フランスは10-9と逆転する。
 フランスはアイルランド戦5年ぶりの勝利を飾ったのである。(続く)

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