第2261回 ベルギーに競り勝ち、16年ぶりのデビスカップ優勝 (6) リシャール・ガスケとピエール・ユーグ・エルベールのペアが勝利

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ダブルスに強いフランス

 シングルス2試合の行われた金曜日の11月24日、ダビッド・ゴファンとジョー・ウィルフリード・ツォンガという両国のエースが勝利して1勝1敗となった。すなわち、優勝決定は日曜日の第4ラバー以降に決定することとなり、ナンバーワン対決の第4ラバーの前のダブルスを勝利して優位に立っておきたい。
 そのダブルスであるが、フランスはダブルスの名手の宝庫である。ダブルスはシングルスと比較するとトーナメントでの賞金等でシングルスに見劣りすることから、トップレベルのプレーヤーがダブルスに取り組まないという世界的な傾向があるが、フランスの場合はダブルスのスペシャリストがデビスカップでの好成績を支えてきた。今年もここまでダブルスは3戦全勝である。

■ピエール・ユーグ・エルベールが初めてペアを組むリシャール・ガスケ

 その象徴が今年の2月に日本の皆様にその力を見せつけたニコラ・マユとピエール・ユーグ・エルベールの世界ナンバーワンのペアであろう。準々決勝の英国戦ではマユはジュリアン・ベネトーと組み、フランス同様にダブルスに力を入れている英国のペアに競り勝っている。準決勝は1回戦で起用した世界ナンバーワンペアのマユとエルベールがセルビアの選手兼監督のネナド・ジモニッチがフィリップ・クライノビッチと組んだペアを一蹴している。ここまでの3試合すべてに出場しているマユはシングルスでも実績があるが、1回戦と準決勝に出場したエルベールはダブルス専任プレーヤーである。
 ベルギーとの決勝、ダブルスの起用についてはヤニック・ノア監督は驚きのメンバーを発表した。エルベールとリシャール・ガスケを指名したのである。四銃士のガスケは現在のランキングはシングルスこそ31位であるが、ダブルスはランキング外である。そしてダブルスのスペシャリストであるエルベールはこれまでに49人の選手とペアを組んだことがあるが、ガスケと組むのはこれが初めてである。

■予定通りにエルベールとガスケが登場

 デビスカップの大会規定では試合開始の1時間前まで選手の変更ができることから、エルベールに代えてツォンガをガスケと組ませるのではないか、という憶測が飛んだ。なぜならばツォンガとガスケはこれまでにデビスカップでペアを組んで市哀訴したことが3回あり、いずれも勝利している。2014年の1回戦の豪州戦、準決勝のチェコ戦、2016年の1回戦のカナダ戦と、難敵に3連勝した実績を持つ。そして、ツォンガは前日にはシングルスに出場したが、ストレート勝ちで試合時間はわずか1時間46分、連勝も十分に可能である。
 しかし、2万7500人の満員の観衆の前のハードコートに姿を現したのは当初の予定通りのガスケとエルベールの2人であった。
 一方のベルギーはルーベン・ベメルマンスとジョリス・デローレを起用する。2人ともダブルスのスペシャリストではなく、さらにシングルス、ダブルスとも世界ランキングは3ケタであり、ベメルマンスのランキングはシングルス118位(最高位84位)、ダブルス274位(128位)、デローレはシングルス276位(174位)、ダブルス343位(283位)である。

■ピンチを救ったダブルスの名手P2Hことエルベール

 このランキングの差を示すがごとく、第1セットは白いユニフォームのフランスが簡単に6-1と先取する。この勢いで試合は簡単に終わるかと思われたが、第2セット、ガスケのミスが目立ち、3-6とセットを奪われる。さらに第3セットもベルギーが優勢で3-5までリードされる。ここで力を見せたのが、イニシャルからP2Hというニックネームのエルベールが事態を打開する。2ゲーム連取して5-4とリードする。最終的にこの第3セットはタイブレークとなり、フランスペアが7-6と競り勝つ。そして第4セットもフランスが6-4と取り、セットカウント3-1でダブルスで勝利、王手をかけて最終日を迎えることになったのである。(続く)

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