第2422回 最後の王座を逃したフランス(4) ラファエル・ナダル欠場、ブノワ・ペール初選出

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■準決勝の相手はデビスカップ改革派のスペイン

 13年ぶりの四銃士抜きのメンバーでイタリアに勝利して準決勝に進出したフランス、準決勝は全米オープン終了後の9月中旬に行われる。準々決勝から準決勝までの間にはグランドスラム3戦(全仏、全英、全米)が行われ、勢力図にも変更があったが、コートの中の変化もさることながら、コートの外の変化、すなわちデビスカップの大会方式の変更の方がフランスの選手にとっては大きかったかもしれない。
 さて、その準決勝の相手であるがスペインである。スペインといえば、今回のデビスカップの改革はスペインの投資ファンドのコスモス社によるものであり、中心人物はサッカーのスペイン代表選手のジェラール・ピケであり、ピケの所属するバルセロナの大スポンサーである楽天の三木谷浩史会長である。夏の国際テニス連盟の総会での改革案の決定を受け、フランスデビスカップチームが打倒スペインに燃え、さらに「最後の王座」を目指すという最高のシナリオが準備されたのである。

■全米オープンで第1シードのラファエル・ナダル

 準決勝は9月14日から16日までフランス国内のリールのピエール・モーロワ競技場で行われた。参考となるのが直前の全米オープンのシードと成績である。
 スペインはラファエル・ナダルが第1シードであり、準決勝で準優勝したホアン・デルポトロに敗れている。またパブロ・カレーニョ・ブスタが第12シード(2回戦負け)、ロベルト・バウティスタ・アグートが第19シード(1回戦負け)、フェルナンド・ベルダスコが第31シード(3回戦負け)と4人がシード入りしている。
 一方、フランス勢はルカ・プイユが第17シード、リシャール・ガスケが第26シード(いずれも3回戦負け)、アドリアン・マナリノが第29シード(1回戦負け)であり、結果はともかくシードの数と順位を見ればスペインが有利に見える。

■ナダル、膝の負傷で準決勝の出場を回避

 ところが、スペインのエースのナダルは全米オープン準決勝のデルポトロ戦はひざの負傷のため、途中棄権し、その負傷が癒えぬため、フランスとの準決勝のメンバーから外れる。ナダルは2011年にデビスカップ優勝の立役者となり、自身4回目の優勝を果たしているが、近年は他の有力選手同様にデビスカップを回避する傾向にあった。しかし、今年は準々決勝のドイツ戦に出場、ナダルの2勝によってスペインはドイツを3勝2敗で退けている。ナダルは全米オープンで負傷する前にはフランスとの準決勝へ出場の意思を表していたが、無念の回避となったのである。フランスは昨年の1回戦の錦織圭(日本)、準々決勝のアンディ・マリー(英国)、準決勝のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と相手のエースが欠場しており、今回も幸運に恵まれた。

■デビスカップ初選出となるブノワ・ペール

 ただし、フランスも順当に選手をそろえることができたわけではない。シングルスに関してはジョー・ウィルフリード・ツォンガとガエル・モンフィスは依然として故障中である。さらにダブルスもピエール・ユーグ・エルベールが不在となり、ニコラ・マユはジュリアン・ベネトーとペアを組むことになる。
 シングルスに関してはヤニック・ノア監督は準々決勝でイタリアのエースのファビオ・ファニーニを下してフランスのエース格となったルカ・プイユをナンバーワンに、そしてナンバー2にはデビスカップ初選出となるブノワ・ペールを起用する。29歳のペールは3年前の楽天オープンで錦織に勝利していることから日本のファンの皆様は良くご存じであろう。同年の楽天オープンの前に行われた全米オープンでも錦織に勝利しており、錦織の天敵と呼ばれているが、ATPランキングは準決勝を迎える時点で54位、直前の全米オープンでも2回戦でスイスのロジャー・フェデラーに敗れている。デビスカップの意義をかけたスペインとの大一番に未経験の選手を起用するノア監督の判断の結果はどうなるのであろうか。(続く)

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