第2923回 12年ぶりにオールブラックスを破る(2) 新人の活躍でアルゼンチンに競り勝つ

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■アルゼンチンに臨む先発の15人

 2年後のラグビーワールドカップに向けて準備するフランスの秋のテストマッチの初戦の相手は苦手のアルゼンチンである。スタッド・ド・フランスに集まった観衆は5万5000人とやや空席が目立つ。
 青いユニフォームのフランスの先発メンバー、FW第一列はシリーユ・バイユ、ジュリアン・マルシャン、モハメド・アウア、第二列はチボー・フラマンとポール・ウィレムス、フランカーはフランソワ・クロとカメロン・ボキ、ナンバーエイトはアントニー・ジェロンチ、スクラムハーフはアントワン・デュポン、スタンドオフはマチュー・ジャリベール、スリークォータバックは左からガバン・ビリエール、ロマン・エンタマック、ガエル・フィクー、ダミアン・プヌー、フルバックはメリバン・ジャミネというメンバーである。
 15人のうち、2年前の東京でのアルゼンチン戦に先発したのはBKの4人のみ、FWはバイユが途中出場しただけで誰も先発していない。

■ベルギー育ち、イングランド、アルゼンチンでプレーしたチボー・フラマン

 この中で代表初出場となるのがフラマンである。2メートル3センチという長身ロックであるが、ちょっと変わった経歴を有している。パリ生まれであるが、父親の仕事の関係でベルギーのブリュッセルで育った。父親のエリック・フラマンはベルギーにテニスのクラブ、ラグビーのクラブを創設し、フラマン自身もベルギーで8歳からラグビーを始め、ベルギーの年代別の代表チームにも入っている。そしてロンドンの大学に進学し、ロンドンの強豪WASPでもプレーしている。そしてフラマンが本格的にラグビーに集中したのは大学を卒業してインターンシップで在アルゼンチンの大使館に勤務してからである。この時にアルゼンチンの1部リーグのクラブ・ニューマンでプレーをした。フラマンが初めて母国フランスのチームでプレーしたのは昨年トゥールーズに移籍してからであり、早速フランスチャンピオンに輝いている。そして今回、代表に初招集、いきなり先発となった。

■今夏の豪州遠征でデビューし、キッカーに定着したメリバン・ジャミネ

 試合は予想通り、接戦となった。フランスは3分にペナルティキックを得る。このゴールキックを任されたのはエンタマックでもジャリベールでもなく、今夏の豪州遠征で代表にデビューしたジャミネである。ジャミネは豪州戦でもキッカーを任され、特に7月7日の試合ではキックを全部成功させ、23得点をあげる活躍、勝利に貢献した。この日最初のキックも右サイドから決めて、3-0と先制する。その後も19分にジャミネが40メートルの距離のあるペナルティゴールも決め、6-0とする。しかし、この試合最初のトライはアルゼンチンであった。22分にフランスのキックをキャッチしたアルゼンチンのパブロ・マテラが突進、最後はスクラムハーフのトマス・クベリがトライをあげた。フランスは35分にジャミネが50メートルのペナルティゴールを決めて9-7と2点リードで後半を迎える。
 前半はアルゼンチンの反則が目立ったが、後半に入って48分に反則を取られ、エミリアノ・ボフェッリが逆転のペナルティゴール。

■初トライをあげたフラマンとペアト・モーバカ

 ようやくフランスが初トライをあげたのが50分のことであった。フランスはアルゼンチンの22メートルラインの中に攻め込み、フェーズを重ねる。最後にゴール真下にトライをあげたのはこの日が代表デビューとなるフラマンであった。ゴールも決まって16-10と逆転した。その後、両チームともペナルティゴールを加えて19-13となった71分、フランスは波状攻撃を重ねる。アルゼンチンに反則がありアドバンテージが適用されていたところで、トライをあげたのは途中交代出場のフッカーのペアト・モーバカであった。2019年のラグビーワールドカップでは負傷のため途中でチームを離れたが、ようやくうれしい代表初トライである。ゴールも決まり、26-13と突き放したが、試合はこのまま終わらない。78分にアルゼンチンのサンチアゴ・カレーラスがトライをあげ、ゴールも成功し、再び6点差となる。このカードらしく両チームの選手が熱くなるシーンも多かったが、フランスは試合終了間際に得たペナルティでゴールを狙い、ジャミネが成功させて、29-20とする。
 フランスは難敵アルゼンチンに競り勝って秋の初戦を飾ったのである。(続く)

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