第2922回 12年ぶりにオールブラックスを破る(1) 秋の初戦は苦手のアルゼンチン戦

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ワールドカップの中間年に行われる今秋のテストマッチ

 新型コロナウイルスの感染拡大によってスポーツ界は大きな影響を受けたが、その中で日常を戻しつつある。ラグビーの世界でいえば、この秋のテストマッチはその象徴であろう。感染者数が再び増加している国もある中で多数の試合が欧州で行われた。日本の皆様も日本代表がポルトガルを破った試合は印象的であろう。
 ちょうど今年はラグビーワールドカップの中間年にあたる。2023年のラグビーワールドカップまで試合相手を選んで国際試合をできるチャンスは今年の秋を含めて来年の夏秋しか残されていない。サッカーに比べて国際試合の機会は限定的であるから、そのチャンスを活かしたい。

■相性の悪いアルゼンチン、世界最強のニュージーランドと対戦するフランス

 今秋のフランスは11月に3試合を行う。6日にアルゼンチン、14日にジョージア、20日にニュージーランドという3連戦である。昨秋のオータムネーションズカップでは決勝でイングランドに惜敗、今年の6か国対抗は最終戦でスコットランドに敗れて優勝を逃してしまったフランスにとって、個の秋こそ結果を残し自国開催のラグビーワールドカップに弾みをつけたいところである。
 今秋のテストマッチの山場は2つ、まず初戦の相性が悪いアルゼンチン戦、そしてラグビーワールドカップ後は強さを誇るニュージーランドとの最終戦である。
 この3連戦のためにファビアン・ガルチエ監督はFW23人、BK19人、合計42人の選手を選考した。この中で代表出場歴がない選手は8人、1試合だけという選手も4人いる。彼らにとっては第2戦のジョージア戦が代表デビューの可能性があるが、そのためにはアルゼンチン戦に勝利しておきたいところである。

■今世紀になってからアルゼンチンに負け越しているフランス

 アルゼンチンとの過去の対戦成績は37勝1分14敗とフランスが圧倒しているように見えるが、今世紀に入ってからの対戦成績は8勝10敗とフランスは負け越している。特に屈辱的であったのはフランスにとって初めての自国開催となった2007年のラグビーワールドカップ、開幕戦となる予選プールの初戦で12-17と敗れ、3位決定戦では10-34と得点差を広げられて敗れている。ラグビーワールドカップの歴史において予選プールでの対戦が決勝トーナメントで再現されたことはこの1回であり、開催国として連敗したというフランスにとっては黒い歴史である。
 今回のアルゼンチン戦はスタッド・ド・フランスで行われるが、スタッド・ド・フランスでもこれまで1勝2敗と負け越している。唯一の勝利は2006年秋、実に15年間も本拠地で勝利のない相手である。

■直近の対戦は2019年ワールドカップ、東京での接戦

 直近の対戦は2019年に東京で行われたラグビーワールドカップの予選プール初戦である。この予選プールには準優勝したイングランドもいたため、初戦が実質的に決勝トーナメント進出決定戦となった。この試合も接戦となり、フランスは23-21と辛勝したが、その後のフランス-イングランド戦が台風のために中止(記録上は0-0の引き分け)となったため、アルゼンチンに対して点差をつけて勝利できなかったフランスは予選プールで2位にとどまり、決勝トーナメント1回戦でウェールズに敗れている。
 フランスがアルゼンチンを苦手としている理由としてはアルゼンチンの主力選手のほとんどがフランスのクラブに所属していることがあげられる。今回の先発メンバー15人のうち、フランスリーグに所属している選手は過半数の8人である。それ以外はイングランドが4人、スコットランド、イタリア、ニュージーランドが各1人となっている。
 両チームを率いる監督であるが、フランスのガルチエ監督はラグビーワールドカップ後に就任し、これが初めてのアルゼンチン戦となる。一方、アルゼンチンのマリオ・レデスマ監督は2018年8月に就任しているが、就任直後の秋の欧州遠征でフランスとリールで対戦し、13-28と敗れている。つまり、両国の監督はいずれも初勝利を目指してスタッド・ド・フランスのピッチに選手を送り込んだのである。(続く)

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