第2968回 グランドスラムを目指すフランス(4) 早くも天王山となったアイルランド戦

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■ウェールズに大勝し、連勝を9に伸ばしたアイルランド

 イタリアから5トライをあげてボーナスポイントを獲得して初戦に勝利したフランス、第2戦は天王山ともいうべきアイルランドとの対戦となる。アイルランドは昨年の6か国対抗の第2節でフランスに敗れてからは、残りのイタリア、スコットランド、イングランドに勝利、7月には日本と米国という経済大国相手に連勝する。さらに秋には日本、ニュージーランド、アルゼンチン相手に3連勝する。
 8連勝して迎えた今年の6か国対抗、初戦の相手はウェールズである。昨年も第1節で対戦したが、この時はアウエーのカーディフでの試合、16-21と競り負けている。今年はホームのダブリンでの試合となり、接戦が予想されたが、アイルランドの一方的な試合となり、緑のジャージが4トライをあげ、ボーナスポイントを獲得する。ウェールズは試合の終盤にようやくトライをあげて、完封負けを逃れるのが精一杯、アイルランドが29-7と大勝した。

■2010年以降は互角の成績のフランスとアイルランド

 第1節で優勝候補のイングランドがスコットランドに競り負けたことから、2月12日に行われるフランス-アイルランド戦が優勝決定戦であると認識することは決して早計ではないであろう。
 フランスとアイルランドの過去の戦績はフランスが59勝7分35敗と大きく勝ち越している。1970年代から2000年代までの40年間は圧倒的にフランスが勝ち続け、特に1984年から1999年までフランスは16勝1分と1度もアイルランドに敗れていない。ところが2010年代に入ってアイルランドの力があがるとともにフランスが低迷し、2010年代の対戦成績は5勝2分5敗と互角である。そして直近2試合ではフランスは勝利している。昨年の対戦は無人のアビバスタジアムで行われ、フランスが主将のシャルル・オリボンのトライなどで大きくリードしたが、終盤にアイルランドが追い上げ、フランスは15-13と逃げ切っている。

■負傷中のシャルル・オリボンに代わって主将を務めるアントワン・デュポン

 そのトライをあげたオリボンであるが、2019年のラグビーワールドカップ以降のファビアン・ガルチエ体制になって主将に任命される。ガルチエ監督は代表スタッフ入りする前にツーロンの監督をしており、当時からツーロンに所属していたオリボンをよく知っていたので26歳のフランカーに主将を任せたのであろう。オリボンは主将として初めて試合に臨んだイングランド戦に勝利するなど活躍している。ただし、所属するツーロンのTOP14のプレーオフ出場がかかったカストル戦で左ひざを負傷し、6か月の戦線離脱となり、今季の6か国対抗のリストの42人には入っていない。オリボン不在のチームの主将となったのがアントワン・デュポンである。ガルチエ監督の現役時代のポジションであるスクラムハーフ、ラグビーの盛んなピレネー地方出身で4歳からラグビーを始めたデュポンは今や世界有数の選手となり、積極的なプレーでチームを引っ張るタイプである。

■21歳のヨラム・モエファナが先発メンバー入り

 そのデュポンが先頭に立つフランスの先発メンバー、FW第一列はシリーユ・バイユ、ジュリアン・マルシャン、ウイニ・アトニオ、第二列はカメロン・ボキとポール・ウィレムス、フランカーはフランソワ・クロとアントニー・ジェロンチ、ナンバーエイトはグレゴリー・アルドリット、スクラムハーフはデュポン、スタンドオフはロマン・エンタマック、スリークォータバックは左からガバン・ビリエール、ヨラム・モエファナ、ガエル・フィクー、ダミアン・プヌー、フルバックはメリバン・ジャミネというメンバーである。イタリア戦から入れ替わったのがフランカーのクロとセンターのモエファナである。21歳のモエファナはポリネシアの海外領土のフツナ島の出身、2020年秋のオータムネーションズカップ決勝のイングランド戦で代表にデビュー、イタリア戦は交代出場、キャップ数は3と最も少ないが、期待の若手である。
 そしてアイルランドはエースのジョナサン・セクストンが欠場、スタンドオフはジョーイ・カーベリーが務める。しかし、とてつもない新人がいるのである。(続く)

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